断熱性が高い家のほうが実は長生きできる!健康面から家づくりを考える
家づくりの話の中で、環境性能に関して「断熱」という言葉が使われますが、これまでは省エネルギーに絡めて語られることが多かったのですが、実は健康面にとっても重要なのです。
生活コストを考慮する
住宅の断熱性能は、冷暖房費に直結します。断熱性能を高めるためにアルミサッシや断熱材のスペックを上げて、仮にその金額が50万円だったとしても、年間の冷暖房費を変更前の断熱性能の低い仕様より10万円抑えることができれば、約5年でスペックを上げた「投資」に対して「回収」はできる計算になります。
断熱性の高い住宅には、長期優良住宅や認定低炭素住宅などの認定も取得しやすくなりますし、フラット35(固定金利型の住宅ローン)の金利引き下げがあるなど、優遇を受けられるメリットが増えます。
住宅は高い買い物ですので建設費をなるべく抑えたいというのがすまい手の方の本音だと思いますが、住宅は少なくとも数十年と利用するものになりますので、イニシャルコストだけではなく、ランニングコストにも配慮して考えたほうが結果として「お得な買い物」になります。
特に「耐震性」や「断熱性」などは、居住後に性能を上げるリフォームを行うと多額の費用がかかりますので、家を建てる時には「性能」には妥協しないほうが賢明です。
家づくりに大切なことは、「見えること(デザインや仕上げ等)」と、「見えないこと(構造や断熱などの基本性能)」の両方のバランスを考えることです。
現在の省エネのルールは「改正省エネルギー基準」
国が定める住宅に関する省エネルギー基準は、断熱性能に関する規定が主たる内容でしたが、2013年に大きな制度変更がありました。それは「改正省エネルギー基準」です。
改正省エネルギー基準は、建物と設備機器を一体化して建物全体の「一次エネルギー消費量」を総合的に評価する仕組みです。住宅の「外皮の断熱性能」を新しい計算方法に改めたうえで、設備性能の評価を加えて建物全体の省エネルギー性能を判断する考え方です。
冷暖房設備、換気設備、給湯設備、照明設備などに仕様基準を設け、これらを総合的に評価するものであり、太陽光発電設備による再生可能エネルギー発電や、エコキュートなどによる省エネ効果も評価の対象とされます。
「一次エネルギー」とは、石油・石炭など化石燃料、原子力燃料、自然から得られる水力・太陽光などのエネルギーを指し、電気・ガス・灯油など建物で使う「二次エネルギー」を「一次エネルギー」に換算することで、消費量の比較を容易にしようとするのです。
住宅の外皮性能について「外皮平均熱貫流率」「冷房期の平均日射熱取得率」を用いるように変更されたほか、地域区分は「Ⅰ~Ⅵ」の6区分から「1~8」の8区分に改められました。
日本は北海道から沖縄まで「タテに長い」ので、地域によって気候が大きく異なる国です。寒冷地では冷暖房のエネルギー消費は大きく、家計でも大きな負担となります。逆に温暖な地域では、寒冷地と比較して冷暖房費の費用がかからないので、断熱性能への関心が高くないのが実情です。
高断熱化すると、健康面での効果が期待できる
省エネルギー性と共に、断熱化を進める大きな理由となっているのが、実は「健康面」への影響からなのです。日本の家は諸外国と比較しても「とても寒い家」が多く、国の調査でも寒い家に住むことが健康に悪い影響を与えることが分かってきています。
「ヒートショック」という言葉をご存知でしょうか?
冬の時期、暖房で暖かい居間などと、暖房のない脱衣所や浴室との温度差が10℃以上になることがあります。
このような温度環境下で入浴する場合、暖かい居間から寒い脱衣所や浴室への移動、そして熱い湯船への移動
という小さな動きのなかでの急激な温度変化が短時間のうちに起こり、これに伴って、血圧の急激な上昇や
下降が引き起こされる現象のことです。
「ヒートショック」は体に大きな負担をかけるため、冬の入浴中に起こる突然死の大きな要因となります。
まとめ
これまで「断熱」は設計時に性能とコストのバランスで仕様が決められてきましたが、居住してからの冷暖房費も軽減できると共に、断熱性能が高い住宅に住んでいる人のほうが、そうでない人に比べて健康度が高いという調査結果が発表されています。
冬の寒い時期に、「薄着」と「厚着」のどちらのほうが風邪をひきやすいかは明確ですよね。
家の環境性能も全く同じです。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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