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公開日:2016.06.17  /  最終更新日:2018.11.03

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家づくりと費用

マンションは資産価値と価格の兼ね合いを判断して購入しましょう

管理や修繕は戸建てよりも「マンション」のような集合住宅のほうが楽。そんな考えもあるでしょうが、大勢の居住者が足並みを揃えないとできないこともあります。長く住まいとして、資産として持ち続けるには、トラブルやアクシデントにどう対処できるかも想定しておかねばなりません。

施工不良・管理・修繕・建て替え… 分譲マンションの泣きどころ

マンションは1990年代以来、毎年約20万戸のペースで全国に新規供給されてきました(国土交通省調べ)。ここ数年は年間8~12万戸ほどになりましたが、それでも分譲マンションの総戸数(ストック)は2014年末に全国で613万戸に達しています。

分譲マンションの総戸数(ストック)は2014年末に全国で613万戸

分譲マンションの1世帯の平均人数は2.46人(2010年国勢調査より)なので、計算すると分譲マンションに住むのは1510万人となり、これは日本の総人口の12%に当たります。都市部ではさらに高い割合となることでしょう。

近年の特徴は、タワーマンションの流行でしょう。2015年以降にも全国で計10万戸を超える建設計画があります(不動産経済研究所調べ)。東京でもアベノミクス以来、湾岸部中心に増え続けています。仕様が豪華で高層階における眺望の良いタワーマンションは、中古でも値崩れしにくいとされるため、人気があるのです。

数も着実に増え、物件によっては即完売ともなるマンションですが、普及し始めた1950年代末より、年月とともにさまざまな問題も発生してきました。まず漏水、結露、排水など建物の工事瑕疵(かし)です。1970年代には管理会社による業務適正化、1980年代には修繕、1990年代には建て替えが問題として浮上してきたのです。

こうした問題の、マンションにおける解決の難しさは、“区分所有者による共有”という特殊な所有形態にあります。問題解決には区分所有者の合意など複雑な手続きが必要なため、事前に手が打ちづらく、問題が生じてから対策を講じることとなり、解決をより難しくしています。また、施工技術は進化しているものの、2015年に横浜市のマンションが施工不良により傾斜するという問題が大きく報道されたように、ずさんな工程管理による工事瑕疵も改めて注目されています。

空き家率1割強のマンションも! 古くなったらどうすべき?

空き家率1割強のマンションも!

空き家問題と言うと一戸建てのイメージですが、実は分譲マンションにおいても近い将来、深刻化が予想されているのをご存知でしょうか?

すでに古い分譲マンションほど空き家率は高く、1970年以前に完成した物件ではなんと11%にもなっています(総務省統計による国交省調べ)。このように“古い” 築40年以上の戸数は、20年後には現在の6倍近くにもなる計算で、区分所有者の高齢化も進むことを考えると、スラム化した限界集落ならぬ「限界マンション」が大量出現するのは避けられそうにありません。

マンションの建て替えというのは、どの程度難しいのでしょうか? まず、区分所有者の5分の4の賛成を必要とします。そして開発業者の協力を得るには、容積率に余裕があって以前よりも戸数を増やすことができ、その売却益が見込める状況でないと難しいでしょう。行政の支援による再開発での建て替えにはいろいろと条件が加わってくるものです。

建て替えが困難であれば、区分所有権を解消して敷地を売却するのはどうでしょう? この方法には従来、区分所有者の全員一致が条件でしたが、近年では耐震性不足のマンションなら5分の4の賛同で実施が可能と、ややハードルが下がっています。しかしながら、もし土地の買い手が現れなければ解体費用も捻出できないこととなり、放置されかねません。

さて、建て替えも敷地売却もできないままに、万が一、建物が倒壊の恐れなど危険な状態になった場合を考えてみましょう。現在の一戸建ての空き家と同じく、最終的に“誰が”それを解体するのかという問題が生じるでしょう。

責任を負うべきは、やはり“所有者”なのですが、マンションにおける区分所有者がはたして、そうした責任を自覚しているでしょうか?

所有者が手掛けないのであれば、行政に頼るしかないかもしれません。実際、フランスのスラム化したマンションでは行政の取り壊し事例がありはします。ただし、公費による解体はよほど危険な状態になったものにしか認められないであろうことを考えると、やはり費用を最終的に所有者が負担する仕組みが必要かと思われます。

 

マンション特有の問題について見てきましたが、それでもマンションは一戸建てに比べ、汎用性ある使い勝手の良い住まいとして評価されやすく、中古市場に出回る件数も増えています。

特に大規模&タワーマンションについては、低層の小規模マンションよりも資産価値が高く保たれる傾向がはっきりしています。マンション購入を考える時には、この資産価値と価格の兼ね合いこそが最大の判断のしどころでしょう。

資産価値の評価は、立地や広さなどマンションのスペックによるところが大きいです。郊外にある駅から離れた物件に比べ、事業集積地に近く、駅にも近くて便利なマンションは価格が下がりにくいのは明らかです。

「住まい」としても「資産」としても快適かつ良好なマンションを購入できるよう、十分に検討して購入したいものですね。

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

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