公開日:2021.03.05
2115
省エネ基準説明義務化で基準適合を避けると生じるリスクとは?
2021年4月より小規模建築物の省エネ基準説明義務化が開始される
小規模建築物(延べ床面積が300m2以下)において、2021年4月より、住宅会社から建築主への省エネ基準説明義務化が開始されます。
詳しくは下記のサイトをご参照ください。
住宅実務者の中では異論反論ある制度ですが、
SDGsや脱炭素社会、住宅の資産化等を考えても、
「住宅の高性能化」は必須の流れと言えます。
説明義務なので省エネ基準に適合させるかどうかは、
建築主と住宅会社それぞれの意思決定によりますが、
正しく理解して、正しい判断を行わないと、
双方にリスクが生じることになります。
このブログでは、住宅会社側のリスクについて考えてみたいと思います。
省エネ基準説明義務化における住宅実務者側の課題
今回の「省エネ基準説明義務化」については、住宅実務者側の課題としては下記の3点がポイントかと思われます。
1.住宅実務者のリテラシー向上
→建築主に説明できる能力
2.説明等の実務フロー
→省エネ計算による検証も原則は必要になる
3.実案件への反映
→実際の設計・施工で実現する
基本的には実務者のレベルアップに尽きるのですが、これだけでは今回の制度はクリアできないのではないかと予想しています。
省エネ基準説明義務化における運用面での課題
住宅分野に詳しい専門家や弁護士などが今回の件で懸念しているのが、運用面での課題です。
A.工務店の多くが設計・施工一括契約のため、締結時に工事費が定まるため、説明実施のタイミングが課題
→契約時の設計内容と、実際に建てる設計内容には確実に違いが出る(法律上は完成までに説明を行えばよいのですが)
B.建築主が「説明不要」と書面で意思表示しても、後のトラブルは避けがたい
→建築主の理解不足や住宅会社の誘導で不適合を選択しても、引き渡し後に「省エネ説明義務を正確に受けていない」と主張した場合、住宅紛争に詳しい弁護士でも意図的に説明を省略した住宅会社を免責にする方向に持っていくのは難しいそうです。
省エネ基準説明義務化で顕在化する課題
私が個人的に懸念しているのは上記に加えて下記です。
①多くの住宅会社は社内の建築士不足(もしくは不在)であり、再委託先(外注の設計事務所)が担わざるをえない。
→その外注事務所が担えればいいがおそらく対応できず、対応できる人もリスクの大きさを考えるとやりたがらない可能性もあります。(オンライン説明もOKのようですので、対応できる建築士がそこに特化してサポートする可能性はあります)
②建築主と住宅会社で
「○:双方が適合させたい」はOK、
「×:双方が適合させたくない」は論外としても、
「△:どちらかは適合させたいのに、どちらかは適合させたくない」ケースは、
微妙な駆け引きやトラブルが想定されるので、新たな住宅紛争のネタにならないことを願っております・・・。
まとめ
当社としては住宅実務者の皆様へのメッセージとして、
「当たり前に計算して、当たり前に適合させればOK」
という答えに誘導できればと考えております。
義務化して省エネ適判のほうが実は楽だと思います。
建築主に説明する難しさや手間を考えると説明義務化のほうが骨は折れそうです。
算数(省エネ計算)が無理なら、伝言ゲーム(説明義務)にと思ったのかもしれませんが、
他人に物事をうまく伝えることほど難しいことはありません。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
最新記事 by HOUSEBASE 代表取締役 植村将志 (全て見る)
- 4号建築物も構造図書の保存義務化へ - 2020年1月10日
- 耐震等級の徹底解説!住宅性能表示の構造の安定とは? - 2019年7月29日
- 住宅のリフォームは「健康性能の強化」が必須な理由 - 2019年6月15日
- 工務店は「事業承継できるかどうか」で選ぶ時代に - 2019年5月20日
- 省エネルギー住宅の「全館空調」はエアコンのみで実現できる - 2019年5月19日