公開日:2019.12.02
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日本初の試みが実現した木造耐火建築物の構造見学会に参加
既存幼稚園に保育スペースを増築する計画の構造見学会
既存幼稚園に保育スペースを増築するプロジェクトの構造見学会に参加しました。
既存の幼稚園はRC造の耐火建築物2階建で、そこに耐火木造2階建を一体増築するプロジェクトです。
概要は下記となります。
主要用途:幼稚園・保育園
構造・規模:木造2階建(既存部分はRC造2階建)
地域地区:第1種低層住居専用地域 新防火地域
防耐火要件:耐火建築物
設計、施工のチームは下記となります。
建築:ビルディングランドスケープ様
構造:木下洋介構造計画様
設備:ピロティ様
施工:中島工務店様
見学会の冒頭に、この建築の設計監理者である山代氏、西澤氏から、設計監理のポイントについてパネルを使ってわかりやすく説明していただきました。
木造とRC造のハイブリッドな構造のポイント
この建築の構造設計者である木下氏から、構造設計のポイントについてパネルを使ってわかりやすく説明していただきました。
この建築では、多目的に使える大きめの空間を出来るだけフレキシブルに使えるようにするため、耐震要素は外周にまとめられています。
二階は遊戯室で内部には柱がほとんどない空間です。
また在来工法にRC櫛形耐震壁を組み合わせることで外周部の開口も十分に確保しています。
櫛形耐震壁とは、木造の建て方後に、鉄筋コンクリートの壁を施工する壁のことです。
混構造として、確認申請機関と協議した結果、
1階は鉄筋コンクリート造
2階は木造
という扱いで確認申請は通しているそうです。
1階の地震力は主に鉄筋コンクリートの壁が負担しているそうです。
搬入などの問題で大スパンの材が使用できないこともあり、木造のトラスで大スパンを成立させています。
木造の防耐火に関するポイント
今回の建築は通常であれば準耐火構造で良い規模ですが、木密地域の新防火区域にあたり、耐火建築物であることが求められました。
この建築では、日本初となる試みが実現しています。
「LVLによる1時間耐火柱」です。
木造の柱を準不燃処理したLVL60厚で包むことで1時間耐火柱とする工法を使用しています。
準不燃処理LVLによる耐火被覆製造はキーテック様です。
木造耐火建築物の構造材
この建築の施工者である中島氏から、材料のポイントについてわかりやすく説明していただきました。
この建築の構造躯体では、JAS認定材、岐阜県産材、LVL材の3つが併用されています。
岐阜県の株式会社翠豊様がプレカットを担当されています。
通常、耐火建築物や準耐火建築物では、JAS認定材を使うことを求められる場合が多いです。
今回は、岐阜県の性能表示材を使用することで岐阜県産材の使用が可能になりました。
木造の耐火建築物のため、最終的には被覆されることになりますが、こうした試みにより地域の材料を使用することができますので、とても良いことだと思いました。
まとめ
ビルディングランドスケープ様は、木造の非住宅の分野で積極的に木造の新たな可能性を広げる設計活動をされています。
近年、日本でも発注者側が大型建築を木造で企画し、大手建設会社、大手組織設計事務所が木造を手がけるようになりました。
一方で大多数の非住宅建築は、3階建て以下の低層建築物のため、地域の工務店、地域の設計事務所でも対応できる設計や施工が求められます。
今回の建築も、新しい要素はいろいろとありますが、再現性が低いものはほとんどありません。
木造建築は諸条件に応じた「適材適所」が基本です。
このようなカタチで木造建築の可能性を体感することができ、とても勉強になりました。
関係者の皆様、本当にありがとうございました!
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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