木構造の建築基準法における位置付けと構造計算に対する大きな誤解
木造の構造に関する建築基準法の内容は、大きな矛盾による、大きな誤解があります。建築基準法第20条(構造耐力)には、建築物は「安全な構造としなければならない」という内容が書かれてあります。一方で構造計算を要する建築物を指定しているため、指定されていない四号建築物は「構造計算はいらない」という誤った認識が建築実務者に蔓延しています。全ての木造建築物は仕様規定を満たすことは求められていますので、四号建築物でも「簡易な計算方法での確認」と「構造に関する仕様を守った計画」は必須であり、実際には構造の安全性を検証することは義務なのです。
木構造の建築基準法における位置付け
建築基準法第6条で木造住宅(木造)は以下の図解のように位置付けられています。建築基準法第6条1項二号のいずれかに該当するものを二号建築物、建築基準法第6条1項四号の全てに該当するものを四号建築物といいます。次に建築基準法第20条(構造耐力)として構造安全性の検討方法を示しています。
仕様規定とは「簡易な計算方法での確認」と「構造に関する仕様を守った計画」
木構造における仕様規定とは、建築基準法施行令第3章第3節「木造」(令40条から50条)および第2節「構造部材等」を示します。
木造の構造計算に対する大きな誤解
建築基準法第20条1項四号から建築基準法施行令第38条3項、施行令第38条〜80条の3の流れに従うように指示し、その中の施行令第38条2項が、四号建築物の構造計算は不要で、仕様規定のみを満たしていればという根拠になっています。
建築基準法第20条(構造耐力)及び建築基準法施行令第38条(基礎)では、全ての建築物は構造耐力上安全であることを規定しています。しかし、仕様規定だけでは、法第20条、令第38条で求めている安全は担保できません。
安全な構造であるかどうかを確かめるには構造計算もしくは実験による方法しかなく、「構造計算しなくてもよい」とはどこにも記載されていません。
建築基準法第20条(構造耐力)は下記です。
「建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧ならびに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。」
建築基準法施行令第38条(基礎)は下記です。
「建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。」
建築基準法第20条の要点をまとめると、下記になります。
・建築基準法第6条:四号建築物
・建築基準法第20条:四号建築物
・建築基準法第20条で求める安全性確認:仕様規定
・確認申請に必要なもの:四号建築物は特例により提出不要
法第20条だけ見ると、四号建築物は仕様規定のみ満たしていれば安全性を確認されていると読み取れますが、この条文が大きな誤解を招いています。仕様規定の簡易計算は構造計算(許容応力度計算)ではありません。
四号建築物は仕様規定もしくは構造計算により安全性を確認しますが、「四号特例」により確認申請に構造計算書として提出不要であるという考えもあります。実際には、地方自治体の建築指導課や、民間の確認申請機関に、「構造計算書」の提出について確認する必要があります。
まとめ
全ての木造建築物は仕様規定を満たすことは求められています。ただし実際には構造計算を行わないと、法第20条(構造耐力)及び施行令第38条(基礎)を満たしていないことになり、結局は建築基準法の基準を満たしていない建物になります。
この大きな矛盾に建築実務者の判断は3つに別れます。
- 仕様規定を満たすかを検証しない(四号特例で建築士の判断に委ねられているため)
- 仕様規定は満たしているが、構造計算は行わない
- 構造計算を行う
上記1の対応はまさに「構造計算はいらない」と勘違いしている建築士の対応となり、安全性の検証がされていない耐震性の低い木造建築となります。上記1もしくは2の対応では、建物に構造に関する事故が起きた場合、瑕疵とはならず設計ミスとなり建築士の責任が問われます。「建築基準法」は守っても、「建築士の責任」は果たせなくなるという厳しい事実です。
結論としては、上記3のように四号建築物でも構造計算を行ない、実務を円滑に進めるために「四号特例」により確認申請に構造計算書として提出しないという判断が最も正しいのです。
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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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