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公開日:2016.04.19  /  最終更新日:2018.11.03

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耐震住宅

構造計算の義務がない? 耐震性が保証されていない家に、あなたは住めますか?<前編>

世界一の地震国、日本。実に世界中の地震の1/5が日本で起きています。それなのに、多くの日本の住宅では十分な耐震性があることを保証するための「構造計算」が行われていないという事実があるのをご存じでしょうか?その原因には、法律の「落とし穴」と、木造住宅における特殊な「ルール」に慣れ親しんでしまった設計事務所や工務店の存在があったのです。

耐震性が叫ばれる中、なぜ問題が?

日本の家の多くが、平屋もしくは2階建ての木造住宅です。あなたがこれから建てようと考えているのも、そんな家かもしれませんね。ごくごく一般的な2階建て以下の木造住宅の耐震性が保証されていないなんて、ショックを受ける方も多いでしょう。実はその問題、建築基準法の2つの「落とし穴」から発生していました。

第1の落とし穴は、2階建て以下の木造住宅には、十分な耐震性があることを裏づける「構造計算」ではなく、簡単な計算と仕様を守ることだけを義務づけていること。

第2の落とし穴は、しかもその計算資料は、建物をつくる際に必要な「確認申請」の際に、提出を免除されていることです。

この2つの法律は、もともとは木造業界の実情への配慮と建築士への信頼により、厳しく規定されていないもの。問題なのはその「落とし穴」を利用して、「法律で義務づけられていないから、構造の安全性を確かめなくてもいい」と解釈する設計事務所や工務店がいることです。家を建てようとする人が思いがちな、「建築士はプロなのだから、責任を持って構造の安全性を確かめているはず」という性善説は、もはや通用しないと言えるでしょう。

【第1の落とし穴】「構造計算」は必要ない

建築基準法では、ビルやマンションなどの鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物や、木造でも3階建て以上の建物をつくる場合には、さまざまな科学的な根拠にもとづいた計算により十分な耐震性があることを裏づける「構造計算」を行うことを義務づけています。でも2階建て以下の木造住宅に義務づけられているのは、「構造計算」ではなく、簡単な計算と仕様を守ることだけ。これが第1の落とし穴です。

建築基準法の定める木造住宅の構造の安全性の検討方法には、大きな矛盾があります。まずは、ややこしいですが、構造に関する条文である「建築基準法第20条」の原文を見てみましょう。

建築基準法第20条(構造耐力)

建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号の建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。

「建築物の区分」とは、建築基準法第20条に定められた、建築物を規模に応じて1号から4号までに区分するというもの。その区分ごとに、「定める基準」が異なっているのです。2階建て以下で延べ面積が500平方メートル以下の木造住宅は「4号建築物」にあたりますが、その基準を「3号建築物」と比べてみましょう。

3号建築物(3階建ての木造住宅など)

・構造計算(許容応力度計算)の数値が、法律で決められている基準を満たしていること

・仕様規定を満たしていること

4号建築物(平屋、2階建ての木造住宅など)

・仕様規定を満たしていること

このように、4号建築物には「構造計算」が求められていないのです。仕様規定とは、壁量の確保(壁量計算)、壁配置のバランスなどの、簡易な計算方法で確認できることに加え、基礎、土台と基礎の緊結、柱の太さ、梁材の欠き込みなどを、仕様を守って計画することが定められたもの。これだけでは柱や梁などの部材の力、基礎や地盤の力が検討されず、建築基準法の定める「安全な構造」であることを確認するなど到底できるものではありません。

つまり、建築基準法ではすべての建築物に安全な構造であることを求めていますが、2階建て木造住宅のように小規模な建築物には、満足いく構造の安全性の検証を求めてはいないという大きな矛盾が生じているのです。

国は「国土強靭化計画」として、木造住宅の耐震化率を高めることを政策で掲げていますが、住宅業界の混乱を考慮すると、すぐに木造住宅のすべての「構造計算」を義務化するには、まだまだ時間がかかりそうです。

この続きは「耐震性が保証されていない家に、あなたは住めますか?<後編>」にてお話しします。

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

“構造計算の義務がない? 耐震性が保証されていない家に、あなたは住めますか?<前編>” への3件のフィードバック

  1. ひまわり男 より:

    町の工務店レベルで構造計算がで来るとは思えませんね。工務店=大工さんですよね。1級建築士でも構造計算は出来ないので専門会社に依頼するとか。

    また、建屋の耐風速は、私の住んでいる茨城県は35m/Sの風圧過重に耐えられる設計であればOKなのですが、先日の台風は、
    千葉県で風速57m/Sだったようです。世の中の住宅が倒壊して、当然の風力をもつ台風が上陸する時代なのですね。前代は。

    地球温暖化で海の水蒸気が少し増えただけでこのありさまです。アメリカは自然災害の規模が大きいので保険が成り立たないとか?便利な世の中を追い求め先進国が温室効果ガスを出しまくった結果ですね。

  2. かみや より:

    熊本地震の時、耐震等級3を取得した私の家は、大掛かりな補修をしなければ住めない状態になりました。
    一方で、耐震等級を取得していないツーバイフォーの近所の家は、ほぼ損傷なしでした。
    この経験をした私の偏見かもしれませんが、構造計算なんかより工法の方がよほど重要なのではないかと思っています。(私の家は木造軸組)

    たまたま私の家がキラーパルスと一致したのか、何か特殊な原因があったのか分かりませんが、地盤がしっかりしているのに建物が大きく損傷したのはショックが大きいです。

    ひとつだけ言いたいのは、耐震等級3でも安心はできないってことです。。。

    • HOUSEBASE 代表取締役 植村将志 より:

      かみや 様

      コメントありがとうございます。
      熊本地震で、ご自宅に甚大な被害があったということで、心よりお見舞い申し上げます。

      かみや様がご指摘されているように、地震の被害は「場所」により地震を受ける大きさが異なります。
      地震は自然災害のため想定を超えることも起きますので、「万全」はないのが事実です。
      ただ、その影響をできるだけ抑えるべく、設計や構造計算、施工で、より「耐震性の強い住宅」を建てることが重要だと思っております。

      工法の問題も大きく、木造軸組には限界があり、当社としてはSE構法などの「金物工法」を採用することを推奨しております。

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