家づくりは「見える化」と「コストパフォーマンス」で考える時代
住宅の高性能化は、技術の進歩により、実はかなり進んでいます。今後は、厳しい消費者の目に対して、よりコストパフォーマンスがシビアに評価されていくことが予想されます。その際に必要なことは、家の性能を第三者の評価により「見える化」することと、なぜこの金額になるのかを「わかりやすく明確に伝えること」です。
新築住宅も中古住宅も、性能が住まい選びの決め手に
これからの日本は、人口減少や空き家の問題等により、中古住宅をどのように活用していくかが問われています。そのためには住宅を個人資産であると同時に、「社会資本」として考えていくことが重要になります。
戸建住宅よりも、マンションのほうが動きは顕著です。2016年には、首都圏において新築の分譲マンションの供給戸数よりも、中古マンションの成約戸数が過去最高となり、新築を上回る結果となりました。最近、消費者のマンションに求める条件が駅近などに絞り込まれてきたため、新築にこだわらず中古も検討対象となる状況が背景にあると思われます。
2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度が始まり、耐震や断熱などに配慮した優良なマンションが供給されるようになりました。それらが今の新築物件にも引けを取らない中古物件となって市場に出てきているという背景もあります。
今まで新築マンションを探していた人たちも中古マンションを視野に入れるようになり、中古に対しても新築と同程度の性能を求める人が増えていると感じます。新築も中古も両方検討した上で、一定の品質・性能の住宅を選ぶ、という状況です。この流れは、戸建住宅にも徐々に進んでくると予想されます。
住宅の高性能化への流れ
性能はこれから重要な検討材料になると思います。これまでの住宅の省エネルギー性能に関する高性能化の歴史は、おおまかにお伝えすると下記のような流れとなります。
- 第1段階:旧省エネ基準(昭和55年基準):省エネ対策等級 「等級2」
→1970年代のオイルショックを契機に初めて国による省エネ基準がつくられる
- 第2段階:新省エネ基準(平成4年基準):省エネ対策等級 「等級3」
→断熱や気密の技術の進化や、住宅建材の向上等による
- 第3段階:次世代省エネ基準(平成11年基準):省エネ対策等級 「等級4」
→多様な手法を公平に評価するとともに,地域の気候条件の特性にきめ細かく配慮したものとなるように基準全体を合理化・詳細化された
今はまさに「第4段階」を迎えようとしています。2020年より予定されている「省エネ基準適合住宅の義務化」への対応です。この国で初めて「省エネ基準への適合」が「すべての住宅に義務化」されるという大きな変化です。(現在は任意での対応を求めている状態)
住宅の性能を「見える化」するために「性能表示」を活用する
住宅を資産として考える場合、性能を明確に示すことが必要になります。その場合、家づくりを実際に行うつくり手の「自社による評価」よりも、第三者機関が認めた「表示」のほうが有効になることは間違いありません。
特に住宅の購入、売却を考えるときに、金融機関が性能を評価する必要がありますので、第三者による評価を受けていればより高く評価される可能性は高まります。なぜなら、金融機関が家の性能を自ら調べることは技術的にも現実的にも難しいからです。
住宅は建設・居住・売却のトータルの「コストパフォーマンス」で考える
2020年をめどに、国は新築の戸建住宅の50パーセント以上を「ZEH」(=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にする目標を掲げています。このゼロエネルギー住宅は、自宅で使うエネルギーを自宅の発電で賄い、エネルギー収支をゼロ以上にする住宅のことです。
家の購入を考えるにあたり、性能あたりの「コストパフォーマンス」は重要な判断材料になります。どうしても建設時のコストが気になってしまうところですが、性能や機能を持つ住宅とすることで上記のように「エネルギー収支をゼロ以上=光熱費がゼロになる」ということになり、家で居住するコストを抑えることにつながります。
まとめ
住宅を資産として捉える上で、「長寿命化」を意識することが極めて重要になります。
長期の使用に耐えられる構造躯体の性能、建てたときの性能を維持できる施工精度の高さに加え、ずっとその家に住んでいたいと思えるような普遍的で飽きのこないデザインを持つ家にすることも大切です。
初期のコストだけでなく、居住時や、売却などの際の市場価値を考えて、家づくりを行うことがポイントです。その家が社会に必要とされているか、長期間の利用に耐えられる耐久性や可変性を持っているかという視点が必要になります。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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