家づくり費用は「坪単価」では出せない! 「建築工事費」徹底解説
家は一生で一番高い買い物です。依頼先を選ぶにしても、設計の提案内容やつくり手との相性ももちろんですが、やはり気になるのはお金の部分。家づくりの総費用は、カタログや広告の「坪単価」だけでは把握できません。家づくりの総費用を把握しましょう。
家づくりの費用の総額とは? 当初の「坪単価」で足りないわけ
家づくりの依頼先を検討する際、「坪単価」で悩んでいる方を多く見かけます。一坪あたりいくらで建つかの目安になるとされる数字です。しかしこの坪単価には、公式な定義はなく、業者によっては「建築工事費」の中の「建築本体工事費」だけを坪数で割ったものを出していたりします。
でも、住める家を建てるのには、本体の工事費だけでは足りないのです。
そもそも、家づくりにかかる費用としてはどんなものがあるのでしょうか。
下図を見ていただきたいのですが、水道や電気が通っている状態の住める家ができるまでには、建築工事費(建築本体工事費、設備工事、諸経費)、付帯工事費、設計料(建築家に依頼する場合には設計監理料)がかかり、その他にも諸費用といわれる登記や引越し費用、税金などがかかります。
これらは家の面積や仕様、工法等によって異なりますし、建設地が寒冷地か温暖地か(施工条件が変わる)、工事する時期はいつか(建材を調達する際の為替の影響)などによっても変動します。
ですから、「建築本体工事費」だけを使った「坪単価」を根拠にしてしまうと、確実に予算をオーバーしてしまうのです。
よい機会なので、この際あいまいな「坪単価」で比較することはやめましょう。
実際にかかる費用を概算するために必要なのは、各項目への理解です。
特に建築工事費は、土地購入費を除くと最も高額です。その明細が示される見積書も、ふだん見ることのない言葉や数字が並んでいて、内容のチェックも難しいと思います。そこで最も重要な建築工事費の考え方や見積書の構成について詳しく解説します。
最も重要な「建築工事費」について知ろう
建築工事費は、おおまかに言うと下記の3つの合計金額で決まります。
- モノのお金:使う建材等の「単価×数量」の合計
- ヒトに払うお金:大工さん、職人さんなど「つくる人へ支払う金額」の合計
- 工務店に払うお金:諸経費と言われ、「現場作業以外の人件費や広告費、会社費用、工事関連費用の金額」の合計
つまり広い家になるほど、つくる手間がかかるほど「モノ」と「ヒト」の金額は上がりますし、家をコンパクトにしプロの手間を減らせば金額は安くなります。諸経費は工務店により異なりますが建築工事費の15〜20%程度ですので、建築工事費を決めているのは実は設計内容=「すまい手の要望」なのです。
建築工事費は、住める家をつくる工事にかかる費用であり、建築本体工事費、設備工事、諸経費により構成されます。ここでは 「工種別見積り」の形式による項目例を下図に示しましたので、どんな費用がかかるのかを確かめてみてください。
※工務店により見積書の構成は異なります。あくまでも「例」としてお考えください。
付帯工事については、すまい手自身で手配することや別の会社に依頼することもありますので、別の見積書となることが多いです。項目例を下図に示します。
見積書のチェックポイント
つくり手から見積書が提出されたら、内容を確認します。チェックするポイントは以下の4点です。
- 工事費の内訳(明細)が記入されているか
- 見積り漏れがないか:建物本体から諸経費まで工事項目がもれなく記載されているか
- 別途工事の範囲:見積書に含まれていない内容が記載されているか
- 機種、型番の整合性:キッチンやユニットバスなどの機種や型番を図面と照合
チェックが終わり、見積書の金額を予算と照らし合わせます。
オーバーしているという前提ですが、考えていた予算とそれほど大きな隔たりがない場合には、同じような材料でもっと価格の安いものはないか、工種を減らすことで職人さんが関わる内容を減らせないかなど、「目に見える仕様やグレードを変えない」範囲でのコストダウンを工務店に相談しましょう。
一方、予算と大きく食い違う場合は、希望の材料や仕様、間取りなどを見直し、コストダウンを図ります。たとえば、塗り壁をビニールクロスにする、床暖房の面積を減らす、造り付け収納を減らすなどです。
もちろん、この時に仕様を変更せずに予算を増やすという選択肢もあります。資金計画を見直しながらバランスよく検討してください。
より賢く見積りと予算を調整するためのポイントについては、「家づくりのコストを下げるのに一番大切なこと[工務店との家づくり③]」で詳しくお伝えします。(6月27日公開予定)
家を建て終えた後、当初考えていた予算をオーバーしていない人は一握りではないでしょうか。
自分が満足できていれば全く問題ありませんが、高すぎた建築費用の支払いでその後の人生に影響が出ることもあります。
本見積りの内容は、そのまま契約の内容になります。トラブルを防ぐために、最終見積書や設計図書は細部までチェックし、予算に合わせられるように調整していきましょう。
また、つくり手との付き合いは、家が完成したら終わりではなく、その後も何十年と続いていきます。
値段だけで判断するのではなく、その会社に依頼することがトータルで考えて最もよいことになるかを考えて、工務店を選びましょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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