公開日:2019.12.09 / 最終更新日:2019.12.27
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「省エネ基準説明の義務 南雄三が説明したら」セミナーに参加
日精プラスティック+BB研究会セミナーに参加
日精プラスティック+BB研究会セミナーに参加しました。
講師は、南雄三先生です。
テーマは、
「省エネ基準説明の義務 南雄三が説明したら」
です。
個人的には、今、最も聞きたいテーマです。
南先生が省エネ基準説明義務化に向けて書かれた本の内容をベースに、わかりやすく解説していただきました。
省エネ基準説明義務化は施主に「適合」か「不適合」を示すだけでは終わらないという前提の上で書かれています。
確かにユーザーからすると、どちらの結果においても
「なぜ?」
「どうして?」
「ウチだけ?」
「他の家は?」
などという疑問が生じます。
そうした省エネに関する情報をユーザーにいかに伝えるかという「教科書」のような本です。
この本は図解もたっぷりでユーザーが読んでもある程度は理解できるレベルまでまとめられています。
現実的には、この本をユーザーに渡して、その内容に沿って説明したほうが良いのではないかとも感じました。
まずは、日精プラステック様より、
「建築物省エネ法における現行制度と改正法との比較」
の説明がありました。
運用のイメージについても説明がありました。
南先生の著書「省エネ基準説明の義務 南雄三が説明したら」です。
勉強会の前に南先生にご挨拶したところ、本にサインをしていただきましたw。
省エネ基準に関する議論は、意識の高い実務者が、義務化当然論を展開してきました。
南先生は当初より義務化には反対されていました。別の仕組みとして表示制度を提唱されていました。
省エネ基準への適合可否などの説明を義務付けるということは、賢い消費者が増えることが予想されます。
消費者が住まいの性能次第で健康、快適性、ランニングコストに影響が出ることを理解することで、住宅の性能に対して「高い知識」と「強い要望」を持つようになると思われます。
そうした施主にきちんと対応するためには、この本は最も適していると言えるでしょう。
省エネ基準説明義務化で思うこと
今回の制度で個人的に強く感じることは、
「省エネ基準適合可否の説明義務化で、住宅事業者は実は家の性能に詳しくない事実」
が消費者に明らかになることだと思っています。
設計時の省エネ計算は必須となります。計算していなければ、省エネ基準への適合可否を説明できないからです。省エネ基準に適合できる住宅事業者にとっては、何の問題もありません。
問題は、省エネ基準に適合できない住宅事業者です。おそらく下記のいずれかの対応をとるのではないかと予想されます。
①省エネ計算した上で、「不適合です。適合させるとコストアップになります。」と建築主に伝える住宅事業者(適合させる技術はあるが、あまりやりたくない会社)
②省エネ計算しないで、「不適合です。適合させるとコストアップになります。」と建築主に伝える住宅事業者(適合させる技術がなく、心底やりたくない会社)
③省エネ計算した上で、「不適合ですが、適合させますか?」と建築主に相談する住宅事業者(性能のスペックやコストを自分ではなく施主に決めさせたい会社)
自分が信頼できると思って依頼した住宅事業者から、設計段階で省エネ基準を満たしていないことを伝えられるということは、「住宅の性能面では明らかに失格」であることが判明します。
当事者である住宅事業者は、おそらく国が決めたルールについての不平不満を伝えながら、「義務化されてないし、オーバースペックなので、省エネ基準適合はやめましょう」と建築主を説得すると思われます。
コストに勝る理由はないと考えて省エネ基準不適合を正当化する住宅事業者も多いことが予想されますが、消費者を甘く見ていると思います。「日本の消費者は世界一厳しい」からです。
国の住宅政策の転換があろうとなかろうと、住宅事業者はこれまで通り、住まい手に価値をもたらす家づくりを実施するために、省エネ性能や耐震性の向上を実現する取り組みを着実に継続するべきです。
省エネ基準の適合クリアレベルではなく、HEAT20が示すG1、G2ほどの家づくりを目指していく必要もあります。
省エネ基準説明義務化の意図
今回のセミナーでは、まず改正建築物省エネ法の話からスタートです。
省エネについては、以前は役所ごとに管轄が分かれていました。
今では独自の仕組みとして、独立して存在しています。
国も、改正建築物省エネ法説明会を開催しています。
専用サイトから、関連資料がダウンロードできます。
法律の意図としては、説明を義務化することで、全体の底上げを図りたいようです。
施主が望まない場合は、省エネ基準を説明しなくてもよいそうです…。
→これを盾に、省エネ基準を無視した住宅が増えないことを祈るのみです…。
シンプルに考えて、省エネ基準を適合させること、は最低限の義務だと思います!
