日本の住宅はストック市場へ。家づくりにおける耐久性の考え方
日本の住宅はこれからストック市場へ移行していきます。それは長期にわたって住宅の価値を維持できる耐久性がこれまで以上に求められます。建物の長寿命化には耐久性の高い建材を使うことに加え、メンテナンスのしやすさやコストも重要な観点です。
住宅の長寿命化には定期的な点検やメンテナンスが必須
住宅寿命の延伸が求められる時代となり、建材は「高耐久志向」になっています。技術の進化で長い耐久性を持つ建材の製造が可能となりました。耐久性が高まると結果としてメンテナンスの費用も抑えられます。イニシャルコストが高くなっても、ランニングコストで考えると割安になるからです。
住宅の耐久性で重要なことは、定期的にメンテナンスを行うことです。住宅はいろいろな建材を組み合わせてつくられており、そのどこからかで順番に劣化が進んでいきます。建材そのものが高耐久であることは重要ですが、メンテナンスのしやすさも重要です。どんなに高耐久な建材を使っても定期的に手をいれないと劣化が進行してしまうからです。
木造住宅の場合、最も気をつけなければならないのは、腐朽(木が腐ること)とシロアリ被害です。
腐朽の原因の一つが雨漏りです。屋根や外壁の劣化部分から雨水が侵入し、腐朽菌が繁殖しやすい環境になると腐朽が進みます。近年のトレンドで増えているモダンなテイストの住宅ですと、軒の出を外壁面からあまり出さないデザインが増えていますが、きちんとしたディテールで対策を施す必要があります。軒がないため、外壁やけらばから浸水しやすく、腐朽の大きな原因になりやすいからです。腐朽を抑制する意味でも、点検により早めの対応を行うことがポイントとなります。
シロアリの完全な排除は難しく、定期的な点検しか確実な対策はありません。点検のしやすさも耐久性の一環と考えることができます。建設時に土台や柱下部にシロアリ被害を受けにくいホウ酸処理等の対策は必須だと考えるべきでしょう。
家づくりの設計や仕様の決定は、メンテナンスまで配慮すべき
戸建住宅における不具合の事象は、主に下記の項目が多いです。
- ひび割れ:外壁、基礎
- 雨漏り:屋根、外壁、開口部
- 変形:外壁、内装、床
- はがれ:外壁、床
- 汚れ:設備機器、開口部
外壁の耐久性で重要なのは、サイディングとサイディングをつなぐシーリングの施工精度です。シーリングとは、水密性・気密性を目的として、目地や隙間などに合成樹脂や合成ゴム製のペーストを充填することです。シーリングの耐久性はおおむね10年程度ですが、施工精度が悪いと劣化が進み雨漏りの原因になります。
全ての建材に言えることですが、製品自体は長寿命でも施工により本来の性能を発揮できない場合もありますので注意が必要です。耐久性の確保には、信頼できる工務店に施工を依頼し、きちんとした施工とそれを実現する施工管理を求める必要があります。
雨漏り部位である屋根は、形状によって雨漏りリスクが大きく異なります。シンプルモダンなデザイン住宅が増え、太陽光発電の搭載の必要もあり、以前よりも「片流れ屋根」の割合が増えています。「片流れ屋根」は、雨を受ける面が一方に傾いているため、そちら側の雨樋に雨水が集中し負担が増えることから、その下部にある外壁へのダメージが大きくなる傾向があります。
まとめ
住宅の耐久性を考える上では、物理的な耐久性だけではなく、社会的に必要と思われる住宅であり続ける必要があります。飽きのこない普遍的なデザインに加え、省エネ性能など環境への配慮も重要です。廃棄も含めた住宅サイクル全体で考えた場合には、将来的に寿命を終えた際のリサイクルのしやすさも考慮に入れなければならないでしょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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