家づくりは消費者保護が大前提になる!2020年に予定される民法改正の衝撃
社会の取引ルールを定める民法(債権関係)が大改正されることになりました。大きなポイントとしては、「瑕疵(かし)」という文言が廃止されて「契約の内容に適合しない(契約不適合)」と言い換えられる点があります。「契約不適合は原則として補修」という考え方は、家づくりのルールを大きく変え、すまい手とつくり手の関係性まで変えてしまうかもしれません。
家づくりが、民法改正で、どう変わるのか
民法(債権関係)は、商取引に関する社会の共通ルールで、明治時代から改正されてこなかった法律です。2017年5月に、民法(債権関係)の改正法が国会で成立し、現在のところ施行は3年後の2020年の見通しと予想されています。この改正では、「国民一般にわかりやすいものとする」との観点から、これまでに最高裁判例の明文化、確定した解釈の明確化などが進められました。
民法は、主に「総則、物権、債権、親族、相続」で構成されており、今回の改正では「債権」が「多くが改正対象」となって書き換わり、それに伴って全体の共通ルールである「総則」も「一部が改正対象」となりました。債権とは、「人の人に対する権利や各種の典型契約(売買、請負、委任、賃貸借など)について規定した部分」です。その他は、今回は改正対象外となっています。
家づくりと関係が深い改正点には、請負契約における「瑕疵担保責任」ルールの廃止があります。建築工事請負契約にしか適用されない条項はなくなり、「瑕疵担保責任」は売買契約と同じルールで規定されます。
建て主と、住宅会社の関係は、どう変わるのか
国内で最も多く建築されている建物は住宅です。改正民法では、契約内容を特に重んじますので、建て主側の権利意識が高まることが予想されます。逆に住宅会社としては、契約をより重視する意識が高まることが予想されますので、今まで以上に建て主との合意に重きを置くかたちになっていくと思われます。
家づくりにおいて「契約」の重要性がより高まると共に、住宅会社にとっては信頼感を訴求する機会になります。仮に住宅会社が契約書や設計図書、免責特約などをたてに一方的に権利を押し付ける場合でも、建て主側には「消費者契約法」が存在しますので争うことは可能です。
今回の改正民法で、家づくりの仕事に関連する項目としては、「瑕疵」という文言が廃止されて「契約の内容に適合しない(契約不適合)」と言い換えられる点があります。そして、建設した住宅に図面と一致しない契約不適合があった場合には、まずは建設を担った住宅会社に補修を求める権利を建て主に認めることになります。
それでも対応してもらえない状況が生じてから、建て主に代金減額の請求権が発生するのです。住宅会社にとってクレームが生じてから素早く的確に対応する重要性は増す見込みです。
保証期間は、「瑕疵担保責任期間」から「時効」の考え方へ
欠陥責任の存続期間について、現在は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)の考え方を根拠に、「構造上主要な部分および雨水の侵入を防止する部分は引き渡しから10年間」「その他の部分は1年間」とするのが一般的です。
改正民法では、建て主には欠陥責任の存続期間内なら修理を頼む権利(債権)があり、住宅会社はその債務を負うという考え方です。債権には時効がありますので、時間が過ぎれば時効が成立することになります。
原則論では、住宅のあらゆる部分に上記の規定は影響されますが、その場合には相当額の保証コストが発生しますので、請負代金の上昇にもつながる大きな問題です。現在の請負契約のベースとなっている民間連合協定の約款が、「住宅の保証範囲」や「保証の時効」に関して、どのように改正民法に対応されるのかが注目です。
まとめ
家づくりがようやく「消費者保護」の時代を迎えました。すまい手の立場で考えると、この法改正はつくり手の姿勢を判断するポイントになります。法改正には新しいルールへの移行期間を含めて混乱が生じやすいのですが、意識の高い住宅会社は「法律は知っていて実践する者に味方する」ことを理解しておりますので、法改正への取り組みもしっかり行っているはずです。
「あうんの呼吸(以心伝心)」から、これまで以上に「契約書や図面、見積書等でしっかりコミュニケーションをとる」ことになりますので、家づくりにはすまい手、つくり手双方の努力が必要になりますが、より良い家づくりが実践されることを筆者は期待しています。
良好で有効なコミュニケーションを図るために、契約時に「住宅性能の合意」を交わすことは有効です。既存の仕組みから選択すると、「住宅性能表示制度」は、すまい手とつくり手双方にとってわかりやすく使いやすいサービスと言えるでしょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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