公開日:2016.06.30 / 最終更新日:2018.11.03
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「設計事務所」との、最高に自由な家づくり[設計事務所との家づくり①]
設計事務所に依頼する家のイメージを聞くと、「高額」「デザイナーズ住宅」という返事が返ってきます。お金持ち、こだわり派、という「特別な人」が依頼しているイメージです。しかし、実際には設計事務所に依頼した方が全体のコストダウンにつながるケースもあります。本当の「自由設計」とはどんなものなのか。家づくりのパートナーとしての「設計事務所」概論です。
設計事務所の「自由設計」が叶えてくれること
「設計事務所」とは、建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)の事務所で、家づくりの施工以外の部分を担う事務所です。具体的には、下記のような流れで家づくりをサポートしてくれます。
打ち合わせ・設計開始
土地探しに同行、調査
- すまい手の求めていることを受け止めてもらえる。
そこから何にも縛られない自由な計画を提案してもらえる。
例えば
- 生活者の目線に立った計画
- すまい手の価値観やライフスタイルを映し出す空間、プランの提案
- 土地の特性を活かし、土地の魅力を最大限引き出す提案
- その家で成長する世代の感覚や価値観を育む空間、素材、質感の提案
…など
設計図を完成させる
見積り金額と予算の調整
工務店を選定して見積り依頼
建築確認申請等の申請業務
工事開始後、現場で内容確認
工事終了後、引渡しの確認
メンテナンスやリフォームなどのアフターフォロー
工務店やハウスメーカーと家をつくる場合、これらの仕事はそれぞれの内部担当者が行います。しかし、内部建築士の設計には、会社員としての使命上、色々な制限があります(例えば、特定の工法しか使えない、自社の取引があるメーカーの商品しか使えないなど)。
つまり、設計事務所の建築士は施工と切り離されているため、法律以外何者にも拘束されない、すまい手と一から創りあげる自由な設計ができるのです。それぞれの家族のライフスタイルや土地の環境に合わせた設計をゼロベースで考えることができ、施工者の都合ではない、すまい手の生活スタイルや周辺環境を考慮した設計ができます。
超狭小住宅や地形が極端に悪い土地などでは、この自由設計という点でコストパフォーマンス面でも優位になることがほとんどです。
デザイン(意匠)性については独自の設計思想があることも多く、その設計事務所が建てた家は一貫した個性に貫かれている場合が多いです。デザインに気を配らない設計事務所はありません。設計事務所は意匠建築家とも呼ばれ、デザインを重視することが前提です。
また、家づくりを相談する段階で要望を具体的に言葉にできる人は限られています。要望がまだ形をとらない段階からでも、すまい手に寄り添って家づくりをしてくれます。
ここまでの設計事務所との家づくりのポイントをまとめると
- 施工者の都合ではない、すまい手とゼロから創りあげる自由設計
- 厳しい条件の土地の場合は何からも自由な設計がコストダウンにつながる
- 似たものがない、オンリーワンかつ審美的な家を建てられる
- 頭の中の理想の家の具体化作業にとことん付き合ってくれる
ということになりますね。
建て主の理想的な生活を実現している家かどうかだけに集中しているのが設計事務所。
設計やデザインの自由度が断然高いことが設計事務所との家づくりのもっとも重要なメリットなのです。自由度とコストはトレードオフの関係ですので、ハウスメーカーが自由度よりもコスト優先とすれば、設計事務所はコストよりも自由度を優先する依頼先ともいえます。
注意しておきたいのが工務店との関わりについて。
設計事務所に設計を依頼する場合、施工は工務店が行うので、家の特徴にそれぞれの工務店の特性が加味されます。また、設計事務所の仕事をやりなれている工務店と、そうでない工務店では見積り金額の調整や施工精度において大きな差が出ます。
多くの場合、細部の仕上げ方などの施工技術上の知識は工務店の方が勝っており、上手な設計事務所は施工を担当する工務店の知恵をうまく引き出して家を建てます。一方、工務店をうまく扱えない事務所の場合、工務店の設計・施工の家に劣る場合もあります。
設計事務所との家づくりで気になる「コスト」
先ほども述べたとおり、自由度が高い反面、当然ですがそれなりのコストもかかるのが設計事務所との家づくりです。設計事務所のコストに関わる特徴を説明します。
設計監理料
ハウスメーカーは基本仕様があり、工務店も自社施工なので厳密な設計図は必要ありませんが、設計事務所は細部まで設計するため図面を書く時間が長めに必要です。設計事務所に依頼するメリットの一つは、現場の監理を施工者ではなく、図面を書いた設計事務所自身が行うこと(「工事監理」)なので、その費用もかかります。結果として、工務店やハウスメーカーでは数十万円ほどの設計料が、設計事務所の場合には工事費の10〜15%以上など数百万円の単位になります。
→設計監理料について詳しくは「設計監理料」、「工事監理」とは?[設計事務所との家づくり②]
工事費
一棟一棟に合わせた特注品やデザイン性の高い材料を使う上、工務店にとっては初めての材料や施工になることも多く、工事精度も厳しく要求されます。その分の手間で工務店設計施工と比較すると工事費は高くなります。また、それにより計画期間も長くかかりますので、仮住まい費用などの諸経費もかさむことになります。
なお、工務店やハウスメーカーは契約の時点で価格がほぼ確定するのに対し、設計事務所の場合、工事費の全容がわかるのは設計を終えて見積りをとった時です。依頼先を決める時点では、正確な工事費がわからないことは注意しておきましょう。
→工事費を下げるポイントについて詳しくは、家づくりのコストを下げるのに一番大切なこと[工務店との家づくり③]。
コストダウンにつながるケース
同じ土地に同じ床面積の家を建てる場合、理論上は工務店の設計施工よりも高くなりますが、ハウスメーカーの場合は逆に土地の条件でコストが急上昇することがあるので、都市部の狭小住宅などでは設計事務所の家の方が安くなる場合があります。
新規に土地を購入する場合も、設計事務所の設計は地形に対する自由度が高く欠点のある土地でも問題にならないことがあります。安い土地を選択できる前提で総額を比較すると、三者の差は縮まります。
(おまけ)住宅ローン
コストとは違うのですが、同じお金の話ということで。
実は設計事務所で建てる家はまだまだ認知度が低く、金融機関に対して十分な説明が必要です。
住宅ローンは、工務店やハウスメーカーの家づくりに合わせたシステムのため、申し込みや融資実行のタイミングをご自身で金融機関に説明しなくてはなりません。また、建物だけでなく土地の購入にも住宅ローンを利用する場合は、土地の購入から竣工までの期間が長いことを理由に、金融機関から難色を示されることがあります(事前に十分な説明を行えば、設計事務所に依頼することが原因でローンが組めないことは稀です)。
→設計事務所への支払いのタイミングについては「設計監理料」、「工事監理」とは?[設計事務所との家づくり②]
まとめ
設計事務所との家づくりでは、ハウスメーカーのように至れり尽せりのサービスはありません。すまい手として自分でも勉強し考えながら、住宅ローンの検討や設計事務所との打合せ、工務店選定などに主体的に取り組んでいくことになります。
けれどそのたいへんさを乗り越えた暁には、ゼロから創りあげた自分だけの理想の家が手に入る最高の喜びを味わえるでしょう。合理化、規格化された住宅にはない、オーダーメイドの家づくりの贅沢をぜひ味わってみてください。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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