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公開日:2019.01.29

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日本エコハウス大賞シンポジウムに参加

日本エコハウス大賞シンポジウムに参加

日本エコハウス大賞シンポジウムに参加しました。

イベントのレポートを書かせていただきます。(写真の撮影禁止でしたので文章のみです)

昨年も参加しましたが、とても勉強になり、面白いイベントです。

イベントに参加して改めて家づくりは「開口部」の話に尽きると思いました。

開口部をどのように考えるかで、デザインが変わり、構造のバランス、温熱性能、防災対策、防犯などの要素に絡むからです。

開口部を極めた設計が求められますね。

森みわさんの講演

まずは十津川村との出会いから、モデル住宅の依頼された話です。
十津川村の木材を使ったパッシブハウスが設計条件だったそうです。
ことぼしかん、という名前です。(漢字で書くと木灯館)
東日本大震災で十津川村は大きな被害を受け、工事が遅れるなどの影響もあったそうです。

森さんからは、「省エネ運動は平和運動!」という強いメッセージもありました。森さんは、国連環境計画の理事も務められてます。

ネットゼロエネの前に、冬の化石燃料依存を改めるべきというコメントもありました。

秩父パッシブハウスのオフグリッド化の話もありました。

いよいよエコハウス大賞受賞作の大間の家の話です。

お施主様の暮らし方により、想定よりもあまり薪が使用されず、階間エアコン一台で暖冷房をまかなうかたちになったそうです。

ガスも風呂の追い焚きなどもあり、想定以上にガス使用料が高かったそうです。

別のプロジェクトであるHouse-Hとガス使用料の比較データも見せていただきました。こちらの住宅では、ガスはほとんど使用されていないとのことでした。

キーアーキテクツ様でも、森さんが目指すパッシブハウスを実現できる割合は3割程度という結果だそうです。与条件やクライアントの暮らし方などに左右される部分もあるということですね。

「エコハウスに前向きに取り組む住宅実務者が活躍することが、日本の家づくりを支えていくことになる」という素晴らしいメッセージも聞くことができました。

 

東京大学 前先生のプレゼンテーション

冒頭に省エネ基準が義務化されないことについてのコメントがありました。

前先生も委員であるので、実際の議論の場を、簡単に再現していただきました。(リアルすぎる話なのでこれはオフレコに・・・。)

前先生らしい言葉が続きます。

「省エネ基準義務化先送りで悲劇は続く」

「日本の家、世界最低。我慢すればよい?」

「日本は自由主義、資本主義」

本の紹介もありました。

「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」です。ベストセラーになっています。

世界は、4つの所得レベルに別れているが、全体の所得は上がってきており、
世界は大きく変わっているという話が印象的でした。

「日本の省エネ性能はまだまだ上げられる」という素晴らしいメッセージもありました。

 

松尾設計室 松尾さんのプレゼンテーション

松尾さんからは、災害についての話です。今回のイベントで最も印象的な話でした。ファクトとデータをベースにした話はさすがだと思いました。

まず、災害が多発した昨年を振り返っての話です。

国の機関により最大風速で見た台風の強度は増加する、という予測が発表されています。

風速と被害の関係も教えていただきました。
風速の強さにより、建物の被害はかなり異なります。

災害に強い自立できる住宅を増やすことは、一つの災害対策です。

ハウスメーカーも災害に強い家を研究、開発に取り組んでいるそうです。

具体的な台風対策として、下記のようなアドバイスもありました。
・大窓にはシャッター、小窓は防犯ガラスもしくは網入りガラス
・カーポートにはネットをかけておく
・シャッターの裏側にダンボールを詰めておく

雨漏りに関しても、風速と雨量の下記のような関係で被害が増えるそうです。
雨漏り=風速×雨量

災害への備えとして、下記のようなアドバイスもありました。
・食料とエネルギーの備蓄を各自で備えておく
・いつ自宅が被災してもおかしくない覚悟
・補修工事を1年以内に行うことは不可能に近い

最後に「エコハウスは災害に強い」というメッセージもいただきました。

 

西方設計 西方さんのプレゼンテーション

西方さんが、エコハウスに35年間取り組み続けた話です。

「物にもなれていない建築だけは設計したくない」という強いメッセージを聞くことができました。

カウフマンなど、ヨーロッパの事例も見せていただきました。

「地域で建築と再生可能エネルギーでどう生きるか」というテーマも伝えていただきました。

今までの事例や、自社のアトリエなども見せていただきました。戸建て250戸、集合住宅も250戸で合計500戸の住宅を設計されてきたそうです。

公共建築も30件以上手がけられており、大型の木造建築も多く手がけられています。

 

Ms建築設計事務所の三澤文子さんのプレゼンテーション

日本の住宅ストックの現状についてのプレゼンです。

既存住宅を調査すると、耐震性能の不足や、メンテナンス不足による劣化、ヒートショックを起こしかねない温熱環境など、さまざまな課題を指摘されていました。

劣化調査について、事例をもとに、詳しくご説明をしていただきました。かなり古い家でしたが、的確な調査と改修設計により、美しい住宅に変わりました。

骨格がしっかりとしている住宅は、ロングライフ住宅につながる、というメッセージをいただきました。

 

伊礼智設計室の伊礼さんのプレゼンテーション

近作をもとにいろいろ解説していただきました。

「福島の家」
夫婦二人の住宅です。
リビング棟、寝室棟、ガレージ棟に分かれた構成の平屋の間取りです。

「魚沼の家」
積雪荷重2メートルに耐える必要があるエリアに建つ住宅です。
冷房は小屋裏のエアコン一台、暖房は薪ストーブのみです。
大雪で煙突が曲がってしまい修理したそうですが、無暖房でも室内は16度だったそうです。新潟の冬でこの室温はすごいですね。

「豊川の家」
二階リビングの住宅です。
二階にも素敵な坪庭があります。

「つくば里山博 柴モデル」
OMXを入れたリアルZEHです。

「あさひの家」
パネル住宅のプロジェクトです。
4間角、32坪のスタンダードな住宅です。

最後に「より自分らしい住宅設計を目指していきたい」という言葉もありました。

 

パネルディスカッション

審査員全員によるパネルディスカッションです。司会は建築知識ビルダーズの木藤編集長です。

各審査員の採点表を公開されるのは画期的ですね。

エコハウス大賞の5つの評価項目の説明もありました。

奨励賞の作品についての講評がありました。

若手建築家がデザインと性能を両立した住宅を応募するようになり、設計者としての姿勢を評価しつつも、設計の課題に対しては鋭い指摘もありました。

リノベーション部門の審査結果も公開されました。

リノベーションでは省エネはもちろんですが、耐震性能の確保が重要だという話もありました。

リノベーションならではの課題も多く、実務者の審査員がそれぞれの課題を解説してくれました。

ロングライフ部門の審査結果も公開されました。

審査基準を明確にすることが難しく、審査もなかなか難しかったようです。

この部門に関しては、審査員ごとに審査の感想を話していただきました。

SUR都市建築事務所様のやまぼうしの住宅は、1998年の竣工にもかかわらず、さまざまな点について設計、仕様に取り組んでいた点が高く評価されていました。建築知識ビルダーズ賞を受賞されました。

 

昨年に続き本シンポジウムに参加しましたが、本当に勉強になりました。

主催者、関係者の皆様、素晴らしいイベントを開催していただき、ありがとうございました!

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

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