公開日:2016.03.31 / 最終更新日:2018.11.03
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設計者であり、プロデューサーであり、ディレクター
建築設計事務所でありながら、事業計画からその後の運用にまでノウハウや実績を持っている「株式会社アンドロッジ」。代表取締役の畑山 慶さんは、プロジェクトを実現し成功させるために、「設計者であり、プロデューサーであり、ディレクター」であることを心がけているそうです。
東京都台東区千束。古くからの商店等が並んでいる一角に、ちょっと変わった雰囲気のエントランスを持つビルがある。
今回、取材させていただくアンドロッジのオフィスです。
出迎えてくれたのは、代表の畑山さん。
ちょうど自転車で外出先から戻ってきたところとのこと。
このオフィスへの通勤も自転車で、現場などへの仕事先にも自転車で行ける範囲であれば、自転車で移動するそうです。
オフィスは、印刷工場をリノベーションしたらしく、天井の高い開放的な空間となっている。
入り口側は共用のスペースということで大きなテーブルやキッチンなどがあり、奥には木で組まれたロフトもある。
現在は、アンドロッジのほか、設計事務所や家具製作会社など他の会社が3社ほど入るシェアオフィスとなっている。
多くの建築設計事務所は、自宅もしくは事務所ビルの1室を借りて事務所の活動をしているが、オフィスの雰囲気は従来の建築設計事務所とは違う印象を受ける。
畑山さんに仕事の話を伺うと、アンドロッジはオフィスと同様に従来の建築設計事務所という枠に全く当てはまらない活動をしているユニークな会社だ。
新築の建築設計もあれば、リノベーションも行う。そして自らサブリースの事業も展開している。どのようにしてこうした事業形態になったのかが、非常に興味深い。
そこで、まずは畑山さんに生い立ちを聞いてみた。
「子供の頃は、父が転勤族だったので、いろいろな街に住みました。2年間くらいで別の街に移るので、転校も多かったですね」
「社宅暮らしが多かったこともあり、一戸建ての家を建てて住むというよりも、賃貸の家に暮らすことが自分にはリアルに感じました」
最終的には、東京の高円寺に住むことになり、早稲田大学の建築学科に進学する。
「子供の頃から、何になりたいというよりも、世の中を変えていくような仕事に関心がありました。進学する際は政経学部も検討しましたが、理工学部の建築学科を選びました」
「大学では、デザインとは計画することだということを学びました」
建築の世界における一般的な考え方と、畑山さんの捉え方は違った。
建物のつくられ方は、通常は発注側とつくる側に分かれて行われ、発注側は企画や発注業務のみ、つくる側も設計や工事と専門が分かれて行われている。
多くの建築学科の学生は、発注者、不動産、設計、工事等のいずれかの会社を選択して、そこでの仕事に専門家として従事する。
畑山さんは、自ら事業計画を考えクライアントに提案し、設計を行い、時には工事までも手配するようなトータルなコーディネートを目指した。
「自分でもサラリーマンには向いていないことを自覚していましたが、まずは実務経験を積むためにゼネコンや、不動産ディベロッパーの中から就職先を検討しました」
「就職は、自分の興味ある分野で仕事を通じて勉強できるという感覚でした」
畑山さんが選んだ会社は、(株)スペースデザイン(不動産ディベロッパー)。
会社オーナーに面接で気に入られたことで入社が決まったとのこと。
「ディベロッパーアーキテクトを目指しなさいと言われました」
あまり聞きなれない言葉だが、事業・収支計画まで全てに対応できる建築家になるようにというメッセージだったようだ。
畑山さんは入社後、マンション販売企画会社出向、マンションモデルルーム出向、建設会社出向などを経験し、(株)リクルートコスモス(現 コスモスイニシア)へ転籍後、退社・独立する。
「起業前の勤務先で、ディベロッパーの担当者が「マンションをつくる」という言葉を使っていたことに違和感がありました」
「建物をつくるというのは、事業計画から設計、施工まで全て行うことなのではないかと個人的には感じていました」
畑山さんは、そうした想いを胸に自分の理想を実現すべく、26歳で仲間と共に会社を設立して活動後、2010年に起業し「アンドロッジ」を設立する。
建築設計事務所で、事業計画から設計、施工、その後の運用にまでノウハウや実績を持っている会社はかなり少ない。
「今までの仕事を通じて、建物に関する仕事の端から端まで見てきたと自負しています」
「私は、設計者であり、プロデューサーであり、ディレクターでありたいと思っています。特に設計者であることでそのプロジェクトの実行力を持つことが重要だと考えています」
「ひとりでいろいろな役割を担うかたちで仕事をしているので、特定の肩書きを自分では意識していません。名刺の肩書きは消去法で「建築家」としています(笑)」
建物や住宅をつくる仕事は、発注者から仕事を請けることで発生するのが常だが、畑山さんのアプローチは異色だ。
自社が事業主となりサブリース事業も行っている。
畑山さんは、現在よく使われているリノベーションという言葉もほとんど使われていなかった時代から事業案件の実績を積んできたそうだ。
「当時はリノベーションではなく「コンバージョン(用途変更)」という呼び方でした」
最初に手がけた自社のサブリース物件も、東京の築地にある5階建のビルを見つけ、事業計画からビルの所有者に提案したそうだ。
「そのビルは1階の店舗のみが使われていて、2〜5階は古いということもあり、何にも使われていませんでした」
「事業・収支計画から改修まで全てをコーディネートした上で、相場家賃よりも高い家賃設定で募集をかけたところ、1週間で全室が埋まりました」
「オーナーさんの立場になり、お金の問題から改修工事、そして建物の運用まで全てに関わることができ、自信になりました」
かなり認知度が高まってきた「リノベーション」という世界で、そのパイオニアとして数々のプロジェクトを手がけてきた畑山さん。
現在もいろいろなプロジェクトが進行しているようだ。
株式会社アンドロッジの「設計者であり、プロデューサーであり、ディレクター」はここまでです。
次回は株式会社アンドロッジの「人が集まる場をつくり、新しい価値を生み出すつくり手」をお伝えします。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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