あぶない設計事務所の見分け方
設計事務所は国家資格である「一級建築士」の資格を取得している人たちということで、一般のユーザーから見ると住宅・建築の全般に精通した実務者であると見られがちですが、実際には大きく異なります。多岐にわたる実務全てに精通した設計者などほとんど存在しません。住宅系の設計事務所に限っても、設計者の実力差はとても大きく、ユーザーにとって本当に頼れる存在は少ないのです。このコラムでは、絶対に設計を依頼してはいけない「あぶない設計事務所の見分け方」についてお伝えします。
設計事務所選びで最も悩ましいことは実力差がとても大きいこと
住宅系の設計事務所にも、実際の業務内容に応じて、いくつかのカテゴリに別れています。
住宅系の設計事務所を選ぶ際に、最も悩ましいことは設計事務所ごとの実力差がとても大きいことです。その実力差は、設計者の持つ資質に加え、仕事の積み重ねによる実務力の差、仕事力を上げるための勉強量の差、仕事数に比例して養われる経験値の差などによって、とても大きな違いを生み出します。
日本サッカーのカテゴリー分けを参考にお伝えします。サッカーの世界は、トップのJ1からJ2、J3までが「プロ」、JFLから地域リーグ、都道府県リーグが「アマチュア」となります。
普通の人から見れば、どのカテゴリーでも「サッカーが上手な人」であることが前提なのですが、住宅設計においてやはり自分の財産を託して自宅の設計を依頼するからには、なるべくレベルの高い「プロの設計事務所」に設計を依頼したいですよね。
例えば飲食店の評価でも「当たり、普通、外れ」は当然ありますが、飲食業界においてはその評価の結果で「店を続けることができなくて廃業」という現実はあります。設計事務所の場合、その評価により「廃業」することは稀なのです。なぜなら、設計事務所の力量を明確に示せるような基準がなく、あくまでも依頼者の評価で判断するしかないからです。
設計事務所選びは実に難しい!建築家も推薦できる設計者がいない現実
住宅系の設計事務所の本音を示すエピソードがあります。筆者は、多くの住宅系設計事務所の方とお付き合いがありますが、親しくなった人に必ず質問することがあります。
それは、「自分(設計者)にとって本当に大切な人(家族や親友など)から設計依頼を受けます。でも業務多忙や自身の怪我などにより、どうしてもその設計依頼を受けられないとします。その際に、自分の代わりに紹介できる住宅系の設計事務所はありますか?」という質問です。
要は、自分以外にオススメできる設計者は存在するのかという質問です。この質問に対して、ほとんどの設計者は「紹介したい人はいない」という回答です。理由はさまざまですが、「自分が一番だと思っている」、もしくは「設計者を選んだことがないので本当にわからない」などの意見がほとんどです。つまり、プロの設計者でも選ぶことができない設計事務所選びをユーザーは実行しなければならないのです。
設計事務所の意外な真実!自邸を建ててないから当事者意識が持ちにくい
都市部の設計事務所に多いのですが、自邸を建ててないない設計事務所は、「ユーザーとしての経験がない」ため、家づくりに当事者意識が持ちにくいのです。逆に自邸を建てている設計者は、「施主としての気持ちや立場、暮らしてからの家族のリアルな反応」を経験していますので、依頼者の家づくりに当事者意識が持ちやすいのです。
設計事務所の最も大きな課題に一つに、「ユーザーニーズと提供するサービス」のミスマッチです。
自邸を建てている設計者の場合だと、「自分の暮らしで叶えたいこと=自分が設計で提供したいこと」を両立させた経験があるので、設計者として「必ずやることと、絶対にやらないこと」が明確なことが多いです。
一方で自邸を建てていない設計者の場合だと、上記のような経験が不足しているため、ユーザーニーズを前提に設計することが多いのですが、注意点は主に性能面などで「施主の言う通り(施主が望むかどうか)」で設計や仕様を決定しがちです。そのこと自体は決して悪い判断ではないのですが、結果として耐震性や省エネルギー性など住宅として求められる基本性能が不足してしまうということが多いのです。
あぶない設計事務所の見分け方のポイント
戸建て住宅の設計事務所選びにおいて、必ずチェックしておきたいポイントは下記となります。
- 自邸を建てているか?:マンション購入でもよいのですが、「ユーザー」の経験の有無を確認。
- 住宅の性能を語れるか?:耐震や省エネなどに関して、納得できる設計や仕様の有無を確認。
- 工務店や関連会社などとチームを組めているか?:信頼できる施工体制の有無を確認。
- コミュニケーション能力はあるか?:元の施主から新規の施主の紹介を受けた経験の有無を確認。
- 設計監理能力:WEBサイトで事例を確認し、できれば手がけた住宅を見学させてもらう。
- 実務能力は確かか?:お金やスケジュールの話をわかりやすく説明してくれるかを確認。
どんな住宅を望むかによって、選びたい設計事務所は異なりますが、最低でも上記の項目について契約前に確認することで「失敗しない家づくり」に近づくことができます。
まとめ
設計事務所は敷居が高いイメージがありますが、実際には住宅や建築が好きで、とにかく良い設計をしたいとシンプルに考えている人が多いです。一方で住宅や建築が好き過ぎるあまり、悪気は全くないのですが、施主にとって価値の高い住宅をつくることよりも、設計者の事情や考えを優先してしまうことがあります。
例えば住宅系の設計事務所の中には、「設計者のこだわり=自分が決して採用したくない仕様や建材を避ける」傾向があることも事実です。失敗しない設計者選びのためには、まずは施主として「望む住宅」の方針を具体的に決めて、その要望を叶えた上でさらに素晴らしい住宅を設計できる実力者を選ぶようにしましょう。
今回ご紹介する優秀な設計事務所
お客様の「感性」や「ライフスタイル」に合わせて、巧みに設計案に表現する引き出しの多さが魅力です。木の家の良さにこだわって暮らしたい人、衣食住すべてを自分らしく楽しみたい人、日々の暮らしに緑を感じて暮らしたい人にとっては、信頼して家づくりを任せられる設計者です。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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