公開日:2020.03.19
3397
改正民法対応の設計契約約款の改訂が混乱続きのまま4月へ
改正民法の設計契約約款の改訂の混乱
日本国内の商取引はすべて、民法の債権関係規定に基づいて処理されています。
建築関連の各種契約約款もこの規定に基づくものです。
民法の一部改正により、この根拠規定が制定以来約120年ぶりに変更されます。
施行は2020年4月1日で、この日以降に締結した契約から適用されます。
改正を機に、責任範囲など事業環境が変化する可能性があります。
改正民法の施行までに、民間向けの事実上標準である建築設計・監理業務委託契約の四会連合協定約款、建築工事請負契約の民間(旧四会)連合約款が改訂されることになっています。
その改訂版が、3月中旬に発売されましたが、
その後に「販売の一時停止」が発表されました。
理由は不明ですが、改訂版の内容を変更する必要があるそうです。
詳しくは、こちらのリンクをご確認ください。
変更箇所は、訂正表で発表されています。
(※このブログの内容も上記の改正により変更になることがありますので、必ず自らご確認をお願いします。)
いずれにしても、
2020年4月1日からの「民法改正」において、
2020年3月19日現在(本ブログ執筆日)の段階で、
新しい約款への対応が大幅に遅れているという事実は、
とても大きな問題です。
住宅・建築の実務における改正民法の主なポイント
今回の改正により、約款の役割が再評価されると思われます。
改正の主なポイントは下記となります。
・新たな約款は「瑕疵(かし)」という法律用語を「契約不適合」に置き換える
・不適合部分の是正方法に「代金減額請求」を新設
・設計業務の責任期間は、発注者が設計者へ責任追及できる期間を「工事の完成引き渡しから2年以内」と定める。
・設計図書の納品から着工までに時間がかかった場合、または調査・企画業務と設計業務の両方を受託した場合は「成果品交付の日から10年以内」と定める。
・設計者が責任を負う場合については「受託者帰責に基づく債務不履行」と定義し、業務の非請負性を明確になる。
→「帰責」とは「責めに帰すべき事由」を指し、善管注意義務とも呼ばれる。この条項には債務不履行が生じた際、受託者が責任を負うのは、受託者が善管注意義務に反していた場合に限られる
・意匠権の譲渡禁止条項を新設
→改正意匠法対応
・受託者からの解除権を新設
・監理者が求債を受ける期間を施工者に責任期間に統一
・秘密保持条項を受発注者双方の義務に変更
・委託業務一覧表を業務報酬基準(告示98号)に合わせて変更
まとめると、設計業務の責任範囲をより明確化したのが特徴です。
改正民法により、契約の概念が大きく変わると言われています。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
最新記事 by HOUSEBASE 代表取締役 植村将志 (全て見る)
- 4号建築物も構造図書の保存義務化へ - 2020年1月10日
- 耐震等級の徹底解説!住宅性能表示の構造の安定とは? - 2019年7月29日
- 住宅のリフォームは「健康性能の強化」が必須な理由 - 2019年6月15日
- 工務店は「事業承継できるかどうか」で選ぶ時代に - 2019年5月20日
- 省エネルギー住宅の「全館空調」はエアコンのみで実現できる - 2019年5月19日