「中古住宅なんて」は偏見に満ちている。適正な中古住宅評価が資産価値を上げる
中古住宅は、新築住宅と比較して、価格が安いことがメリットですよね。一方で、基本性能の不安や見た目の印象などで、二の足を踏んでしまいがちなのも事実です。「空き家問題」と呼ばれる住宅の余剰が社会問題にもなっていますが、見方や価値観を変えれば、お得で賢い家づくりにつなげられます。このコラムではそのために必要な知識をお伝えします。
日本の住宅市場は「新築偏重」であるという事実
住宅販売で中古住宅の割合が高い訪米では、中古住宅のシェアが約5〜9割と言われています。日本の住宅市場は、欧米とは全く逆のシェアとなっており、新築住宅が約85%、中古住宅が約15%程度です。
これには日本の特殊事情も関連しており、戦後に住宅が不足する中で、ハウスメーカーやマンションディベロッパーによる新築住宅の大量供給体制ができ、それが今日に至るまで続いてきた背景があります。
ところが日本は人口減少時代を迎え、世帯数も減少していくことが予想されています。これまでと同様のペースで新築住宅を造り続けていけば、結果として「空き家」が増えていくことになります。その点からも、中古住宅市場を活性化していくことが必要になっています。
「住宅の寿命は30年」という誤解
国土交通省によれば、木造住宅の寿命は27年ないし30年、マンション(鉄筋コンクリート造)は37年とされています。この根拠は、「取り壊した住宅の平均築年数」です。現存する建物の中には、30年以上長持ちしている家も多くありますので、注意が必要です。
木造住宅の寿命の根拠を調べると、下記の式によって求められています。
- 木造住宅の寿命=「ストック数(現存する住宅数)」 ÷ 「フロー数(新築数)」
全体の統計的な数字の結果ですので、木造住宅の寿命を正確に表したものではありません。
マンションの寿命の根拠は、「建て替えをしたマンションの平均築年数」です。もちろん、築年数が37年を過ぎるマンションは数多く存在しますので、注意が必要です。
減価償却の視点から、金融機関が築年数で評価額をゼロとしてきた背景もあります。減価償却とは、建物部分を劣化に応じて経費化するための数字です。木造の減価償却期間が22年、鉄筋コンクリート造が47年であることを引き合いに出し、これを建物寿命と結びつける向きも多いのですが、実質的な耐用年数とは大きな隔たりがあります。
中古住宅の評価が様変わりする
国土交通省では、中古一戸建ての評価方法を根本的に見直そうとしています。これまでのように築20〜25年で建物の価値をゼロとみなす慣行を改め、築年数と関係なく実際の価値を測り、築年数が経過しても、一定の住宅については、しかるべき評価が行われる市場をつくることを目指しています。
国土交通省では、インスペクション(建物診断)の義務化に加え、建物を評価する際に構造躯体(スケルトン)と内装(インフィル)を分離して評価し、手入れの行き届いた中古住宅が築年数にかかわらず適正に評価できる仕組みづくりを進めています。
つまり、中古住宅でも基礎や基本構造の性能や状況がきちんとしているものであれば、その部分の価値は下がらないことになります。内装材や、キッチンやユニットバスなどの設備は経年変化により減価されますが、リフォーム(改修)やリノベーションすれば価値が上がります。
まとめ
現在の日本では、工業化された住宅ではなく、昔ながらの木造住宅を自分らしくリフォーム、リノベーションして、新築住宅よりもお得に購入する人も増えています。中古住宅でも適切にメンテナンスや改修を行なうことで価値が下がらないという認識が広がれば、すまい手もより建物を大切にすることの重要性を持ち、住宅市場全体として好循環を生むはずです。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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