公開日:2016.06.06 / 最終更新日:2018.11.03
8167
生涯賃貸vs持ち家購入、結論のポイントは「長寿リスク」だった!
住宅情報ニュースやサイトの定番ネタには「賃貸と持ち家、どちらがお得?」というものがあります。コスト面で「生涯賃貸派」の支払い家賃総額と「持ち家購入派」の住宅ローン総額を比較、メンタル面では気ままさか、安心や愛着かを比較、という流れです。しかし現役世代にありがちなのが「長寿リスク(長生きリスク)」という視点が抜けてしまうこと。皆さんは家における長寿コスト、算定していますか?
思っているよりも長生きしちゃうんです!
日本人の平均寿命をご存知の方も多いと思います。男性は80.50 歳、女性は86.83歳。定年が65歳だとしたら、男性の場合は15年程度、女性は22年程度の老後を見積もっておけばよい…と思いますよね。
しかし、この平均寿命というのは、その年に生まれた人全員の平均寿命なのです。つまり、赤ちゃんの時に亡くなってしまった方から、最後のご長寿ナンバー1の方までの平均です。
同じく厚生労働省からは「平均余命」という統計が出されていて、これはある年齢の方はあと何年生きるかというものです。こちらの統計の方が「老後は何年あるか?」という実際に近いと考えられます。
これによれば、65歳まで存命であった場合、男性で19年、女性で24年の老後が見込まれます。これは先ほどの平均寿命より数年長いです。さらに、女性の場合、65歳まで生きた人が90歳まで生きる確率はほぼ50%です! 世界一の長寿国である実感が湧く数字ですね。
「長寿リスク」を踏まえて考えた必要コスト
これは24年以上の老後があることを当然に想定して家にかかるコストも考えなければならない、ということです。今後は医学や栄養学の進歩でさらに寿命が延びていくかもしれません。そう考えると、老後、家にかかるコストはもはや30年の資金計画が必要な時代といえます。
現在、年金をもらっている人の平均額は国民年金だけだと約5万円、厚生年金だと14万円です。その条件で、生涯賃貸だった場合を考えてみましょう。
仮に10万円の家賃であれば年120万円、30年なら3600万円が家賃の合計になります。年金だけでは支払っていけない金額です。
友人とお茶をしたり、孫にお小遣いをあげたり、そんな老後のゆとりを得るためには、理想的にはこの3600万円を年金とは別に確保したいところです。
退職金の大卒・定年の平均は2280万円程度なので当然不足ですし、よほど計画的に貯めていかなければなりません。現役世代の時から、「気ままな賃貸暮らし♪」というイメージではなく「資金作りの賃貸暮らし」というイメージで生活しなくてはならないかもしれません。
しかし、さらに長生きしたらどうなりますか? つまり100歳まで、です。「もっと長寿リスク」です。元気に10年長生きすれば先の例ならプラス1200万円がかかります。100歳まで長生きするとプラス1800万円です。住み続ける場所を確保するための予算は、長生きするほどに重い負担となってくるわけですが、問題は実際に長生きする年数は不確定であり、予想ができないことなのです。
購入派のメリットの一つは一度購入してしまえば、定年までにコストが確定できる点です。
もちろん定年のときまでに完済できることが必要条件ですが、一戸建てやマンションを購入する持ち家派には老後を計画的に安定させられるというわけです。
それでも生涯賃貸派であるあなたがしておくべきこと
とはいえ、生涯賃貸派も老後の安定のためにできることはあります。
「気ままな賃貸暮らし♪」というイメージを即刻捨てることです。
生涯賃貸派のメリットは「住宅コストを変化させられる」こと。
例えば子どもが独立したのを機に狭い部屋に移れば、家賃は大きく下げられます。現役時代も仮に急激な年収の増減があった場合だって住み替えで住宅コストをコントロールできます。
さらに大きなメリットは住宅ローンの金利を払わずにすむことです。低金利の時代とはいえ、頭金不足での住宅購入をすれば、総返済額は借入額の約1.5倍になってしまうこともあることもあるので、このローンがないということは大きなポイントです。
試算してみます。
定年後の生活を長めに30年と見積もり、老後は月6万円の部屋にシフトできれば、退職時に必要な家賃総額は2160万円です(更新料等諸経費は含みません)。現役時代に毎月4万円から5万円の貯金ができるレベルで部屋選びをすれば十分に確保可能な金額です。
この場合、生涯賃貸派は、浪費の多い現役時代を送ってはいけません!
「無理のない家賃」かつ「計画的な積立で老後の賃貸費用確保」を行い、さらに「老後もシンプルな生活で家賃コストを抑える」必要があります。
生涯賃貸派のイメージにあるような気ままさを捨て、分相応の部屋に住みしっかり貯金することができれば、賃貸派も老後に安定的な生活ができるでしょう。
持ち家派のデメリットもお伝えしておきます。
持ち家はどうしても「一番広さが必要な年代」に合わせて買わざるを得ません。つまり、老後にリフォームをするにも広すぎる家になりがちなのです。
また会社が不景気だからと数年間だけ狭い部屋に移ることもできません。住宅ローンを組んでしまうと人生の大きな部分に固定要素ができてしまうのです。
そんなわけで、「長寿リスク」を理解して、老後にフォーカスして考えると、住まいは「賃貸」より「持ち家」がお勧めだというのが私の結論です。
おじいさんやおばあさんになって、家にかかるコスト計算や引っ越しのことを都度考えることができればいいのですが、現役世代のうちにしっかり計画を立て、後は予測していた時に用意しておいた資金を使っていく方が、精神的にも安定するのではないでしょうか。
それがまさに「家を持つ豊かさ」と言えるのではと思います。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
最新記事 by HOUSEBASE 代表取締役 植村将志 (全て見る)
- 4号建築物も構造図書の保存義務化へ - 2020年1月10日
- 耐震等級の徹底解説!住宅性能表示の構造の安定とは? - 2019年7月29日
- 住宅のリフォームは「健康性能の強化」が必須な理由 - 2019年6月15日
- 工務店は「事業承継できるかどうか」で選ぶ時代に - 2019年5月20日
- 省エネルギー住宅の「全館空調」はエアコンのみで実現できる - 2019年5月19日
こちらから(コメントフォーム)自由にコメントください!