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公開日:2019.02.06  /  最終更新日:2019.02.18

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省エネルギー住宅・ZEH

省エネ基準適合義務化は見送り!プロに頼れない国での家づくりの鉄則とは?

2020年より「すべての住宅が省エネ基準適合義務化」となる予定でしたが、現実的な課題や予想される混乱等の理由により適合義務化は延期されることになりました。代わりに「建築士による省エネ基準に関する説明を義務化」する方向で検討されています。生活者が高断熱化のメリットに気づき意識が変われば、市場原理での住宅事業者の淘汰が加速することも予想されます。地球温暖化への歩みに後ろ向きの家づくりのプロが多い中で、「快適で安全で価値の高い住宅」を確実に建てるためのポイントについてお伝えします。

住宅の省エネ基準適合義務化が見送りとなった背景

日本では住宅の温熱環境に関して明確な法律や基準が存在していませんでした。平成11年に「次世代省エネ基準」が定められましたが、約20年もそのままにされた状態で、結局は「基準適合義務化」は見送りという結果となりました。

 

見送りとなったのは、主に下記の理由だと言われています。

  • 中小工務店業界全体(設計事務所を含む)としての現況の基準適合率や習熟度の低さ
  • 住宅事業者の取り組みやすさへの準備不足
  • 省エネ基準の合理化、手続きの簡素化などの負担軽減措置の未整備

 

パリ協定を受けて、2030年までに日本のトータルで26%のCO2の削減をしなくてはならないとされています。その結果、業務部門と家庭部門、すなわち建物で40%を削減することも決まっています。この削減は地球温暖化に対しての責任でもあります。住宅の省エネ基準適合義務化を見送ってもその目標は達成できるという判断のようですが、今後もその状況を検証していく必要があります。

 

住宅業界は生活者の「省エネ住宅シフト」で住宅事業者の淘汰が加速する

今回の決定では、既に省エネ基準適合を標準としている住宅会社や、基準を大きく超える高性能な住宅をつくっている住宅会社など「高断熱推進派」にとっては残念な結果となりました。

 

一方で、「省エネ基準に適合している住宅を建てているのか?」という明確な判断軸が決まったことにもなりますので、「高断熱推進派」にとってはより差別化の武器になると考えられます。

 

「高断熱否定派」の住宅事業者の中には、「エンドユーザーは(費用をかけてまで)性能を高めることを求めていない」と言う人もいますが、それは大きな間違いです。そもそも省エネ基準が義務化されていないことから、住宅の温熱環境についてどこまで施主に設計内容や仕様を話しているかも不明です。

 

「省エネ基準に適合させるとコストアップになります」と伝えている住宅事業者は、その時点で省エネ基準以下の「夏暑く冬寒くて、ヒートショックによる健康リスクが高い住宅」を建てていると宣言しているのと同じです。

 

「自分が住む家ではない」からどうしても当事者意識が生まれず、建設コストが上がることが営業面で不利になることを恐れているのと、面倒な手続きや施工を回避したいのが「高断熱否定派」の住宅事業者の本音です。

 

省エネ住宅への取り組みを強化するには、各工務店の省エネ基準適合率の向上を進める「ボトムアップ」と、ZEHやBELSに向けた「トップアップ」の両方が求められます。

 

これからの家づくりで「住宅貧乏」にならないために必ず確認すべきポイント

日本の住宅業界は、これまで以上に先進国としての地球温暖化への責務を前提に、住宅の温熱性能を高めることが、快適で健康な暮らしにつながるということを、啓蒙していかなくてはなりません。

 

これから家づくりを始める人が「住宅貧乏」にならないために必ず確認すべきポイントを下記にまとめます。

 

  • 住宅の温熱性能を高める必要性をきちんと理解する(関連する本を読むことをお勧めします)

 

  • 「高断熱推進派」の住宅事業者に相談する(否定派より家づくりの能力が高い会社が多いです)

 

  • 「省エネ基準以上の性能を実現してほしい」と必ず伝える(否定したら、その会社はパス)

 

住宅会社を選ぶときは、間取りやデザイン、見積りの価格などに意識が向きがちですが、住宅の性能面での取り組みはその会社の実力がはっきりと分かる部分でもありますので、上記のポイントをぜひ確認して家づくりを進めてください。

 

まとめ

住宅は、社会資産であり、インフラでもあります。住宅は次世代に受け継ぐ社会資産、インフラであると考える欧米と比較すると、日本の住宅の質や景観の差は明らかで、日本は「住宅貧乏」の国のままです。現世代限りの個人資産としての日本の住宅のあり方を見直す必要があります。基本性能を確保した資産価値の高い住宅を増やすことで、生活者、事業者、国が得られる利益は大きくなり、結果として日本の住環境は豊かになっていくはずです。そのためにはまず、「夏暑く冬寒い家」を建てることを止めて、最低限の省エネ基準適合義務化をすべての住宅で実現する必要があります。

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今回ご紹介する優秀な設計事務所

SUR都市建築事務所 

家づくりは人と人との信頼関係です。何よりも設計者と建築主とのコミュニケーションが大事だと思います。私たちの提案「パッシブデザイン・ゼロエネ住宅」「高い性能、使い勝手とコストのバランス」「庭づくり」に共感していただけるなら、いっしょに家づくりをしませんか。楽しい協同作業からは、大らかな空間を持つ素晴らしい住宅が生まれます。

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

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