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2017.11.17

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エコ×美しさ×使いやすさ。どこにも妥協しないスタイル。

1984年に設立されたSUR都市建築事務所。日本中がバブル景気に浮かれる最中、今ではポピュラーになった自然エネルギーを取り入れる「パッシブデザイン」へ、いち早く取り組み始めた会社です。30余年にわたり蓄積されたそのノウハウとは?――東京・高田馬場の都心にありながら緑に囲まれたオフィスで、代表である浦田義久氏と篠崎素子氏にお話を聞きました。

なりゆきで組んだはずが、考え方が合致した2人

よく夫婦と間違えられますが、僕たちは赤の他人です(笑)。僕が個人事務所で細々と設計をやっていた時に、一人では手に負えない大きな案件が入ってきて、なりゆきで友人の妹である篠崎にヘルプを頼んだことがきっかけ。彼女が建築を学んでいたことを知っていましたからね。いざ組んでみると、僕と篠崎は「理想の家とはこんな家」という主軸になる考え方がよく似ていることがわかったんです。特に、省エネやエコに対する意識が高かったこと。景気が良くてお金を湯水のように使うような風潮があった当時にしては、「もったいない精神」をしっかり持って建築に取り入れようと考えていた僕たちは、珍しい部類だったのではないでしょうか。

浦田さん社名のSURは「SPACE URBANISM」の略。篠崎と浦田のSとUを使って社名を作ろうと考えて、空間という意味の「SPACE」と、都市計画という意味の「URBANISM」を選びました。特別、都市計画にかかわることは少ないですが、単に1戸の住宅を建てるだけではなくて、その街の一部分としての住宅を作るという考え方を大切にしたいと思ったからです。

補い合いながらコツコツとやってきた32年間

設立から一貫してコツコツとやってきたのが私たちのスタイル。浮き沈みや激動がない低空飛行という感じですね(笑)。2人で良かったと思うのは、冷静沈着な浦田と人付き合いが得意な私で、お互い得手不得手があるからこそ補い合える点。また、何か決断する時やトラブルがあった時に、相談相手がいるのもいいところですよね。これが同級生や夫婦だったら、仲がいい時と悪い時の波があったり、なあなあになったりする恐れがあるかもしれませんが、いい意味で赤の他人なので(笑)、クールに指摘し合えるのはメリットだと思います。

浦田さん仕事の進め方は、知人から個人で受けた案件は別として、1つの案件に対して2人で話し合いながら案を練っていきます。実設計はほかにも建築士のスタッフを抱えているので、複数名で受け持つことも。現場は私か浦田のどちらか一方が責任者として担当します。案件のほとんどは一戸建ての注文住宅。今は木造でも優れた構造があるので、断熱などを総合的に考えた結果、木造住宅になることが圧倒的に多いですね。お客さまは当社のサイトを見て来るエコ意識の高い人ばかり。知り合いや大工さんなどの紹介が多いのも当社の特徴だと思います。

相棒が女性だからこそ、尊重や協力がスムーズに

そもそも僕は絵が好きで、高校では美術部に入っていました。会社勤めをする気はなかったものの、芸術家になるというよりデザインが好きだったので、建築のほうに適性があるのかな、と思って、自然にこの世界へ。大学で4年間建築を学んで、研究室と建築事務所で一級建築士を取るための実務経験を積みました。一級を取ったらすぐにシェアオフィスの一画にデスクを構えて個人事務所として独立。まともに就職したことはなかったんですよ。

篠崎と一緒に設計事務所を立ち上げることができたのは、後から思うと僕にとってラッキーでした。僕の性格からいって、男同士だと張り合っちゃう(笑)。女性だからこそ、尊重することや協力し合うことができているんじゃないかな。僕たちは意識してはいませんが、「女性建築士がいるから」と来られるお客さまもいますしね。

浦田さん当社のコンセプトのひとつであるパッシブデザインを重要に考えるようになったきっかけは、僕の場合、父親が医者でヒートショックにとても関心を持っていたことが大きかったです。最初に設計した家が父の依頼だったんですが、「断熱だけはしっかりしろ」と言われました。ヒートショックにより家の中で亡くなる方は交通事故よりも多いといいます。気温のバリアフリーの大切さに目覚め、それ以来、真剣に取り組んでいるんですよ。

