公開日:2018.09.26
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建築家の内藤廣さん設計「海の博物館」見学記
「海の博物館」は日本建築学会賞受賞の名建築
三重県出張の機会に、昨日のブログでお伝えした「伊勢神宮」参拝のほか、以前よりどうしても見たい建築であった鳥羽市の「海の博物館」を見学に行きました。
「建築屋」として主に建築を見学に行くつもりでおりましたが、良い意味で裏切られました。
建築の魅力もさることながら、展示の内容、ボリュームにも圧倒されました・・・。
「海の博物館」は、建築関係者の中ではとても有名な建築です。
設計は日本を代表する建築家の一人である内藤廣さんが率いる「内藤廣建築設計事務所」様です。
この「海の博物館」は、日本建築学会賞や日本文化デザイン賞などを受賞している建築です。
海の博物館についての概要
海の博物館は、海女や漁、木造船、海の祭り、海の環境など、海に関する民俗資料等を所蔵、展示しています。
ロケーションは美しい海に面しており、鳥の声溢れる緑豊かな環境です。
展示棟では主に、下記の展示を見ることができます。
・海民の伝統
・海の汚染
・海民の信仰と祭り
・伊勢湾の漁
・志摩半島、熊野灘の漁
・鳥羽志摩の海女
・木造船と航海
海の博物館の建築について
海の博物館の建築についてお伝えします。
1971年から「海の博物館」は開館しています。
「収蔵庫」は昭和60年に建設され、国の重要有形民族文化財収蔵庫に指定されており、日本でも最大の規模だそうです。
この棟は、プレキャストコンクリート造で大空間を造っており、約250坪の広さです。
多数の木造船が収納保存されています。
その後、1992年に内藤さん設計による「展示棟」が完成しました。
展示棟は、RC造と木造の混構造で構成されています。木造の大空間に、コンクリートのボックスが挿入されている感じです。
外観はシンプルな切妻屋根です。
内部は、構造用集成材による大断面木造で大空間を形成しています。
この建築は、戦後の「第一次木造建築ブーム」の時期に建てられています。
現在よりも大規模木造に関する知見がおそらく少なかった時代に、このような建築を建てることができた関係者の皆様の力は素晴らしいと思います。
耐震性を確保するために柱脚のディテールも工夫されています。
このような湾曲集成梁は、1本ずつ工場で曲げられています。(かなり手間がかかっています。)
展示棟を木造としたこと、自然風景を十分に取り入れたこと、ゆったりとした庭園部を設けたことにより、 入館者に「あたたかい」博物館を感じてほしいというのが、この博物館のコンセプトです。
人間と海、漁、海女、木造船、そして大規模木造建築を充分に堪能することができました。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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