「省エネ基準説明の義務 南雄三が説明したら」の解説
本の内容をレジュメにまとめられており、それを基に解説してもらいました。
まず、断熱と省エネは分けて考えることが基本です。
省エネ基準は、二本立てです。外皮基準と、一次エネルギー基準です。
高断熱と高気密の目的を語れる必要があります。
どれだけ省エネすればよいのか、を決めることが求められます。
設備機器の省エネが、実はとても大きなポイントです。
それから、どれだけ断熱すればよいか、を決める必要があります。
ここが最も難しいかもしれません。
ここからは、各章の内容について、私がポイントだと思うことをまとめてみました。
第1章 省エネ基準は2本立て
・低断熱でも寒さを我慢すれば小エネ(日本の既存住宅)
・低断熱で暖かさを求めれば大エネ(欧州の既存住宅)
・高断熱で小さな熱で暖かさをつくれば小エネで快適
・欧州の新築住宅は高断熱化していても古い家を愛する欧州の既存住宅は無断熱が多くあります。
・家庭用一次エネルギー消費量の割合で、Ⅵ地域の場合、暖冷房の占める割合は約1/4です。パリ協定の約束で家庭用一次エネルギーに課せられた省エネノルマは22パーセントです。日本の世帯あたりのエネルギー消費量の中で、暖房が他の先進国と比較して、著しく低いです。
・省エネというと外皮の話に住宅事業者は目がいきがちですが、省エネ設備の設計がポイントになります。
この章のまとめ:断熱と省エネは実はリンクしない関係なのです。
第2章 高断熱の目的
・室温が居住者の健康に与える影響
「家族住まいるハンドブック みんなでもっと健康に」はオススメだそうです。
・寒いことで結露が発生します。家の中で露点温度以下の部分があればそこで結露します。
・内部結露は、断熱材の中を水蒸気が通過していき、冷えている外壁にぶつかって結露します。
この章のまとめ:健康には「住む人の健康」と「建物の健康」がある
第3章 高気密の目的
・断熱と気密は一体:断熱するなら気密しないと内部結露が生じます。
・計画換気が高気密を要求:常時、出入口を明確にして必要な量の換気をする必要があります。
・必要な換気量:計画換気が必要なのに、換気扇が動いていないことが問題です。
この章のまとめ:断熱→気密→換気という流れを理解する
第4章 どれだけ省エネすれば…
・省エネ基準は「今」のレベルでしかなく、省エネ基準をクリアしても省エネにならない
・省エネ基準では省エネにならない?:基準値と設計値の算定条件の違いをまず認識します。
・ネット・ゼロ・エネルギー:2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均で、ZEHの実現を目指す目標です。
この章のまとめ:削減目標は施主と設計士で検討するもので、この本では30%以上にしようと話し合っています。
第5章 一次エネルギーの省エネ
・生活総合一次エネルギーを正しく理解する必要があります。
・地域区分とそれぞれの基準値:省エネ基準は暖房する度合いで全国を8つの地域に分けています。
・暖冷房の省エネ:省エネは我慢ではなく小さなエネルギーで快適に暮らすという主旨で知恵を絞ることです。
・日射遮蔽と日射取得:夏の日差しを防ぎ、冬は日射を取り入れるという矛盾を設計で解決します。
この章のまとめ:省エネはそれぞれの項目の積み重ねの結果なので、暖冷房、通風、給湯、換気、照明などをきちんと理解する。
第6章 どれだけ断熱すれば
・省エネ基準じゃ寒い:温熱設計の実力が問われます。
・基準、水準は目安の評価:簡易計算と詳細計算には違いがあります。
・快適はいろいろあってよい:生殺し的な快適もあります。
・曖昧パッシブと計算パッシブ:日本は情緒的な曖昧パッシブ、欧州は利益になるかどうかの計算パッシブ。日射の多い地域では曖昧パッシブも面白いとのことです。
この章のまとめ:HEAT20基準の使い分けは難しい(G1とG2のどちらを選ぶか、あるいはいきなりG3を目指すのか、です。)
第7章 My 断熱基準
この章のまとめ:設計士が建築主と共に「どんな温熱環境でどれほどの省エネを求めるのか」を設定した上で最適な断熱性能を計算していくことが重要。
まとめ
南先生からは、
計算ツールなどをうまく活用するように、
というアドバイスもいただきました。
断熱や省エネは徐々に差別化の要素ではなくなりつつあります。
だからこそ、家のつくり手には、
その地域における住宅性能を明確に示す必要があります。
南雄三先生、運営された関係者の皆さま、本当にありがとうございました!
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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