公開日:2020.01.24
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「建築と経営のあいだ」を読んで
創造系不動産の高橋寿太郎さんの著書「建築と経営のあいだ」
友人でもあり、尊敬する経営者の創造系不動産の高橋寿太郎さんの著書を読みました。
タイトルは「建築と経営のあいだ」です。
本の執筆をされていることは聞いておりましたので、出版をとても楽しみにしておりました。
創造系不動産様から献本していただき、早速読ませていただきました。
この本の中で紹介されている「いすみ経営者合宿」にも参加したこともあります。
そこで高橋さんに教えていただいたことが丁寧にまとめて説明していただいているので、復習のテキストにもなりました。
「建築と経営のあいだ」の書評
本を読んだ率直な感想は下記の5点です。
1.ソフト(お金や経営など)のリテラシーを高めないと、ハード(住宅や建築など)の優れた設計、デザインはできないことを教えてくれる
→当たり前のような話ですが、このような建築家と出会う機会はあまりありません
2.建築家(特に若手)に「真に社会や地域、顧客のために役に立つ設計者になってほしい」という激励のメッセージが多数込められている
→そのために必要なことが「教育」で、各種のスクールや学びの場を企画、運営されている
3.建築界や建築教育への強烈なメッセージが込められている
→建築設計業務は確実に「ビジネス」であり、建築のみ学び、経営は学ばない(避ける)ことは建築家の可能性が限定される
4.「建築と不動産のあいだ」や「都市と地方のあいだ」には無限の可能性があり、その課題を解決していくために建築家(建築士)が中心的な役割を果たしてほしいと願っている
→移住や二拠点居住など「移動」の概念が変わりつつあり、新たなビジネスで需要創出や課題解決が求められている
5.創造系不動産の会社やメンバーの成長の可能性を信じている
→経営者なら当たり前かもしれませんが、独自の経営スタイルやマネジメント、メンバーの活躍を知ると、とても共感できる
「建築と経営のあいだ」で得られた学びや気づき、共感したこと
以下、私自身がこの本で得られた学びや気づき、共感した10個のポイントについて書きます。
・創作と経営のシナジー
→設計事務所にとって「創作活動」と「経営戦略」のどちらも不可欠なものであることは全く同感。自分の名前で継続的に仕事を継続的に受注している建築家は、スタイルの違いはあるにしても、両立しているのが実態である。
・建築の「与条件」と「未条件」
→「未条件とは、本質的な要素に至る未整理の情報群と、または可能性の塊」とのこと。これを見つけ出し、クライアントと共有しない限り、求められる建築は造れない。
・クライアントの経営を知る
→相手の気持ちを知るために「あえて建築士であることを忘れる必要」も全く同感。日本の建築家が最も苦手なことは「自分が発注者だったら」というケーススタディが欠けているから。
・クライアントの経営戦略とマーケティングの体系を知る
→基本となるフレームワークを理解、分析しながら、仮説と検証、そして行動を繰り返すことは重要。
・不動産キャッシュフロー
→事業計画を建築家自らが担う、もしくは不動産コンサルティング会社に依頼するなどの対応は本来は必須。
・日本の違法建築の多さ
→建物が流通しない理由として、検査済証を取得していない建築が多数あることも一因。
・「営業」は誤解されている
→営業は、クライアントの本質的な課題やニーズ、欲求を分析し、探し当て、それを解決する役割。それをしつこくやり続けること。最も重要なことかと。
・理念・ビジョン・使命・志は最初はいらない
→「経営はきれいごとではない」は全く同感。徐々に芽生えて、言語化することになるプロセスは自分も体感済み。
・より小さくゆるやかな組織体
→いろいろな会社とアライアンスを組み、プロジェクト単位でチームを構成するほうが、レベルの高いアウトプットを生みやすいこともある。
・地方ビジネスと持続可能性
→ミレニアル世代を中心に「仕事よりも家庭、プライベートを優先する」傾向が高まっている。都市部の「ヒト・モノ・カネ」を適切に移動させることで地方にはまだ可能性が埋まっている。
備忘録として、メモしました。
私自身も考え、行動し続けたいテーマばかりです。
まとめ
本の帯に書かれている、
「クライアントを知り、マネジメントを理解し、経営思考をアップデートする」
ことは設計事務所に限らず、全ての起業家に当てはまることです。
私自身も、常に肝に命じたい言葉です。
繰り返し読むことで、自分や自社のアップデートの意識付けができる本だと感じました。
久しぶりに「オトナ買い」して、読んでほしい人に配りまくりたいと思いますw。
創造系不動産の高橋寿太郎さん、素晴らしい本をありがとうございました!
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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