女性の活躍が難しい分野での独立に感謝

私は小さい頃は科学者になりたいと思っていました。今で言う「リケジョ」の走りでしょうか(笑)。ところが小学生の時に、おじが建築関係だったご縁で、ある衝撃的な家に出会ってしまったんです。その家というのは、キューブ型の建物がちょっとした壁で仕切られているだけで、トイレにさえドアがない!ペチカがあって家全体を温めるので、温熱的にも優れた設計でした。今ならあってもおかしくはない家ですが、50年も前の話。これに感動したことをきっかけに、私の夢は同じ理系でも科学者から建築士へ、方向転換していきました。理系といっても建築は芸術に近い分野です。かといって芸術でもなく、社会性や実用性があって、制約の中でものを作るという面白さに夢中になりましたね。

大学で建築を学びましたが、いざ就職となると、ゼネコンでは女性にはまだ一般職しか用意されていない時代です。就職するなら設計事務所だな、と思っている時に浦田を手伝うようになって、一緒に設計事務所を立ち上げることになりました。女性でありながら立ち上げメンバーになれたことには、とても感謝。私は何かあると大騒ぎしてしまう性質ですが、浦田はいつも動じないので、その点でも助かっていますね。

浦田さんパッシブデザインについては、もともと私は「もったいない」意識が高かったんですが、去年の冬、その大切さを実感するできごとがありました。軽井沢にある当社が設計した別荘に泊まりに行った時のことです。数時間ではありましたが、朝から停電になってしまったんですね。その別荘は電気が使えなくても凍えるような心配はなかったので普通に別荘生活を楽しむことができましたが、近隣の家では暖房が使えなくて大変だったそうです。水道の配管が凍ってしまうことを防ぐための水抜きができなくて焦った家もあったとのこと。ライフラインが途絶えるような緊急事態があっても、当社の設計はすごく強いんだな、と実感しましたね。

一言で言えば、“親切設計・ぽかぽか住宅”

当社が目指す住宅の3要素とは、優れた温熱性能や高い耐震性能を持つ「高性能住宅」、機能的で使い勝手のいい「高機能住宅」、生活を楽しく豊かにする美しい「高感度住宅」です。この3要素のバランスが大切で、そのどれが欠けても理想の家を作ることはできないと考えています。中でも当社が力を入れているのが、優れた温熱性能を実現するための地中熱利用です。

地中熱資料近年、最先端の省エネ住宅である「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を目指す設計が増えていますが、これは日々の生活で使う「消費エネルギー」と、太陽光発電などでつくり出す「創エネルギー」の差がゼロ、または創エネルギーのほうが多い住宅のことを指します。創エネルギーといえば第一に太陽熱が頭に浮かぶでしょう。実はもうひとつ、同じぐらい大事な役目を果たすのが地中熱なんです。

30年のノウハウで実現した地中熱システム

洞窟の気温や地下水の温度が、冬は温かく夏は冷たく感じるように、地中熱は安定した温度を保っているもの。一般的な住宅は床下が外気にさらされているため、季節の変化により室内の気温も左右されますが、当社の設計では「地中熱利用床下空気循環システム」により、安定した室内の気温を保つことを可能にしています。簡単に言うと、床下を室内化することにより安定した気温が得られ、その空気をダクトで建物全体に行き渡らせることで、「冬は寒くなく、夏は暑くない」エコ住宅ができるんですね。

その性能は、大きな家を小型のエアコン1台でまかなえるくらいの効率の良さ!これは、実践と勉強を続けながら、そしてちょっとした失敗を繰り返しながら、30年かかって積み上げてきたノウハウがなせる業です。当社のように、地中熱利用のパッシブデザインを基本にしている設計事務所は珍しいと思いますよ。他社はノウハウがないからできないのでしょう。この技術を、なるべく多く世の中に広めるべきだと思っています。微力ですが、伝えていくことで地球環境を守る役に立つことができますからね。

