家づくりを失敗しないために!「家づくりに役立つ本」名著5選(PART2)
家づくりコーディネーターである筆者は、当然の話ですが情報収集の一環として、住宅・建築・不動産関連の本を読んでおります。以前に「家づくりの本」名著5選をご紹介するコラムを掲載したところHB PRESS読者の皆様よりご好評いただきましたので、その第二弾をお伝えします。今回ご紹介させていただく本は、「売れている」本ですので、ぜひご一読をおすすめします。
1. 日本の不動産の現状と将来がわかる:「不動産格差」
長嶋修(著) 日本経済新聞出版社
住宅購入を考えている人に対して、「どこに住むことを選択するかで住宅の不動産としての価値は大きく変わる」ことを、とてもわかりやすく解説してくれている本です。
著書曰く、日本の不動産は「格差の時代」に入り、不動産市場は大きく3極化すると予言しています。「価値維持あるいは上昇する 10-15%」「徐々に価値を下げ続ける 70%」「無価値あるいはマイナス価値に向かう 15-20%」です。すなわち、9割近くの不動産は徐々にまたは大きく下落していくという事実です。
こうした大きな見通しのなか、マンション・戸建住宅・中古住宅の物件種別ごとの対処方法がわかりやすく解説されています。不動産の見極め方、付き合い方を勉強するにはおすすめです。
<本書のポイント>
- マンションは利便性がすべてであり、駅近物件以外は手を出すべきではない。
- これまで一軒家の価値は建てた瞬間から資産価値ゼロに向かって下がっていったが、これからは住宅市場データベースの整備によって、手入れ次第で価値を維持できる時代になる。
2. 住宅過剰社会という現実を知ることができる:「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」
野澤千恵(著) 講談社現代新書
本書は、「住宅過剰社会」というキーワードを用いて、住宅から日本の都市政策の問題点を指摘している内容となっています。「住宅過剰社会」とは、世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会のことです。
日本は人口減少により「空き家」が増加することは避けられない事実です。
戸建住宅でもマンションでも、「空き家」は大きな問題となります。分譲マンションは、入居者が減ってしまうと、管理が杜撰になってゆき、スラム化などの治安の悪化を呼びかねません。戸建ての空き家も、放火による火災や延焼のリスク、地震等による倒壊の危険性があります。また害虫などが住みつき、周りの住環境まで悪化させてしまいます。
<本書のポイント>
- つくり続けられる超高層マンションの将来は不安だらけ:管理費増大、終末期問題
- 賃貸アパートのつくり過ぎで空き部屋急増の街の未来
- 都市計画の規制緩和合戦による人口の奪い合いはすでに始まっている
3. 住宅のデザインのお手本を教えてくれる:「最新版 最高に美しい住宅をつくる方法」
彦根明(著)エクスナレッジ
設計事務所に住宅設計を依頼しない方でも、自分の家づくりの「設計・デザイン」の参考書になる本です。建築家が書いた本としては異例の人気で、「最高に美しい住宅をつくる方法2」という続編も出版されています。
豊富なカラー写真はもちろん、間取り図やスケッチ、納まりイラストなども掲載しており、住宅設計のヒントとして最適な構成になっています。そのデザインが与える印象まで建築家の視点で解説してあります。
掲載されているどの家を見ても、気持ちの良さそうな、そして住む人の事を第一に考えられた家づくりを実践されていることが伝わってきます。
<本書のポイント>
- 建物のかたちを決める間取りの考え方
- 「美しい部屋」や「家の顔」のつくりかた
- 仕上げワザいろいろ―テクスチュア・照明・家具
4. 間取りを考える際のセオリーを教えてくれる:「間取りの方程式」
飯塚豊(著)エクスナレッジ
間取りの考え方や物の大きさを考慮するなど、一般の方でもわかるように丁寧に解説してくれる本です。また、イラストが豊富にあり、イメージしやすい工夫がしてあります。
心地よい空間づくり、暮らしを愉しくする間取りづくりに欠かせない「プロのやり方」を、
25の視点でセオリー化しています。
間取りという問題を解決に導く「方程式」を駆使しながら、プロの設計者たちは日々格闘しています。つくり手の考え方や気持ちを理解できる一冊です。
<本書のポイント>
- 心地よい住まいを組み立てる技術がわかる
- 間取りの模範解答がわかる
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書籍5
5. リフォーム、リノベーションのノウハウがわかる:「最新版 驚異のリフォーム・リノベーション術 」
各務謙司・中西ヒロツグ(著) エクスナレッジ
住宅・建築実務の「プロ向け」に書かれた本ですが、情報や事例が豊富で、とてもわかりやすく書かれています。すまい手の方にとってもリフォームやリノベーションを検討するときの「参考書」としておすすめです。
リフォーム・リノベーションにおいて求められる建築、設備、インテリアなどの総合的な知識について、マンションと戸建て住宅を明確に分けて解説されています。技術面だけにとどまらず、実際の見積書なども公開されていますので、リアルな資料として活用できます。
著者の二人は、住宅のリフォーム・リノベーションの実力・実績ではトップランナーの建築家ですので、その貴重なノウハウを知ることができます。
<本書のポイント>
- リフォーム・リノベーションの「ビジュアル」を良くするためのテクニックがわかる
- リフォーム・リノベーションは「段取り」が重要
- リフォーム・リノベーションの「工事費」を抑えるテクニックがわかる
まとめ
今回ご紹介した5冊は、不動産関連、住宅設計、そしてリフォーム・リノベーションの世界で、それぞれトップランナーとして活躍されている方が書かれた本です。「消費者により正確な情報を伝えたい」、「業界を啓蒙しながら変えていきたい」、「ノウハウは閉じ込めずオープンにして、よりよい仕事やサービスを提供したい」という想いが感じられる本ばかりです。
家づくりを成功させるためには、こうした専門的な情報も取り入れた上で家づくりのリテラシーの高い「発注者」となり、その想いや考えを実現できるプロの「つくり手」を選びましょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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