省エネ義務化はどうなる?戸建て住宅で省エネ「基準未満」が続く理由
住宅の断熱性能などを定めた省エネ基準の適用義務化が2020年に迫っています。しかし、戸建て住宅の現場では、基準を満たさない住宅の供給が続けられています。新しく建てた住宅が、数年後に法律に適合しないことがわかっているにもかかわらずです。なぜなら低コストで販売したい住宅会社の思惑や、制度への正しい理解が不足していることが背景にあるのです。
2020年には、法律に適合していない住宅が激増する
今、建設している住宅が、2020年になると法律に適合しない住宅になることをご存知でしょうか?
2020年には、既存建築物にも国の省エネルギー基準への適合義務化が求められます。省エネルギー基準とは、住宅に性能の良い窓や基準を満たす断熱材等を採用して、エネルギー効率を高めるものです。
全ての住宅に省エネルギー基準が義務化されると、建築基準法に定められる耐震や防火、耐火などと同じように、省エネルギー基準を満たさない住宅には建築確認が下りなくなり、住宅の工事を行うことができなくなります。
しかしながら、一般的な戸建て住宅の場合、現在の省エネルギー基準は「努力目標」とされており、省エネルギー基準を満たさない住宅を建設しても違法ではないのです。「法律は守っているから、あえて取り組まない」という逃げのスタンスなのです。
省エネ住宅が普及しないのは、住宅会社がコストアップになることを恐れているから
大手ハウスメーカーはすでに対応している会社がほとんどですが、未だに多くの工務店や設計事務所が、2020年に省エネルギー基準が義務化されることを知りつつ、省エネルギー基準に不適合な住宅をつくり続けています。
省エネ住宅が普及しない理由としては、住宅会社がコストアップになることを恐れているからです。少しでもコストを削って、受注を獲得したいからです。省エネルギー基準を満たすための仕様にすると、窓のグレードを上げたりするので、数十万円のコストアップになります。
住宅の省エネルギー性能が高まれば、光熱費も抑えられ健康面でも有利になります。家づくりは土地購入から含めると、かなり高い買い物です。快適で省エネな住環境の実現のためには、数十万円のコスト負担は、すまい手にきちんと説明すれば理解は得られると思います。
それにも関わらず、顧客の要望や自社で訴求したいことを優先するあまり、省エネルギー基準を満たすための費用の優先順位が低いままのことが多いようです。また、書類作成やその他の手間も発生するため、住宅会社が敬遠しているのが実情です。
省エネルギー基準に詳しい住宅会社は全体の1割程度なので注意!
省エネルギー基準を満たさない住宅は、将来の中古価格の査定においてマイナス要因になる可能性が高いです。なぜなら「法律の基準に適合していないから」です。
実際には、工務店や設計事務所などの住宅会社が、省エネルギー基準についてあまり理解していないことが大きな問題となっています。国が行った調査では、2020年の省エネルギー基準の適合義務化について「詳しく知っている」は約1割程度にとどまったのです。
家づくりの現場では、住宅会社の理解が深まらなければ、すまい手に正しい情報が届かない可能性が高くなります。国土交通省も全国で住宅会社を対象に説明会を実施してますが、なかなか参加者が増える状況ではないようです。
まとめ
省エネルギー基準に適合するかどうかによって、住宅の資産価値やランニングコスト、健康まで様々な影響を受ける可能性があります。「国の普及への努力」と、「住宅会社の目覚め」を期待したいところですが、現状は厳しそうです。
これから家づくりを始めるすまい手の方は、省エネルギー基準への理解を深めていただき、住宅会社を選定する際には「省エネルギー基準を満たした住宅」を建ててほしいと質問してみましょう。そのリクエストに前向きに対応できる会社は、信頼できる可能性が高いです。何かと理由をつけて断る会社は、「頼りない会社」と言わざるをえません。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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