省エネルギー住宅(ZEH)で暮らす建築家が実践する、楽しくて快適な暮らし方とは?
省エネルギー住宅に暮らすって、なにか面倒なことなど無いのでしょうか。
住み始めてから1年を経過した自邸「雑司が谷ZEH」
自然と対話しながら楽しんで生活する「住みこなし方」報告です。
省エネルギー住宅のオペレーション:自然とアクティブに対話する生活がおすすめ
パッシブデザインの住宅は、特別なことをしなくても高性能なので十分に省エネルギーですが、
パッシブという言葉通りの受け身ではなく、自然と対話しながらアクティブに暮らし方の工夫をすれば、
楽しみながら更にエネルギーの有効利用を計れます。
パッシブデザインについて理解し、自然条件に注意を払って、環境にあわせたオペレーションをすれば、かなりの省エネになります。
面倒と思わずに、自然と仲良くなり、対話を楽しみましょう。
SUR都市建築事務所では設計した住宅の実際のエネルギー使用量をチェックしていて、今までに4件のZEHの実績がありますが、
実際のデータを見ていると建物の性能だけではなく暮らし方の工夫でエネルギー消費にかなり差が出て来るようです。
いろいろと工夫してその結果がエネルギー使用量として見えてくればモチベーションも上がります。
地中熱住宅は、蓄熱:蓄冷効果で年間を通じて快適
地中熱住宅はたくさん熱をためておけますが、熱容量が大きいということは涼しさも溜めておけるという事です。
冬の太陽の暖かさを溜めておくだけではなく、夏も涼しさを溜めましょう。
外が少し涼しい夜間の時間帯には、窓を開けて涼しさを取り込み建物に溜めます。
蓄熱量が大きい地中熱住宅の室内の温度は1年中非常に安定しており、1日の室温の変化は数度、年間でも17〜29度ぐらいの範囲です。
窓を開けたりしても室温の変化は非常に緩やかですから、先を読んで早めに手を打つことが大事になります。
窓の開閉、シャッターやブラインドの開閉などマメにいろいろな操作をしてじわりじわりと少しずつ蓄熱・蓄冷すれば、
昼間の熱を夜まで貯めておくだけではなく、1年のサイクルで夏の太陽熱を冬まで溜めておくこともできて、
非常に省エネでありながら快適に暮らすことが出来ます。
日照制御・太陽とうまく付き合う
日射の制御は、南の窓の場合は適度な寸法の庇があれば夏と冬の太陽高度の違いで自動的に制御できますが、
庇では上手く遮蔽出来ない東西の窓、特に西日のコントロールも大切です。
西日を防ぐためには外部に日除け(オーニング、よしず、スダレ)を工夫したり、
あるいは落葉の木やグリーンカーテンなどを季節に応じて育てればとても効果的です。
雑司が谷ZEHでは夏場は西日よけのグリーンカーテンを育てています。
植栽の利用:多様な効果
植栽の多様な効果はパッシブデザインのコラムで説明していますが、何よりもまず、緑は目に優しいですね。
地面に植えることが出来ればあまり水やりを気にする必要もなく、たいした手入れも必要ありませんし、プランターも自動水やりのものがあります。
グリーンカーテンなど今年は何を育てようかと楽しいものです。5月頃に準備すれば、すぐに立派なグリーンカーテンに育ちます。
大きなシンボルツリーがあれば小鳥もやってきます。夏に花が咲くと蝶が遊びに来ます。もっともユズの木にアゲハ蝶が卵を産み、
大きなアオムシが育ったり、グリーンカーテンのゴーヤに夏の終わりには毛虫が付いたりといろいろありますが、それだけ自然が身近に感じられます。
シャッターやブラインドは「マメに開閉」すると効果的
シャッターやブラインドは日差しのコントロールと言うこともありますが、太陽の暖かさを採り入れる時とそれを保温する時を見極めて適当なタイミングで開閉すると効果的です。