地中熱システム

地熱利用のパッシブソーラー&エコロジーハウス

地熱利用以外にもさまざまなパッシブデザインを駆使

当社で積極的に使用している内装材が珪藻土です。湿度の調整や断熱、吸音、脱臭などさまざまな性能を持ち、アトピーやシックハウスなどの健康問題にも対応した優れた素材。お茶やソースのシミがついても、数か月のうちに分解して消してしまうという実験結果もあります。また、皆さんソーラーパネルはご存知でしょうが、ソーラーウォールという壁に設置する集熱パネルもあるんですよ。太陽熱で熱くなった空気を室内に引き込み、日が当たらないところに日なたの温かさをもたらすもの。冬は太陽が低い時期なので、壁に設置したほうが効率がいいんですね。

温熱に興味を持って仕事をしていると、情報がどんどん集まってきます。マイナス何度という環境のアイヌの家を研究している人のノウハウを教えてもらったこともあるんですよ。最新の技術と昔ながらの知恵の融合、そしてひとつひとつの素材や技術を積み重ねて、どう家としてまとめ上げていくかが、当社の腕の見せ所です。

珪藻土が有機物を分解する実験結果

珪藻土が有機物を分解する実験結果

ソーラーウォールと、設置した家の建築模型

ソーラーウォールと、設置した家の建築模型

より断熱効果を高めた構造の二重窓

より断熱効果を高めた構造の二重窓

住む人のオペレーションで初めてZEHが実現

僕は今年に入って、ZEHを目指した自邸を竣工しました。オペレーションのしかたを変えていろいろなデータを取っている実験住宅です。通常、暖房用には床下に、冷房用には高いところにエアコンを設置して、どちらかを作動させますが、これを1台でできないかを研究したり、窓の開け方でどう変わるかや、グリーンカーテンの効き目を調べたり。まだ建って半年過ぎたところですが、この半年では創エネルギーのほうが上回るといういい結果が出ています。

ZEH自邸また、当社では家は庭ができて初めて「家庭」になると考え、庭づくりにも力を入れていますが、この家には2階デッキを貫くシンボルツリーがあり、玄関アプローチ、寝室から見える庭、お風呂前の坪庭と、3つの庭が備わっています。四季を通じた変化や、樹木が成長する様子を見るのも楽しみですね。

地球環境を第一に考える、天使のようなお客さま

当社の作品を一見すると、統一感がない印象を受けるかもしれません。それは、当社が目指す住宅の3要素のうち、表面に見える「高機能住宅」と「高感度住宅」の部分はお客さまとのコミュニケーションで大きく変わってくるから。でも芯に流れている「高性能住宅」のコンセプトは共通していて、当社はその時に、その家の条件下でできる最大限の性能をご提案するだけです。

当社のお客さまは天使のようにいい人ばかり。自分の得よりも地球環境を考えるような意識の高い人たちです。ZEHを目指しているので、電気料金票の数値が下がっていると大喜び(笑)。ムリをせずに、エコ生活をエンジョイしていることがわ伝わってきます。ある家のご主人は建築写真家でデザイン志向でしたが、当社の提案に賛同して、パッシブデザインにはまってしまいました(笑)。室内外の温度を測ってグラフ化したり、空気の吹き出し口に自作のファンをつけたり。そんなヒントをもらった私たちは、まだ性能を進化させられるんじゃないかと、日々に工夫を重ねています。家を建てた後にもお客さまとそんなコミュニケーションが続くのは、とてもありがたいことですね。

ZEH仕様の建築家自邸 見学ができます!(要事前予約)

SUR都市建築事務所 

家づくりは人と人との信頼関係です。何よりも設計者と建築主とのコミュニケーションが大事だと思います。私たちの提案「パッシブデザイン・ゼロエネ住宅」「高い性能、使い勝手とコストのバランス」「庭づくり」に共感していただけるなら、いっしょに家づくりをしませんか。楽しい協同作業からは、大らかな空間を持つ素晴らしい住宅が生まれます。

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

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