「設計監理料」、「工事監理」とは?[設計事務所との家づくり②]
設計事務所を依頼先に決めた場合は、設計事務所との家づくりの流れを理解しておきましょう。
設計事務所とは、まず「設計業務委託契約」と「工事監理業務委託契約」を交わします。「設計」とは「工事を行うために必要な設計図書を作成すること」、「工事監理」とは「建築主の立場に立って工事が設計図書どおりに実施されているかどうかを確認すること」です。
二つの契約を結んでスタートする家づくり
ある程度打ち合わせを行い、こちらの希望に合った設計がまとまりそうであれば、「設計業務委託契約」を結びます。設計業務委託契約では、設計業務の範囲、設計期間、契約金額、不測の事態への対応方法などを取り交わすことが重要です。
この場合、設計は設計事務所が行いますが、施工は別途、工事請負契約を結んだ施工会社が行います。設計と施工がそれぞれの契約に基づき、完全に分離して行われるわけです。
また、設計を依頼した設計事務所に工事監理も併せて依頼するのが一般的です。工事監理委託契約では、委託する工事監理の業務範囲を明確にし、工事のどの項目を、どのような方法で確認するのかについて、お互いに誤解が生じないようにしておく必要があります。
契約前には、設計事務所から「重要事項説明」を受けます。建築士は建て主に対し、重要事項を説明することが建築士法により義務付けられています。内容は、設計業務の範囲、工事監理の方法、業務に携わる建築士、報酬支払いの時期や、契約解除の方法などです。また契約内容以上のことを建て主が要求した場合や、予定外の期間・費用が発生した場合の対処法も話し合い、双方が納得できる内容で契約を交わします。
設計事務所への支払いのタイミング
設計事務所には設計および工事監理(後述)についての費用である「設計監理料」を建築工事費の10〜15%程度支払います。設計事務所によっては、工事費ではなく設計する家の面積に応じた「面積単価」で設計監理料を決めている場合もあります。総予算があまりにも少ない場合や、家の面積が小さい場合などもありますので、最低設計料金を定めていることもあります。家が大きくても小さくても、設計監理する手間はあまり変わらないからです。事前にその設計事務所の料金体系をwebサイトなどで確認するようにしましょう。
設計事務所に依頼するとお金がかかるというイメージを持つ人も多いようですが、それはこの設計監理料に由来しているようです。
しかし、工務店やハウスメーカーに依頼しても、誰かが家の設計をしています。工事費の見積書に「設計料」一式で金額も出ていることが多いのですが、工事費の見積り内のため設計料が別にかかっていることに気付きにくいのです。
設計事務所に依頼する場合でもコスト面でのメリットはあります。設計事務所は満足度をあまり下げずにコストを削減するノウハウや、工務店との交渉テクニックを持っているからです。
予算をどう使うかをすまい手といっしょに考えるのも設計事務所の仕事です。設計事務所の知恵を借りながら、お金をかけるところとかけないところのメリハリをつけたり、コストを削ったりしながら、予算をコントロールしてもらいましょう。
→コストコントロールについて詳しくは「家づくりのコストを下げるのに一番大切なこと[工務店との家づくり③]」
支払いは設計や工事の進捗に合わせて数回に分けられるのが一般的で、その回数やタイミングも設計事務所によって異なるので、確認しておきましょう。なお、支払は住宅ローンの実行前の時期のため、現金か、つなぎ融資を用意する必要があります。
支払い例(5回に分ける場合)を下記に示します。
- 設計契約時:20%程度
- 基本設計完了時:20%程度
- 実施設計完了時:30%程度
- 工事の中間時(上棟時):15%程度
- 引渡し時:15%程度
計画地が設計事務所より遠方の場合は、現地への交通費など実費を負担することになります。すまい手側も、設計打合せのため何回も設計事務所に行くことになりますので、費用をあらかじめ見込んでおきましょう。
第三者の目で工事をチェック。「工事監理」という仕事
設計事務所との家づくりでは、施工は別途、建て主と工事請負契約を結んだ施工会社(工務店)が行います。その工事内容を第三者の立場で、厳しくチェックするのが工事監理です。家の完成度を左右する重要な仕事なので、すまい手からすると設計事務所は心強い存在です。
すまい手にとって恐ろしいのは「欠陥住宅」を建ててしまうことですが、設計事務所で建てる家の場合、設計事務所が建て主に代わって監理を行いますので、チェックされる側とチェックする側がはっきり分かれています。設計事務所が監理に手心を加える理由もありません。
つまり、設計事務所の家は監理に正常なチェック機能が働き、手抜き工事になりにくいといえます。
ただし、設計事務所の家は一つ一つが異なる仕様であるため、建ててみないと不具合が生じるかどうか分からないという特性もあります。しかし、それは手抜き工事による欠陥住宅とは意味が異なり、竣工後にいくらかの改修を経て最終的に完全な家に仕上げることが、完全注文住宅の元々の特性であり前提といえます。
設計事務所の最重要業務は設計とこの工事監理ですが、その他にも多くの仕事を引き受けてくれています。
以下に、設計事務所が行う仕事をまとめておきます。
工事着工前の仕事
- 施工会社(工務店)へ見積りの依頼
- 見積書のチェック、査定
- 施工会社(工務店)の選定
- 工事請負契約の立会い
- 工事請負契約書のチェック
工事着工後の仕事
- 施工計画書のチェック
- 現場のチェック
- 監理報告書の作成
- 各種検査、引渡しの立会い
- 工事費請求のチェック
まとめ
設計事務所の仕事について、少し細かく説明してきました。個性のある家がほしい人、変形地など制約の多い土地に家を建てたい人などには実力ある設計事務所との家づくりをおすすめします。
設計事務所との家づくりのメリットについては「『設計事務所』との、最高に自由な家づくり[設計事務所との家づくり①]」にまとめました。ぜひ合わせてご一読ください。
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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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質問です。
約6000万の建築物で、建築設計及び工事監理費で、合計11万というのは妥当な金額でしょうか。
大手のハウスメーカーの物件です。
コメントありがとうございます。
回答が遅くなりまして、申し訳ございませんでした。
大手ハウスメーカー様の設計監理料に関するお問合せですが、設計事務所以外では「設計監理料」という概念が基本的に存在しておりません。ハウスメーカー様、あるいはビルダー様、工務店様におきましては、「設計・施工のワンストップサービス」が基本となるため、設計監理料のみを計上するかたちにはなっていると思われます。。推測になりますが、おそらくご相談されている大手ハウスメーカー様は、慣習的に設計料を内容・規模等を問わず、一律で「10万円(税別)」で見積書に記載されているのではないでしょうか。
以上、回答させていただきます。