公開日:2016.04.06 / 最終更新日:2018.11.03
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スタンダードの中にある気持ち良さ
家づくりにおいては、プロのつくり手に自分の考えを素直に伝えると、イメージを引き出され、様々なアイデアを出してもらい、さらにプラスアルファの提案も受けることができます。そうした家づくりを実践するつくり手が、埼玉県蕨市の株式会社山岡建築研究所です。
家づくりで最も大切なことは、新しい家でどのような暮らしを望むのかを明確にすることです。
自分たちの暮らし方を考えることは難しいと思いますが、毎日の生活をひとつずつ思い描いてみてください。この問いが家づくりの始まりでもあります。
ただ、イメージはあってもそれを伝えることは、なかなか難しいことです。そういうときには、誰かと話すことで自分の考えが徐々に具体化することもあるのではないでしょうか。
対話を重ねながら自分たちの暮らし方にあった住まいが実現できるように、お客様の「家づくりをお手伝いする」スタンスのつくり手が山岡建築研究所です。
JR西川口駅から歩くこと、約20分。
住宅街のなかに、「つくる家」と書かれた看板が見えてきた。
敷地に入ると、右手に片流れ屋根の白い建物がある。屋根勾配で変化を付けたモダンな外観が印象的だ。手前の小さな屋根側が山岡建築研究所の事務所、アプローチを進んだ大きな屋根側が山岡さんの自宅になっている。
出迎えてくれたのは、株式会社山岡建築研究所の代表取締役の山岡良匡さん。
事務所内部は、打ち合わせスペースと、山岡さんのデスク、建築に関する本が並べられた木製の本棚がある。明るくて、気持ちの良い事務所だ。
「設計を引き受ける前に必ず私が設計した自邸を見てもらっています。住まいに対する考え方や住まい方を最も伝えやすいと考えているからです」
自宅で設計事務所を開いている建築家に依頼するメリットの1つは、なんといってもその作風を実際に体感できること。建築家の自宅には、その建築家の家づくりに対する考え方が空間や使い勝手に反映されている。
「この敷地内には、私が設計した両親の家もあります。実家がこの場所で自動車整備工場を経営していたので、昔は洗車とかを手伝ったりしていましたね」
「子供の頃は、荒川などに行って釣りをするのが好きでした」
山岡さんは、趣味でロックバンドを結成するほどの音楽好きでもあるらしい。ちなみにギタリストとのこと。
「私が始めてギターを手にしたのは高校生のときです。当時はヘヴィメタルが流行りバンドブームが起こっていた1980年代後半です。私も流行りに乗り、練習に明け暮れる日々を過ごしました」
「今も「おやじバンド」を楽しんでいます(笑)。今は軽めのロックやオリジナル曲でのバンド活動をしており、年1回のライブが目標です」
「昔から料理をするのが好きです。進路を決めるときに、建築の道に進むか、料理の世界に進むかで悩んだくらいです」
山岡さんは建築系の専門学校を卒業後、建築設計事務所に就職する。
「設計事務所に勤めていたときは、いろいろな建物の設計を担当しました」
数社で実務経験を積み、2002年に「山岡建築研究所」を設立する。
独立当初は、他の設計事務所の外注先として図面作成などを行いつつ、知人の紹介で始めての住宅設計を受注する。
その後、自邸を自ら設計し、その自邸が住宅雑誌に掲載され、徐々に設計依頼が舞い込むようになる。
「結婚して子供を授かったということもあり、自邸を建てることにしました。自分自身が子育てする立場になったことで、家族でいかに暮らしていくかを考え抜いた家づくりは、これから家を建てる人の参考になればと思っています」
お客様との関係性
山岡さんに、依頼されるお客様のタイプについて聞いてみる。
「30代の子育て世代、40代のご夫婦が多いですね。普通の会社員の人がほとんどです」
「弊社が手がけた家の中で、その家を見学希望のお客様がいたら、以前の建て主さんに家を見せていただけるようお願いすることもあります」
「以前の建て主さんに新しいお客様を紹介されることもあります。ありがたい話ですね」
「設計させていただいた家に将来対応として店舗スペースをつくっておき、数年後に奥様がパン屋さんを開くことになり、その設計も依頼して頂きました」
山岡さんは引渡し後のお客様とも良好な関係を気づいており、新しく家づくりを考えているお客様をご案内したいと頼むと、前向きに受けてくれるそうだ。
山岡さんが手がける家には、ひとつひとつの住宅に、遊び心のあるような魅力あるデザインをポイントで必ずどこかに入れている。
「打合せを進めていく中で、その家の見せ場となるテーマを欲張らずに一つに決め、そこを中心に設計が展開できると、お客様にも共感していただき、良い家が生まれると考えています」
お客様の要望や、敷地の特性など様々な与条件を検証して生まれる案を、さりげなく魅力的にみせる設計手法が山岡さんの作風だ。
「お客様の本音をなんとか掴みたいとは思っています。それでうまく合致したお客さんは、最初の提案で、だいたい設計を依頼していただけます」
「欲張らないこと」で実現する、シンプルで飽きのこないデザイン
「私は設計するとき、あえて欲張らないようにしています。いろいろな要素を盛り込むことでバランスが崩れることもありますし、お客様の予算をきちんと守るためにも、設計の優先順位を決め、お客様と共有するようにしています」
「プランを考えるときもまず敷地の一番良いところを探して、そこを活かすことを考えます」
「斬新な美しいデザインというのと、昔の家の持つ普遍的な美しさというのがあると思うのですが、私は後者に注目していて、さりげない「スタンダードの中に気持ちよさのある空間」というのを大切にしたいと思っています」
「緑に囲まれた自然と親しめる暮らし、そこにずっといたくなるような、穏やかな空気が流れる住まいをつくりたいと考えています」
山岡さんは設計者として豊富なテクニックやアイデアを持っていても、あえて「欲張らない」ことで、シンプルなデザインによる飽きのこない長持ちする住まいを実現しています。
こんな家を求めるお客様には最適なつくり手です。
株式会社山岡建築研究所の「スタンダードの中にある気持ち良さ」はここまでです。
次回は「暮らしに楽しさをプラスする」をお伝えします。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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