公開日:2019.03.09
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省エネ基準の説明義務で増える賢い消費者と淘汰される事業者
省エネ基準適合可否の説明義務化
2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化するという方針が変わり、住宅が大半をしめる小規模建築物(300m2未満の小規模住宅、建築物)については、
「省エネルギー基準への適合を義務化せず」、
「建築士が建築主に対して省エネ基準への適合可否などの説明を義務付ける」
と示されました。
いまだに基準への適合に対応できない事業者が多数存在することなどがその理由です。
省エネ基準適合は法律の有無ではなく施主のためにやるべきこと
国が掲げる方針として省エネや国民の健康に関係する基準がないことは大問題です。
家づくりに携わる人間として、建築主の財産としての住まい、健康を守る空間としての住まいを提供することは、適合義務化が法律で求められていなくても、「必ずやるべきこと」だと思います。
耐震性の確保に関しても、全く同じです。
省エネ基準適合可否の説明義務化で賢い消費者が増える
省エネ基準への適合可否などの説明を義務付けるということは、賢い消費者が増えることが予想されます。
消費者が住まいの性能次第で健康、快適性、ランニングコストに影響が出ることを理解することで、住宅の性能に対して「高い知識」と「強い要望」を持つようになるでしょう。
省エネ基準適合可否の説明義務化で淘汰される住宅事業者が増える
一方で説明する側は、設計時の省エネ計算は必須となります。
計算していなければ、省エネ基準への適合可否を説明できないからです。
省エネ基準に適合できる住宅事業者にとっては、何の問題もありません。
問題は、省エネ基準に適合できない住宅事業者です。
おそらく下記のいずれかの対応をとるのではないかと予想されます。
①省エネ計算した上で、「適合していません。適合させるとコストアップになります。」と建築主に伝える住宅事業者(適合させる技術はあるが、あまりやりたくない会社)
②省エネ計算しないで、「適合していません。適合させるとコストアップになります。」と建築主に伝える住宅事業者(適合させる技術がなく、心底やりたくない会社)
③省エネ計算した上で、「適合していませんが、適合させますか?」と建築主に相談する住宅事業者(性能のスペックやコストを自分ではなく施主に決めさせたい会社)
いずれの対応も省エネ基準を満たしていないことには変わりませんが、そうした説明を受けた建築主の気持ちを想像すると、とても複雑な心境になるのではないでしょうか?
自分が信頼できると思って依頼した住宅事業者から、設計段階で省エネ基準を満たしていないことを伝えられるということは、「住宅の性能面では明らかに失格」であることを自覚させられます。
当事者である住宅事業者は、おそらく国が決めたルールについての不平不満を伝えながら、「義務化されてないし、オーバースペックなので、省エネ基準適合はやめましょう」と建築主を説得すると思われます。
コストに勝る理由はないと考えて省エネ基準不適合を正当化する住宅事業者も多いことが予想されますが、消費者を甘く見ていると思います。
「日本の消費者は世界一厳しい」からです。
まとめ
国の住宅政策の転換があろうとなかろうと、住宅事業者はこれまで通り、住まい手に価値をもたらす家づくりを実施するために、省エネ性能や耐震性の向上を実現する取り組みを着実に継続するべきです。
省エネ基準やZEH基準の適合クリアレベルではなく、HEAT2が示すG1、G2ほどの家づくりを目指していく必要もあります。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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