人生100年時代の住まい選びは「住み替え」がキーワード
「人生100年時代」と言われる長寿社会を日本は迎えています。社会的な変化や未来の変化の予測により、かつて「住宅すごろく」と言われたセオリーは当てはまらなくなっています。それに伴い、住まいの選び方にも「自分や家族にとって適した解」を自分自身で考えなくてはならなくなりました。このコラムでは、今後の家づくりで知っておきたい情報をまとめてお伝えします。
高齢化と人口減少は止まることはないことが前提
これからの日本は、かつて世界が経験したことのない「超高齢化社会」を迎えようとしています。賃貸からスタートして最後は一戸建て住宅や分譲マンションを購入するという「住宅すごろく」の影響もあり、空き家が増え続けるという減少も起きています。
自分や社会の将来を予想することは困難ですが、多くの人が100歳まで生きるといわれる現在の住まい選びでは、ライフステージに合わせて住み替えていくような柔軟な発想も必要です。その際に必ず考えておきたいことは、高齢化と人口減少の問題です。
日本の住まいの環境は激変する
今後、住宅関連で予想されている変化について、時系列にまとめてみます。
(出所)河合雅司氏「未来の年表」(講談社現代新書)を基に弊社作成
- 2019年 世帯数が約5300万でピークを迎える
- 2021年 団塊ジュニア世代が50代に突入
- 2022年
・生産緑地の税制優遇が期限切れとなり、宅地等に転用されることが予想される
・団塊世代の先頭が後期高齢者(75歳)に - 2033年 空き家が増加し、3戸に1戸は人が住まなくなる
- 2040年
・全国の自治体の半数近くが消滅の危機に
・団塊ジュニア世代がすべて65歳以上に - 2050年
・現在の居住地の約20%が「誰も住まない土地」になる
・団塊ジュニア世代がすべて75歳以上に - 2053年 総人口が1億人を割る
- 2055年 4人に1人が75歳以上に
- 2065年 2.5人に1人が高齢者となる
日本の財政も厳しいことが予想され、上記の課題を抜本的に改善することは難しいでしょう。行政サービスも現状並みに保てるかどうかは疑問が残ります。
国が進める「立地適正化計画」は、住まいや公共施設、医療施設、商業施設などを一定の範囲内に収めて「コンパクトなまちづくり」をするのと同時に、市街地の空洞化を防止する試みです。逆にいえば、それ以外の地域では満足な行政サービスを受けにくくなる可能性も考えられます。
超高齢化社会の住まい選びのキーワードは「住み替え」
住まい選びを考える場合、「持ち家か賃貸か」「新築か中古か」ということをまずは検討すると思います。
「持ち家か賃貸か」を検討する場合、「持ち家」を選択した場合は戸建て住宅かマンションを購入するかの選択肢があります。
首都圏のマンションを検討する場合、建築費の高騰や地価の上昇で新築マンションの価格が高い水準になり、人気の高い一部のマンションを除くと、売れ行きが鈍化して完成在庫が積み上がっているという情報もあります。
上記のような理由もあり、今後の持ち家については新築にこだわらず中古マンションを購入する層が増えています。その結果としてマンション市場の相場が上がっており、新築の小規模な戸建て住宅にシフトする傾向もあります。
住宅の購入には、複数のリスクを含むことになるので、慎重な検討が必要です。長期の住宅ローンを返済できるか、住み始めてからの納税や修繕費の積み立てができるか、住居が固定されることでの機会損失、住宅ローン返済の影響による資産形成の難しさ、将来の売却が可能かどうかの資産としての評価の検討などです。
まとめ
超高齢化社会の住まい選びのキーワードは「住み替え」だと筆者は考えます。実際に住み替えるかどうかは別にして、「住み替え」が可能なかたちで住まい選びを行うことが重要です。自分や家族の人生には「予測のできない事態」が起きることもあります。
その際に、状況に応じて「住み替え」ができるように、購入する場合には「地価が下がりにくい土地を選び、家の資産価値(売却時の価格を考慮)を保つ」ことを考えて、戸建て住宅やマンションを選ぶことが重要です。購入はせず賃貸で暮らし続けることを選択した場合には、生涯にわたって「住居費」のコストがかかりますので、そのための備えが必要となります。
人生100年時代の住まい選びは、自分や家族のライフステージを検討して、賃貸と持ち家を状況に応じて住み替えていくような「しなやかさ」が必要なのかもしれません。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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