省エネと仲良しな、「パッシブデザイン」の家
現在の家づくりの理想形は「省エネ」な家。エネルギーをほとんど使わない、場合によってはエネルギーを創りだす、しかもそれは我慢して行うものではなく、快適かつ健康的である、というものです。
そんな「省エネ」な家をつくる時に役立つ考え方が、住宅における「パッシブデザイン」。
どんな家なのか、見ていきましょう。
住宅の「パッシブデザイン」とは?
そもそも、「パッシブ(Passive)」とは「受け身」という意味。逆が「アクティブ(active)」で、「能動的」という意味です。
住宅業界で「パッシブ(デザイン)」という言葉が使われるとき、狭い意味ではドイツの民間省エネ基準「パッシブハウス基準」を指すこともありますが、一般的には「動力を使わず、自然の力を最大限利用して暮らす」というほどの意味を指していることが多いです。
動力とは電気、ガス、石油燃料などのエネルギーを力に変えたもの。
例えば、クーラーを使って家を温めたり冷やしたりするためには動力を使いますね。
こういった、動力を使って積極的に住まいの環境を変えることは「アクティブ」と表現します。
超純粋な「パッシブな家」は、昔の日本の家のイメージです。
時代劇に出てくるような開口部の多い木造住宅で、夏暑ければ障子を開け放して打ち水で涼を取る、涼しい風を取り入れる。よしずやすだれで光を遮る。自然の力を利用しないと成り立たない住まいですね。
けれど、その「昔の家」では冬は寒すぎるのは言わずもがな。ですから現在「パッシブ」と言われる家はその昔の家とは違います。
大きな違いは、家の外皮(外と接している部分)が高性能化していること。
家を高断熱・高気密化することで動力の利用が最小限に抑えられるうえ、「夏涼しく」だけでなく「冬も温かい」健康的な住まいになります。
現代版パッシブハウスの条件は、最低下記3つが叶えられていることでしょう。
- 高断熱、高気密化された外皮…外気に影響されない
- 省エネ、高性能な設備…できるだけ動力を使わない
- 太陽光、地熱、風などを直接利用する技術・仕組み…再生可能エネルギーを使って、快適さを得る
こういった考え方で作られた家は、エネルギーコストが低いだけでなく、快適で健康的な住まいになります。
「パッシブデザイン」の実例
では、実際にはどんな家が「パッシブデザイン」なのでしょうか。
具体的にはこんなイメージ。
高断熱、高気密
効率よく風を取り入れたり、光を取り入れたりするためには綿密な計算、計画が必要です。
まず、外気の影響を少なくするため断熱を徹底的に行います。それを活かすためには気密化も必要。せっかく冷やしたり温めたりした空気が漏れていては意味がないからです。
屋根は一番太陽の熱を受けやすいので、しっかりと守ります。壁ももちろんです。
さらに壁よりも熱が逃げるのが窓。
理想は熱伝導率が低い樹脂や木を使った枠。間にアルゴンガスなど熱を通しにくい気体を挟み込んだダブル、トリプルガラスのサッシを使います。
光のコントロール
深い軒や、庭の落葉樹で夏の強い日差しを遮ります。
落葉樹は秋になると葉が落ちるため、必要な季節には太陽光をちゃんと取り入れることができます。季節感も味わえて一石二鳥ですね。
自然の力の利用
太陽光発電で創エネ、太陽光の熱を直接使う温水装置、地中の熱や冷たさを利用するヒートポンプなどを使います。
ヒートポンプでは、地中の安定した温度を利用して、家の内部の空気を冷やしたり、温めたりします。
ここで取り上げたのはあくまで一例です。これ以外にもそれぞれのつくり手によって、多くの工夫が研究されているのが現代版「パッシブハウス」。調べてみるととても面白いですよ。
まとめ
日本では、世界各国と比べて省エネ住宅に対する取り組みが非常に遅れています。
そんな中で、今までは、住宅の環境性能に意識の高いつくり手(設計事務所や工務店)のみがパッシブデザインに取り組んできた状況がありましたが、国もようやくZEHの推進などに着手し始めました。(→詳しくは「補助金対象の「ZEH(ゼッチ)」。どんな家のこと?」)
これからの家づくりでは、パッシブデザインの考え方が非常に役立ちます。
「家のつくり手名鑑」では、パッシブデザインを積極的に取り入れているつくり手も紹介しています。
ぜひ実例を参考にしてください。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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