公開日:2018.05.02
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住宅の耐震化を進めるには「住宅の価値革命」が必要
日本の住宅は、なぜなかなか耐震化が進まないのでしょうか?
いろいろなデータを調べておりますが、おおむね3つの要因に分類されるようです。
一つは「意識の低さ」です。
「自分が生きているうちは大震災が来ない」
「住宅が倒壊する前に家から逃げられる」
「大地震が来ればいずれにせよ助からない」
などの間違った認識が多いようです。
地震による深刻な被害は耐震化によって解決できるという正しい認識をしっかりと持っていただくように、引き続き啓蒙活動を続けていきたいと思います。
二つ目は、「お金」の問題です。
耐震診断などへの一定程度の公的助成はあるものの、耐震診断から実際の耐震改修をするとすれば、結果としてユーザーとしては戸建て住宅では最低でも約200万円程度はコストが必要になります。
そのお金の捻出がかなりネックになっています。
しかも旧耐震住宅(1981年以前の耐震基準で建てられた住宅)は高齢者が住んでいる比率が高く、現状では住宅ローンを組むことができない方が多いのが実情です。
三つ目は、現在、住宅性能表示制度や長期優良住宅制度はあるものの、普及が十分ではなく、中古住宅の売買や賃貸の際に一律に経年変化で評価され、性能が価格などへ必ずしも正確に反映できる仕組みになっていません。そのため、売主や買主ないしは貸主が、新築や改修で耐震性確保を実行するインセンティブがしっかりと働いていないことがあります。
国土強靭化政策大綱の住宅・都市分野の中には、様々な手段を使って住宅の耐震化へ「建て替え」及び「改修」をしっかりと進めることが明記されています。
耐震化100%に向けての重要な鍵は、「住宅の価値革命」にあります。
住宅の品質がしっかりと住宅の価値、すなわち価格に反映される仕組みを確立することです。
現在、新築住宅においては、戸建て住宅の約25%程度が長期優良住宅になってきました。
住宅業界の実情を見ると、国が「4号特例の廃止」などに踏み込む気配は感じませんが・・・。
まずは民間レベルで「資産価値のある住宅」をつくり続けるしかないと思っています!
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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