公開日:2016.03.28 / 最終更新日:2018.11.03
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住まいのコンシェルジュを目指して
お客様を正しく知るまで設計を始めないという独自の哲学についての話に続き、この後編では中村さんの地元:館林での活動や、家づくりの考え方について詳しく話をうかがいました。
空間設計室の中村さんからは、地元である館林への郷土愛が強く感じられます。
「街の営繕部というか、街の建築おじさんみたいな存在になりたいですね(笑)」
「住宅や建築の話は、プロと一般の方の知識に差が大きいと思うのです。そこの差を埋めるべく、専門知識があり、地元のことを熟知している自分のような人間が、街の何か役に立てることはないかと常に考えています」
館林での活動
明治33年築の古い洋品店や大正13年築の旧医院を借りて行った、館林の建築風景を考える館林Re-project「観撮異見|写真展」の様子
中村さんが関わる地域での活動の一つにその「館林Re-project」がある。
「館林Re-project」は、館林にある昭和遺産を保存して利活用する活動です。館林の街の景観を市民と共に価値を共有していくことなどを目的としています。
「館林は、城下町のなごりと同時に看板建築等の近代化遺産が残っています。両方とも揃っている街は全国でも珍しいと思います」
「街の魅力は自分たちで価値を見つけて、きちんと伝えることが重要です」
「館林Re-project」は、これからも継続的に活動していくとのこと。
ユーザーとのコミュニティ
「最近のお施主さんは、知人や紹介の方が多いですね」
中村さんは、友人・知人や地域の活動、街づくりの活動で知り合った方から依頼されることが多いそうだ。以前手がけた家の施主からの紹介も少なくない。お客様を知ってから設計を開始する中村さんとしては嬉しい話かもしれない。
「あるお客様の家を設計したら、そのお客様のご両親の家も設計させていただいたこともあります。そしてその逆もあります。本当にありがたい話ですね」
「同業者である設計事務所の方は、本当に建築が好きな人が多いと感じます。私の場合、建築よりも人が好きで設計事務所をやっているのかもしれません」
「お客様の実情やこれからの生活を考えた結果、家づくりの計画を見直すことをすすめることもあります」
「自分でも自邸を建てましたが、お客様が建てる家が人生の負債になることだけは避けなければならないと常に思っています」
郊外の家は売却しにくいという現実もあり、実験的な家づくりはふさわしくない。中村さんは、お客様の家づくりに対してプロとしてお客様以上に考えているからこそ、つくり手としての本音を伝え続け、お客様の人生を豊かにすることを常に考えている。
リフォーム、リノベーション
リフォームやリノベーションは、既存の建物をどこまで残し、どこに手を入れ、新しい空間をつくるかを判断することは、新築の設計・工事をする以上に難しい。
「私の中では、新築の設計相談も、リフォームやリノベーションの相談もあまり違いはありません。まずはお客様を知ることからです」
リフォーム・リノベーションの場合、「コスト」を正確に把握することはプロの設計者でも判断が難しい場合が多い。
「今までもいろいろな仕事をやってきていますので、お客様からの相談内容に応じて、現場を見ればある程度の概算金額を伝えることはできます」
こうしたコスト感覚が身についている設計者は、実はあまり多くない。中村さんの強みと言えるだろう。
「これからやりたい仕事として、空き家をコンバージョン(用途変更)して、人に貸すような仕事もしてみたいですね」
「建物は誰も使わず空いている時間が問題です。空き家のままだと急速に劣化するからです。付加価値をつけることで、使える建物はまだまだあると思っています」
中村さんのこうした考えは、これからの日本の街づくりにとって重要なことになります。今後の中村さんの活動に注目したいですね。
家づくりのコンセプト
空間設計室のホームページあるコンセプトには、「癒し、環境、素材、上質、楽、人」の6つのキーワードが書いてあります。
そのキーワードに添えられている文章の中には、「心も体も癒される空間」「精神的な充足度を維持するには空間や素材に上質さが必要」など、これから家をつくる人への中村さんの温かさが感じられます。ぜひ読んでみてください。
例えば「環境」についていえば、館林は夏の最高気温が40度近くにもなる地域です。館林に限った話ではありませんが、温熱環境は重要なポイントです。
「実はこの事務所はあえて断熱材を入れてないのです。事務所の寒さ、暑さを体感してもらった後に、私の自邸や別のお客様の家を案内すると、家の性能の重要性をより理解していただけると思います」
中村さんのつくり手としての姿勢は、家があってそれに合わせて暮らす人がいるのではなく、あくまでも住む人の人生の中で家がどう位置付けられるかに重きが置かれている。
つくり手としてのこだわりについても聞いてみる。
「私の設計では、手がふれるところの使用感や手触りについて、重視しています。手すりやドアノブ、水栓などです。やはり毎日ふれるところですので」
空間設計室に合うお客様は、「素直でありのままを伝えられる人」がよいと思います。お客様が心を開けば、きっと中村さんは望みをかたちにして、丁寧に美しく家をつくってくれます。
まずは「街の建築おじさん」に気軽に相談してはいかがでしょうか。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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