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公開日:2018.10.22  /  最終更新日:2018.11.03

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耐震住宅

「データ改ざんしてません。だって構造計算してませんから」を繰り返す木造住宅業界

免震・制振用のダンパーの検査データの改ざん問題が大きく騒がれています。データの改ざんは決して許されることではありませんし、きちんと調査を行ない、適切な是正が求められます。このような問題が発生した時に沈黙を守っているのは実は「木造住宅業界」です。住宅会社の中には、事件を知って不安を感じた顧客から住宅の安全性を問われた時に「弊社はデータ改ざんなどしておりません。だって構造計算していませんから」と真顔で悪気なく対応する会社も少なくありません。住宅も建築も「安全性の確保」という側面では同じレベルの基準で議論すべきだと考えます。

木造の構造性能はなぜ問題視されないのか?

住宅、建築業界における「違反」や「偽造」、「改ざん」などの問題が生じた時に、あまり社会的に騒がれない建物があります。

それは「木造住宅」です。

「木造住宅」とビルやマンションなどの「建築」では、構造形式や規模も大きく違いますので、全く同じように比較することはできません。

しかしながら、安全性の検証を行うべきであるという部分は共通なはずです。

「木造住宅」は、2階建て以下の場合、構造計算は求められませんが仕様規定を満たすことは必要です。実際には「四号特例」などの理由により、安全性の検証が行われていない木造住宅は多数存在します。

構造計算していない木造住宅は、建築基準法は表向き守っているように実現しているが、科学的な検証がされていないので「建物の安全性に関するデータ」が存在していません。

一方で、今回の「免震・制振用ダンパーの検査データの改ざん」は、そのデータの数値を改ざんしたことが問題になっています。

「建築基準法を実は守っていない、安全性の検証データがない木造住宅」と、「建築基準法は守っているけど、検査データに改ざんがあった建築」は、同じレベルで問題視し、改善を図るべきだと考えます。

ダンパーのデータ改ざん事件=建築基準法違反ではない

検査データが改ざんされダンパーの性能が基準を満たしていない場合の建物の安全性への影響は、免震用と制振用で分けて考える必要があります。

免震は建物1棟につき免震ダンパーは数本程度であることが多いのに対し、制振の制振ダンパーは数十から百本以上になることがあります。

このため、性能が劣るダンパーが含まれている時の建物の安全性への影響は、免震ダンパーのほうが大きくなることが予想されます。

免震の建物は、地下に設置された免震ゴムと免震ダンパーで性能が決まります。免震ダンパーの性能が悪いと、建物に伝わる揺れを設計時の想定より抑えられないおそれがあるということです。

ただ、通常はある程度の余裕を見て設計していることが多く、改ざんされたダンパーが使われていても建物の揺れに大きな影響はない可能性もあり、建物ごとに検証が必要です。

一方、1つの建物に数多く設置されている制振ダンパーは、性能を満たしていないものが一部に含まれていても全体への影響は小さいと予想されます。

現在の建築基準法に基づいて設計された建物は、制振ダンパーが全くなくても震度6強や7の地震で倒壊しないよう設計されているはずです。

建物ごとの影響をしっかり検証したうえで、交換を行うか判断するのが望ましいのではないかと思われます。

免震構造とは?

免震構造とは、建物の下に免震装置を設置して地震の揺れが建物に伝わらないようにするものです。多くの場合は、建物と基礎の間に免震装置を置いた基礎免震が使われます。

建物の重さを支える必要があり、上下には硬く水平には軟らかい積層ゴムで建物を支えるのが一般的です。これによって、地盤の揺れに比べて建物の周期を長周期にして共振を避け、揺れにくくします。

地盤の揺れ方によっては建物が大きく揺れる場合もあります。それに備えて、揺れが早く減衰するようにダンパーを設置します。

免震構造の主なメリットは下記です。

・免震層のダンパーで地震エネルギーを吸収し、建物に損傷を与えにくい。

・大地震後にも基本的にダンパーの交換は不要。ただし、損傷程度を調査し、万一性能が低下したものは、補修・交換することで、地震前の状態に戻すことができる。

・耐震・制振構造に比べ、建物の揺れは小さくなる。

・耐震・制振構造に比べ、建物の層間変形(強い力がかかった時の変位)は小さい。

・初期設定費はやや高めとなるが、高い耐震グレードを達成するには他の構造より経済的。

制振構造とは?

制振構造とは、建物そのものの揺れを早く減衰させるために、建物に付加的に減衰の仕組みを入れたもので、多くの場合、高層の建築物に採用されます。高層の建築物は減衰が小さく、共振すると大きく揺れが増幅するので、最近では長周期地震動対策用に制振を使うのが一般的です。

制振には、機械の制御のように力を加えて制御するアクティブ制振と、建物に付加的な減衰装置を入れたパッシブ制振がありますが、多くはパッシブ制振です。

風用には質量同調ダンパー(TMD)が屋上に設置されることが多いですが、地震用の制振には、壁の中や、エレベーターシャフトの中などにダンパーが設置されます。その一つがオイルダンパーです。

制振構造の主なメリットは下記です。

・ダンパーが地震エネルギーを吸収し、建物重量を支える主架構の損傷を
抑えられる。

・大地震後にも基本的にダンパーの交換は不要。ただし損傷程度を調査し、万一、性能の低下したものは補修・交換することで、地震前の状況に戻すことが可能。

・耐震構造に比べ、風揺れや地震時の揺れを小さく抑えることができる。

・耐震構造に比べ、ダンパーの効果により建物の層間変形(強い力がかかった時の変位)は小さい。

・建設費に占めるダンパー費用の比率は小さく、経済的に高い耐震性能が
得られる。

まとめ

住宅も建築も「安全性の確保」という側面では同じレベルの基準で議論すべきだと考えます。今回の「ダンパーの検査データの改ざん」で生じることは、実際の建物の揺れ幅の「微小な距離の差」です。一方で多くの木造住宅においては「構造計算」を行なっていませんので、そもそも「どれくらい揺れるのか」を示すことができません。世界一の地震国である日本において、「建築には厳しく」て、「住宅には甘い」と言わざるを得ません。

 

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今回ご紹介する優秀な設計事務所

有限会社関年希建築設計事務所 

お客様の「感性」や「ライフスタイル」に合わせて、巧みに設計案に表現する引き出しの多さが魅力です。木の家の良さにこだわって暮らしたい人、衣食住すべてを自分らしく楽しみたい人、日々の暮らしに緑を感じて暮らしたい人にとっては、信頼して家づくりを任せられる設計者です。

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HOUSEBASE 代表取締役 植村将志

住宅・建築分野におけるリアルな情報発信や、役立つコンテンツやサービスの提供、実務者向けのソリューションを通じて、すまい手やつくり手にとって納得のできる家づくりを目指しています。

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