家づくりは「らしさ」の時代へ。住宅業界の変遷から考える
家づくりの世界は、住宅が工業化商品として登場することにより、劇的に変化しました。住宅の持つ社会的な意味は大きく、責任も大きくなってきています。そうした中で生活の基盤、機能的な商品としての住宅はある程度のレベルに達してきました。これからの家づくりでは、日本の住文化やすまい手の生き方を反映した、より「らしさ」のある住宅をつくる必要があると考えています。
第1ステージ:価格・設備・デザインの時代
戦後、日本は高度成長期を迎え、快適で便利で豊かな生活を求めるようになりました。住宅については、大都市圏への人の移動や、住宅ローン等の制度の整備もあり、多くの人に「自宅を所有する」という流れが生まれました。
多くの人が住宅を所有することを求めるようになり、よりいいものを安くという考え方のもと、合理化、効率化された商品としての住宅が造られるようになりました。多くの国民が同じ価値観を求めていた時代です。
その結果、価格の安さを訴求した家づくりや、キッチンやユニットバス等の住宅設備機器の発展、オンリーワンを訴求するためのデザイン住宅が建てられるようになりました。
第2ステージ:高気密・高断熱・高性能住宅の時代
第1ステージでデザインが良く快適な設備が整ってという時代が続き、住宅業界は次の価値を求めるようになりました。
特に北海道や東北などの寒冷地の住宅では、冬はとても寒く、逆に夏になると暑いというような課題もありました。
そこで「高気密・高断熱」住宅の研究が進み、さまざまな工法が開発され、日本中に普及していきました。その流れを追いかけるように省エネ基準が設定されていきます。住宅をより「高性能化」することで、暮らしの快適性と住宅の省エネルギー化を両立させる取り組みは現在も進行中です。
第3ステージ:健康・省エネ・耐震の時代
高性能住宅は、性能を向上させた一方で、新たな弊害をもたらしました。気密や断熱の性能が高くなり、冷暖房方式が変わっていく過渡期のなかで、不十分な施工により「結露」や「カビ」が発生し、ダニによる皮膚の障害、さらに新建材と呼ばれる新しい商品が持つ化学物質が人体に影響を及ぼすようになりました。いわゆる「シックハウス」の問題です。
合わせて世界的なエネルギー問題もクローズアップされ、これらの法律や基準に対応できない会社は、住宅業界からの撤退を余儀なくされています。2020年に予定されている「省エネ計算義務化」という課題も、住宅業界が乗り越えることができるのか不安視されています。
1995年には阪神大震災が発生し、特に木造住宅に甚大な被害がありました。日本の2階建て以下の木造住宅には構造計算が義務付けされていなかったことも追い打ちをかけました。日本の建築基準法では、大地震が起きると、そのたびに構造に関する基準が強化されています。木造住宅の耐震化については、すでに取り組んでいる会社と、いまだに取り組まない会社に二分されており、後者のほうが多いことが問題になっています。
第4ステージ:自然素材・環境 スマートハウスの時代
前述のような弊害が社会問題になると、住宅業界は一気に自然素材重視に向かっていきました。一方では化石燃料・資源問題、二酸化炭素削減問題がクローズアップされ、「環境に良い家」「低炭素住宅」「創エネルギー住宅」など、現代の家づくりは環境と切り離せないものになっています。
こうした中で、今度は「スマートハウス」(かしこい家)の時代になってきました。家が電化製品、自動車と同じような位置付けになりました。
まとめ
日本には、1000年以上にわたって継承してきた技術や材料があります。その空間で営まれてきたお茶、お花、着物などの生活文化もあります。これらを含めた「日本の住文化」の継承と、時代に合わせた発展が、これからの家づくりのテーマだと考えています。
「住まいとは何か」を考え、文化を尊重しながらも、自分の生き方をふまえた上で、より「らしさ」のある家づくりが求められます。
そのためには、すまい手はつくり手側に全てを委ねるのではなく、自分「らしさ」のある家づくりを実現するために、主体的に家づくりの要望をまとめ、ソフトとしてもハードとしても愛着の持てる家づくりを実現しましょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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