公開日:2016.03.28 / 最終更新日:2018.11.03
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設計のプロから信頼される見積りと施工への姿勢
HB PRESSによる、「株式会社リモルデザイン」代表取締役の菅沼利文さんへのインタビュー。リモルデザインの技術へのこだわりやお客様に対する姿勢の話に続き、この後編では、現場で働く大工さん・職人さんとの関係性や、設計事務所案件の見積りや施工の対応について詳しく話をうかがいました。
リモルデザインは、つくり手として心がけていることがある。
「設計、見積り、工事すべてのプロセスで、「てまひま」かけることを、社員にも、大工さん、職人さんにも徹底しています」
「共に家づくりを行う立場として大工さん、職人さんはリスペクトしていますが、ものづくりの監督者と現場でつくる人にはほどよい緊張感が必要です。よい仕事を続けるための、適度な距離感を大切にしています」
リモルデザインの家づくりを支える大工さん、職人さんのチームはどのように築かれてきたのだろう。
「大工さん、職人さんを選ぶ基準は、技術力はもちろんですが、「てまひま」かける姿勢に共感し、対応してくれる人です」
仕事を依頼する大工さんは、今までの仕事を通じて、お互いに信頼できる方ばかりらしい。木造の家づくりは大工さんがキーパーソン。手がけられる仕事の量も仕事を依頼する大工さんの人数で決まる。
工事中の現場ではいろいろなことが起こることがある。お客様が設計段階で気づかなかったことや、現場を見ながら変更したいことも出てくる。
「工事の進捗状況や変更内容にもよりますが、対応できることであればなるべくお客様のご要望に沿うかたちにしたいと考えています」
きちんとつくった部分に再度手を加えるのは、ものづくりに携わる大工さん、職人さんとしては複雑だろう。そうした状況でもリモルデザインの現場監督と共にお客様に喜んでもらうために、快く変更内容に対応してくれる大工さん、職人さんのチームをつくりあげてきたという。
リモルデザインは、設計事務所から見積りや施工の依頼も多いとのこと。
今まで選ばれてきた理由について聞いてみる。
「設計者が考えるデザインの意図を把握し、施工図(造り方を指示する図面)
等で納まりを検討して、現場で指示するようにしています」
設計事務所が作成する図面は、建物の全体を示す役割で見積りや申請等にも使用される。それに対して施工図は、設計の意図を工務店が大工さん、職人さんに正確に伝えるための指示書になる。設計事務所としては安心して施工を任せられるだろう。
「施工図は、大工さん、職人さんに「てま」をかけてもらうためのメッセージであり、ミスや手戻りを防ぐための「ひま」を与えないためのメッセージでもあります」
「明確な意図を伝えると大工さん、職人さんは仕事が格段にしやすくなります」
工事費の見積りについても評価してもらえることが多いらしい。
「設計事務所様からは、設計案と予算のすり合わせを行うために、基本設計(家の全体のかたちが決まってきた段階での設計案)段階で、概算見積りの依頼を受けることがあります」
その時点で見積り用図面として渡されるのは、配置図(敷地と建物の位置関係を示す図面)、平面図(各階の間取り)、立面図(建物の外観図)と仕上げ表(内・外部の仕上げ材)や仕様書(設備機器などの一覧)など数枚の図面のみ。
数十枚に及ぶ設計図面一式を基に見積りを行うのが通常の方法だ。概算見積りの場合、設計内容の詳細も決まっていない段階なので、あくまでも目安として経験値に基づく積算を行う会社もある。
リモルデザインの場合、限られた情報でも内訳書を含めて20枚以上となる精度の高い概算見積書を作成しているという。
「図面を見て、大工さん、職人さんになってつもりで現場の仕事をイメージして、頭の中でその家をつくりながら見積書を作成しています」
「概算見積りでも本見積りでも、現場の家づくりに必要な全ての情報を図面に記載することは現実的には難しいです」
「頭の中で組み立ているので、図面に書いてないことでも必要であれば項目として抽出し、数量を積算しています」
「設計図面が全て揃っているほうがもちろんよいですが、図面の枚数や精度に左右されることなく、見積りができるように社員にも教育しています」
そうして作成された概算見積書には、何にどれだけお金がかかっているかが明確に示されているため、設計案と予算の調整を行う際にとても重宝されるのだという。
「見積り内容がイメージできているので、工事金額の調整を相談されるときも
明確にお答えできます」
リモルデザインは、コストを抑えるための工夫もいろいろと行っているという。
家の金額は、「使う建材等の価格」「大工さん、職人さんなどつくる人へ支払う金額」「会社経費」の合計で決まる。
「経営方針として、無駄なお金を使わないことを徹底しています。その結果として会社経費を抑えられ、お客様への提示する見積り金額も抑えることができていると思います」
「オリジナルでつくることだけにこだわらず、既製品でもよいものは使っています。建材メーカーが商品開発や実験を重ねて世に出している製品の中には、品質が良くコストパフォーマンスの高いものもありますので」
工事がほぼ完成し、お引き渡し間際の現場にも同行させてもらう。
菅沼さんと現場監督が最終確認を行う。その様子を見ていると、図面にも特に指示がなく、お客様からの要望もないが、リビングの中央にある階段を確認しながら、危ない位置がないかと入念に確認している。
そうしたてまひまかける姿勢が、お客様との信頼関係を生んでいる。
続いて、家の骨組みが立ち上がったばかりの現場にも同行させてもらう。
現場は作業中にも関わらず、きれいに整理整頓されていた。現場がきれいな工務店は良い仕事をしていると言われている。
菅沼さんに会社の将来について聞いてみた。
「オーナーシェフがつくる料理店は美味しいところが多いと思います。工務店も同じで、社長である私が社員と共に常に家づくりに携わることを重視しています」
「もちろん現状維持でなく常に勉強を続けて、より良い家づくりを続けていきたいです。」
リモルデザインは、つくり手として「てまひま」かけることを常に心がけています。
主体的に自分のアイデアや想いをこめた家をつくりたい人にとっては、最適なつくり手です。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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