冬場は日差しがあるときはシャッターやブラインドを開けて出来る限り太陽の熱を採り入れ、日が落ちて寒くなってきたら早めにすべて閉じて保温を計ります。夏の昼間、暑い時間はむしろ窓を閉め切って外気の暑さを遮断し、夜間に蓄冷した涼しさに頼った方が良いので、シャッターやブラインドまで閉じた方がより効果的ですが、さすがに昼間から暗い部屋で過ごすのは行き過ぎですね。
また朝起きて今日の天気はどうかなと思いながらシャッターを開けて、日々かわる新芽のふくらみや紅葉の様子などを見るのも毎日の楽しみです。
通風・換気:外の条件がよいときは開ける
高気密高断熱の住宅というと窓は開けず閉じこもるイメージがあるかもしれませんが、実際はむしろ逆です。
外気の様子に注意を払い、「室内より外の方が条件が良い時」は大いに開けて外の空気を採り込みましょう。
通風はその場所特有の風向きがあるので、いろいろな方向の窓を開けてみて、季節ごとの風をキャッチします。
しかし一番風の欲しい暑い時期はあまり風がありませんから、温度差換気の出番です。
暖かい空気は軽いので上昇し、冷たい空気は重いので下に溜まる性質を利用し、低いところと高いところに窓を開けて換気します。
低い窓から涼しく重い空気が入ってきて、暑い空気は高い位置の窓から排出され、室内の空気が動くのを感じます。
室内よりわずかでも外の方が涼しいときには効果があります。
ただし少しでも室内の方が温度が低いとまったく逆のことがおこり高い位置の窓から暑い外気を引き入れてしまいます。そのようなときはむしろ窓は閉めて、蓄冷に頼った方が効果的です。こんなふうに風の気持ちになって制御できると、窓を開け閉めすることも面白くなってきます。
エアコンの使い方は「24時間運転」が基本
パッシブデザインの省エネ住宅と言っても空調は必要です。床下に1台、室内の高い位置に1台、合計2台の通常の壁掛けエアコンがあります。
しかし普通の住宅とはちょっと違う運転の仕方が効果的です。蓄熱量の大きい建物なので急に暖めたり冷やしたりは出来ませんから、
暖房の場合秋口あまり寒くなる前に、ゆるゆると夏の暖かさをキープするイメージで連続運転します。建物が冷え切ってしまうと暖めるのが大変なのです。
同様に夏も早めに緩く冷房します。温度設定はシーズン中少し調節しますが、スイッチは入れっぱなしにし、サーモで自然にON/OFFします。一度冷えてしまってから温度を急激に上げる時にはエアコンは大量の電気を消費しますから、つけっ放しでもゆるゆると運転していると意外に電気は食わないのです。
暖房は床下がメイン、冷房用は高い位置がメインです。冷房時はほとんど高い位置の1台だけ運転していますが、暖房時は上下の温度差を見ながら、床下だけでなく、時々高い位置のものも運転しています。
HEMSも良いけど、まずは温度計を用意しましょう
HEMSというのは「Home Energy Management System」の略です。
電気使用量の「見える化」で節電を計ろうという物で、いろいろな助成金の条件になっています。
確かにどこでどれだけエネルギーを使用しているかが見えるのは面白いもので、無駄が分かり思わず節電したくなりますが、
もっと素朴に、しかし大事なのは温度計と湿度計です。
雑司が谷ZEHには4個所のセンサーから無線で温度湿度の情報が送られてくる温湿度計があり、1階〜3階と外部の4個所の情報をモニターしています。これを見ながらエアコンや地中熱循環ダクトの制御をして無駄なく空調するようにしています。
ちょっとした運転の仕方の違いで各階の温度バランスが違ってくるのでこれもなかなか面白いものです。
まとめ
省エネ住宅に暮らすなら、自然に敏感になり、自然と仲良くし、自然を楽しみたいものです。
基本性能が十分高いので、特別なことをしなくても省エネで快適なのですが、
パッシブデザインを理解し自然と対話しながらアクティブに住みこなせば、より楽しく快適です。
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