公開日:2016.03.31 / 最終更新日:2018.11.03
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建築業界をわたり歩いてきた、僕の略歴<後編>
「建築業界をわたり歩いてきた、僕の略歴<前編>」でお話ししたように、少年時代から興味を持っていた建築の世界に飛び込み、建築設計事務所で経験を積んだ僕。今回は、未経験だった木造の設計も勉強したいと、工務店へ初めての転職を果たした後の経歴をご紹介します。
このコラムでわかること
- 工務店在籍時に経験した、お客様の悩みに関するエピソード。
- 構造躯体メーカー在籍時の、多くの設計事務所や工務店との出会い。
- いいつくり手は、理念が明確で、つくる家のスタイルが一貫している。
木造建築を一から猛勉強
工務店に転職した後は、木造の設計を一から勉強。木造については大学のカリキュラムでは教わることが少なかったので、本を大量に購入して読み漁ったり、先輩に煙たがられながらも時間を見つけては教えを求めたりして、必死に学んでいきました。徐々に仕事が板についてくると、平行してやりがいも大きくなっていったものです。
特に依頼主に設計案のプレゼンを行う時は、やりがいもひとしお。初回の打合せで依頼主のライフスタイルや要望などをヒアリングし、2回目の打合せでファーストプランの提案をします。図面だけではなく、完成予想の内観・外観パースや、簡易な模型なども作成して、よりイメージしやすくなるよう心がけました。相性の良し悪しもあるためパーフェクトとはいきませんが、ほとんどの依頼主に満足してもらうことができ、自分自身も喜びを感じる毎日。依頼主の大切な財産を預かって設計するという責任の重さも感じながら、仕事に取り組んでいました。
そんなある日、担当していた建物の依頼主から、こんなことを言われました。――私はたまたま御社と出会い、運よく提案内容に共感したから御社に依頼することができた。でも、もし出会えていなかったら、どこに頼んでいいかわからず、納得できる建物を建てられなかったかもしれない――と。 何気なく話された一言でしたが、高額な買い物に不安を抱えながら決断する依頼主の本音の声は、僕の心に深く突き刺さりました。
当時、僕は賃貸住宅住まいで、家もマンションもまだ持ってはいませんでしたが、 住宅・建築の世界にいる自分でさえ家づくりにはかなり悩むだろう。限られた情報しか得られない一般の人なら、なおさらだと思いました。このことをきっかけに、 家を建てたいけれど誰に頼んでいいかわからない人に、「ここに依頼すれば大丈夫」と思ってもらえるブランドやサービスをつくりたい、と考えるようになっていったのです。
そんな矢先、工務店の仕事で付き合いのあった木造の構造躯体を扱うメーカーに、新規事業の立ち上げスタッフとして来ないか、と声をかけられました。工務店での家づくりの仕事はやりがいがあり、設計の仕事にも未練があったのでかなり悩みましたが、この転職は僕がつくろうとしているサービスに役立つに違いありません。家づくりをしようとする人に「ここに依頼すれば大丈夫」と思ってもらうためには、自分がつくり手であることよりも、地域で活躍するつくり手をできるだけたくさん知り、その人たちの存在やこだわりを伝えることが大切です。そう思い、次の職場での可能性に賭けて転職を決意しました。
「いいつくり手」との出会いが財産に!
転職先は、工務店に木造の構造設計と部材をセットで提供する会社です。私も工務店の設計担当としてその構法を採用してからファンになり、自分が担当する依頼主には基本的にその構法で設計提案を行っていました。 新規事業の内容は、設計事務所にその構法を伝え、設計者ネットワークを構築するなどの事業を展開するというもの。設計事務所が手がける斬新な設計にその構法を取り入れることで、まったく新しい木質空間が誕生します。僕はその仕事に、新たな魅力を見出していきました。
僕の職務内容は、設計事務所専属の営業担当として、顧客である設計事務所に構法の魅力を伝え、依頼される住宅の構造設計を行うこと。設計事務所を対象に定期的に講習会を開催して構法の説明を行い、実案件の相談があれば個別に訪問していました。ほかにも施工を担当する工務店の紹介や、その工務店への部材供給の手配なども担当。この仕事を通じて数多くの設計事務所や工務店と知り合い、設計事務所だけでも述べ2000人以上の人とかかわることができました。
その中でも、理念が明確で、つくる家のスタイルが一貫している、そして正直である、たくさんの「いいつくり手」と出会うことができたことは、僕の一生の財産だと思っています。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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