公開日:2021.03.24
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経済メディアに見放された住宅業界?「日経ホームビルダー休刊」に思うこと
日経ホームビルダーが「休刊」となりました。
以前より連絡を受けて知っておりましたが、いざとなると寂しい気持ちになりました。
約15年間、定期購読しておりました。
建築から、住宅の世界に入った人間としては、住宅の実務について、いろいろと勉強させてもらいました。
最終号は、今までの蓄積と強い想いのこもった、素晴らしい内容でした。
タイトル通り、「未来への道筋」を示してくれていました。
この最終号の巻末にある編集長のご挨拶の下記の一文に、住宅業界の現状と未来が象徴されていると思いました。
「住宅産業にさまざまな課題・難題が突きつけられている今日、従来の手法を改めて見直す柔軟さも必要です。」
この一文は、出版社としての意見であると同時に、住宅業界への提言であると私は受け止めました。
雑誌について
出版不況とは言われて久しく、特に新聞・雑誌はデジタル化の波を大きく受けています。
雑誌は広告が入りにくく、特に苦戦を強いられています。
コンテンツ文化は無くなりませんが、分野やターゲット、テーマによって、伝え方の多様化も進んでいます。
日経ホームビルダーについて
自分との関係で振り返ると、日経ホームビルダーを読みながら、新しい情報、工法、様々な実験、他社の先進事例等を学んできました。
わかりやすい解説やトップランナーのインタビューなど、本当に価値のある専門誌でした。
自分でもオウンドメディアを運営していますが、
・読者が読みたい記事
・編集者が伝えたい記事
は異なります。
特に専門誌では、すぐに使えるノウハウだけではなく、業界への啓蒙も必要です。
経済メディアに見放された住宅業界?
今回の「休刊」の判断には、いろいろな要素があったと思います。
ビジネスである以上、「売れる雑誌」「人気のある雑誌」「利益が出る雑誌」であることは当然必要です。
同じ業界で働く人間として、今回の決定で思い当たったことは下記です。
・工務店の減少
・工務店に読まれていない(定期購読されていない)
・住宅実務者は勉強しない
・住宅実務者に響かない
・記事の内容を「対岸の火事」だと思っている住宅実務者が多い
・その他
他メディアと比較して、デジタル化にも成功していて経営面でも安定している日経グループの会社が、「住宅業界専門誌を休刊」したという事実を、住宅・建築実務者の一人として、重く受け止めたいと思います。
紙メディアとしての雑誌の魅力
現在、いろいろな業種で輝きを放っている雑誌にはいくつかの共通点があるように思えます。
雑誌で濃い思想、情報、ビジュアルを作って「コアなファン」を作っていることです。
雑誌は、部数で稼ぐのではなく「強いブランド」を作る。
そしてイベントやグッズなども展開し、コミュニティを深くし、じわじわ広げていく。
ブランドがあり、ファンがいれば、他業界とのコラボも決まる。
デジタルが進めば進むほど、紙の雑誌は物質として価値を増すと思います。
最初から雑誌コンテンツを真ん中に置いた円を描いておくことが必要なのかと思います。
これからのメディア運営では、中長期のブランド戦略・ウェブ、動画、イベント、グッズ、コミュニティなどの運営チーム作り・編集者の意識改革が必須になります。
雑誌は、コアなファンが多いことが魅力です。
雑誌や本の熱心なファンのことは「愛読者」と言います。
ブランドと編集部と読者の関係性が「ファンビジネス」マーケティングに近いのかもしれません。
住宅系メディアの現況
基本は社会情勢や業界動向に沿っていますが、「住宅性能」(主に温熱)をメインに、経営力、ブランディング、マーケティング、集客、設計力等にテーマは集中しています。
トップランナーの活躍を伝えながら、啓蒙とファン化、雑誌講読(購入)を同時に満たすようなアプローチをしています。
そうした中で「日経ホームビルダー」のように、「家づくりの実務情報」に特化した雑誌は本当に貴重な存在でした。
今後は、「日経アーキテクチュア」や「日経クロステック」での発信に切り替わるそうです。
「日経アーキテクチュア」も定期購読していますし、「日経クロステック」も会員になっていますので、そちらでの情報発信を期待しています。
ただ個人的に懸念していることがあります。
「日経ホームビルダー」を読まない住宅実務者は、
「日経アーキテクチュア」も読んでいないし、
「日経クロステック」も見ていません。
住宅業界全体のレベルアップが求められる時代に、今回の「休刊」は重いニュースでした・・・。
最後に
自分は本や雑誌が大好きです。
SNSでの発信時代のメリットもある一方で、
しっかりと時間・コストをかけて編集者などを経た良い企画とコンテンツ体験は素晴らしいものだと思っています。
(もちろん全部の本・雑誌がそうでは全くありませんが・・・)。
活字文化はもっと価値があると思います。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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