ZEH化にかかる費用は約10年で回収できる!ZEHのコスト解説
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)には、確かにいろいろなメリットがあります。しかしあまりにもイニシャルコストがかかるようでは、なかなか実現できません。では一般的な規模の住宅をゼロエネ化するには一体どのぐらいのコストアップになるのでしょうか。1年以上経った雑司が谷ZEHの実績を例に省エネに積極的な設計事務所に依頼する場合、どのようになるか具体的に見たいと思います。
基準となるのは長期優良住宅
コストアップといっても基準をどこに置くかでずいぶん違ってしまいますね。
ここではハウスメーカーの標準と言って良い長期優良住宅レベルを基準に考えてゆきます。
省エネ性能という意味では「次世代省エネルギー基準」をクリアした住宅になります。
省エネ性能アップの基本はパッシブデザイン
コストを掛けずに省エネ化するために、まず大切になってくるのは自然エネルギー利用のパッシブデザインです。
きちんと庇を出して日照を制御すること、窓の位置を工夫して通風をとること、地中熱利用などで蓄熱量を確保することなどです。
パッシブデザインはコストのかかることではありませんから、ここをきちんとすることはとても大切なポイントです。
パッシブデザインをおろそかにしてそれ以外のところでカバーしようとすると非常にコストがかかることになってしまいます。
コストを掛けるのはサッシと断熱材
パッシブデザインは大前提として、まずコストを掛けるべきなのはサッシと断熱です。
サッシは長期優良住宅よりは確実にワンランク上が必要になります。窓の量が多い雑司が谷ZEHの場合は南面の大きな窓はトリプルガラスの高性能サッシを使っているので、サッシ代のアップは比較的大きく50万円程度です。
断熱も長期優良レベルの充填断熱に外貼り断熱をプラスしていて、コストとしては50万円近くアップですが、断熱の強化と比較して、サッシのグレードアップは性能に大きく影響しますからコスト的に許す範囲でサッシは高性能なものが望ましいと言えます。
建物が高性能なら空調はむしろコストダウン
次に比重の大きいのは空調設備ですが、建物が高性能なら小さな設備で間に合います。
効率がもっとも良いエアコンを使うとして、普通は各部屋1台ですから1軒で5〜6台必要ですが、雑司が谷ZEHでは8帖用と10帖用各1台、合計2台のエアコンで全館空調が可能ですから、ここでは逆に40〜50万円ダウンです。
高性能なZEHならエアコンで十分快適な空調が可能ですから、100万円以上かかる床暖房の必要も無く、床暖房を入れる場合と比較すればさらに100万円以上浮くことになります。
その他の設備も省エネ型を選びます
その他の設備で大きい物は給湯です。これはエコキュート、エコジョーズあるいはエネファームなどの省エネ型の機器が必要です。
雑司が谷ZEHはエコキュートを使っていて一般的なガス給湯器より機器代は20万円ほどアップですが、オール電化でガス工事が不要なのでプラスマイナスゼロでしょうか。
その他省エネ水栓金具やLED照明器具を選ぶことになりますが、これらは一般的な物なのでほとんどコストアップにはなりません。
太陽光発電は必須
さて、いくら建物の省エネ性能を上げても、ある程度のエネルギーは使う訳ですから、エネルギーを作り出さなければZEHにはなりません。
そこでどうしても必要になるのが太陽光発電です。
一般的な35坪程度の住宅の場合、上に挙げてきた建物の仕様に5kw程度の太陽光発電があればZEHになります。
太陽光発電の価格はだいぶこなれてきましたから5kwは150万円以下で十分可能です。
まとめ
イニシャルコストアップはランニングコストダウンで回収できます。
以上のプラスマイナスをまとめると、
・建物性能アップには断熱、サッシ、設備あわせて100万円程度必要。
・しかし建物性能アップしたことにより空調設備は逆に50〜100万円ダウン。
・したがって、ZEH化のコストアップはほぼ太陽光発電の150万円分、多めに見ても200万円。
つまり150〜200万円の投資で年間の光熱費(電気,ガス、水道)ゼロを実現できる事になります。
一般的な4人家族の年間光熱費は次世代省エネレベルの建物でも20万円近くになりますから、それがゼロになるのなら10年程度で投資が回収できます。
基準をもっと性能の低い住宅に置いた場合、イニシャルコストの差はもっと大きくなりますが、一般家庭の年間の光熱費は平均約30万円ですから、それがゼロになれば長期収支はあまり変わりません。
ZEHは健康的で快適、環境に優しいだけでなくフトコロにも優しいのです。
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