工務店の本音シリーズ1:すまい手と建築家に「共感」を求めている
「工務店」という言葉は聞いたことがある人が多いと思いますが、実際にどんな仕事をしているかは想像しにくいですよね。家の工事をしている会社というイメージはあると思いますが、仕事に対する姿勢や価値観などは意外とわかりにくいと思われます。そこで「工務店の本音」と題して、工務店の実態をお伝えしていきます。
住宅は人間の認知限界を超えた商品
工務店の仕事は、建築の請負業です。工務店の社長の中には、「請けて負けると書いて請負なんですよ。お客様には負けざるをえないんです」と自嘲気味に話す方もいらっしゃいます。それほど、すまい手や建築家に泣かされることが多いわけです。
そんな工務店ほど、抱えている本音は常にリアリティに満ちていて、家づくりの問題点を正確に認識しています。住宅は、人間の認知限界を超えた商品という事実です。自分の目線では確認できないスケール感があり、かなり高額な買い物にも関わらず、完成品を試すことも見ることもできないという特性です。
だからこそ、バーチャルなモノをどのようにすまい手に見せるかが設計者の腕の見せ所です。工務店が設計・施工で家づくりの仕事を受注する場合には、自社の設計担当が設計を担当する、もしくは外注の設計事務所に設計のみを依頼する、付き合いのある建築家を紹介して設計監理契約を結んでもらうなどの方法を使い分けています。
設計が得意な建築家とコラボレーションすることで、工務店の「営業・設計力」は高まることが期待できそうですが、そんなに簡単な話ではありません。実際には、建築家との連携に消極的な工務店のほうが多いのが現実です。なぜなら、建築家の仕事は施工が難しい割には工事費が厳しいことが多く、その結果として、利益が確保できないからです。
一方で「建築家の設計は面白いし勉強になる」という理由で、建築家との連携を重視している工務店も存在しますので、建築家に住宅の設計を依頼する場合には、このような工務店に見積り依頼を行うことが重要です。
工務店も変化し続ける
工務店にもうまく経営の合理化を実現している企業と、道半ばという企業があります。いずれの場合でも、デザインを家づくりの中に取り入れたいと感じているので、その先の一つの選択肢として建築家を見ています。
工務店の本音として、建築家よりも自分たちのほうが「より安全な家のつくり方を理解しているし、現場を理解している」と自負しています。それでも建築家のデザイン能力は認めているので連携したいのですが、不満や不安もあります。
不満の一つが、「建築家の設計は現実的な納まりが難しいことが多い」ということです。デザインの美しさは認めているものの、強度やメンテナンスへの配慮には疑問を感じています。工事費や保証面でも何とかならないかと思っています。
次の工務店の本音として、見積書作成業務に関する不満です。工務店としては「工事に関するロス率(端材が出ることなど)も認めてほしい。また積算することも、人件費というコストがかかることを理解してほしい」と考えています。
工務店としては当然なのですが、「住宅が完成してからの保証も大切」と考えています。実は「建築家が設計した通りに施工した住宅で、雨漏りがしたら全て工務店の責任にされた」という事例が多いのです。工務店の施工に問題があったわけではありません。建築家の求めるディテールでは、雨漏りのリスクをクリアできなかったということなのです。
建築家との協働を望む工務店の本音としては、「建築家と工務店がよくコミュニケーションをとった結果、雨漏りなどの瑕疵がないデザイン住宅ができた」という結果に変えたいのです。
まとめ
今後ますます情報がオープンになっていく時代に、つくり手もすまい手に対してより詳細な情報開示が求められます。だからこそ、見積りや工事のプロセス、保証、メンテナンスの体制などについても工務店が担う役割は大きくなります。
家づくりの「縁の下の力持ち」である工務店が、これからも日本の家づくりを支えていくことは間違いありません。その中で優れた見識と技術力を持ち、すまい手に役に立つ家づくりのサービスを展開している工務店が、地域のトップランナー工務店として活躍していくことになるでしょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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