家づくりの依頼先として工務店が選ばれ続けている理由
日本の戸建て住宅の約7割は、工務店が建てています。家づくりの担い手である工務店は、大手ハウスメーカーやパワービルダーのような宣伝等も行っておりませんし、会社としての信用力は比較しようもありません。それでもすまい手に工務店が選ばれ続けているのは、大組織の「優位性」を越えた小組織(工務店)の「有利性」にあります。その有利性にはいろいろな要素が考えられますが、あえて一言でまとめると「きめ細やかな対応」にあると筆者は考えます。
工務店の特徴は小規模であること
かつて日本の家づくりの担い手は、町の大工さんと材木屋さんの世界でしたが、劇的な市場環境の変化がありました。全国的に展開が広がった大手ハウスメーカー、地方大手の企業、これに住宅系フランチャイズグループや、ローコストを売りにするパワービルダー等の台頭です。しかしながらそうしたプロセスを経ても、圧倒的に多いのは手がける住宅数が年間10棟以下という工務店なのです。企業活動としては小規模の部類に入ると言えます。
この企業活動が小規模であるということが、実は工務店の仕事を特徴づける原点と言えるかもしれません。つまり、すまい手や設計事務所の注文に応えて工事を進めていく仕事のやり方は、大量生産向きではないのです。
木造住宅の仕事は大工さんが要ですので、仕事量は抱えている大工さんの人数に比例します。仮に常時仕事を依頼できる大工さんを3人抱えていたとして、うまくローテーションさせながら工事を行なったとしても、一つの現場で大工さんは3〜4ヶ月はかかりきりになりますので、完成できるのはせいぜい年間に10棟程度です。
工務店を選定する際に、工務店は新築住宅の工事の合間に増改築やメンテナンスや修理などの仕事も依頼されますから、新築を手がける棟数だけで工務店の規模や能力を判断しないように注意してください。リフォームの仕事を受けていても、新築の仕事もきっちりこなす工務店も少なくありませんし、社長の目が行き届く範囲の工事しか請け負わない会社もあります。
地域の工務店が支持される理由
工務店が支持されるのは、大手では難しいと思われる機能への期待です。大組織の「優位性」を越えた小組織(工務店)の「有利性」にあります。その有利性とは「きめ細やかな対応」にあると筆者は考えます。
地域の工務店が強い支持される理由を挙げてみます。
- 小回りが利く
- 細かな注文に応じてくれる
- 現場で仕事をやってくれる人たちの顔が直接見える
- 営業マンではなく、(工務店の)社長と打合せができる
- 営業経費をあまりかけていないため、見積り金額が適正価格
大手の会社と比較すると、営業経費や広告宣伝費などの費用をあまりかけていないことも大きな特徴です。
さらに手がけた住宅を長年にわたって保全するという「家守り」機能への期待も大きいと思われます。これは地元で親近感があり頼みやすいからという理由とセットですが、これに仕事が誠実で安心できるということになれば、全幅の信頼を受けることになります。
まとめ
地域のすまい手は、そんな身近で頼りになる、実力のある工務店を探し求めています。現在はインターネットやSNSが普及した社会ですが、家づくりは高い買い物ということもあり、OB客の評価を聞いたり、友人・知人が建てた家を訪問して共感しその工務店を紹介してもらうということも少なくないのです。
工務店は、すまい手との出会いの機会として、構造・完成見学会等を実施して「自社の家づくり」を伝える場を設けています。お気に入りの工務店が絞られてきたら、見学会等に参加して「実際の住宅」「手がけた人(工務店の社長、社員)」「家づくりへの想い」「性能や価格」などを自分の眼で確かめることが重要です。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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