公開日:2016.04.06 / 最終更新日:2018.11.03
3442
暮らしに楽しさをプラスする
山岡さんの自邸兼事務所の話やシンプルで飽きのこないデザインを生み出す設計手法についての話に続き、この後編では山岡さんが大切にしている家づくりのテーマについて話をうかがいました。
山岡さんが手がける家づくりには、「暮らしに楽しさをプラスする」や「自然との関わり」、「子どもと楽しく暮らす」などのテーマがあります。子どもの頃から自然が好きで、子育てなど家族と過ごす時間を大切にしているという山岡さんにとって、こうした家づくりのテーマは必然で自然な流れだったのかもしれません。
暮らしに楽しさをプラスするアイデア
山岡建築研究所のホームページには、︎「暮らしに楽しさをプラスする」というページがある。テーマごとに山岡さんが過去に設計した住宅に盛り込んだアイデアや工夫などが、写真と手書きのスケッチでわかりやすく解説されている。家のシーンごとに、これだけわかりやすく設計のポイントが書いてあると、これから家をつくる人にはかなり参考になる。
お客様それぞれの生活スタイルに合わせて工夫を凝らしたアイデアや遊びのしつらえを、シンプルに美しく、楽しく実現できるのが山岡さんの強みです。
「家の中にいくつもの楽しさを生み出す仕掛けをつくることができれば、その空間で育つ子供たちの感性を豊かにし、毎日を楽しく豊かな気持ちで過ごすことができると考えています」
山岡さんの設計のアイデアの中には、階段と中庭を隣り合うように配置して季節の変化を感じる演出や、回遊性のあるウッドデッキをつくりドックランとして利用するなどの事例も紹介されており、設計者の工夫次第で住まいの空間の楽しさは広がることを教えてくれている。
住まいに自然との関わりをつくる
山岡さんは、自然との関わりをもつ緑豊かな環境を、暮らしの中につくることを常に心がけているという。
「暮らしの中に緑は必要なものです。内と外とのつながり、緑の取り込み方、開口部の切り方など特に気を使い、自然と関わることのできる住まいを考えるようにしています」
「現代の家づくりでは、なかなかゆったりとした庭をつくることが難しくなっています。でも広い庭でなくても小さなスペースがあれば、樹木の寄せ植えができ、庭を楽しむことができます」
山岡さんの作品事例を見ると、限られた広さの中でも落ち着いた風情のある坪庭がある家をつくるなど、場の特性を生かした庭づくりも実現されている。
自然と関わる機会が少なくなった今日、自宅の庭が子供たちの豊かな感性を育む場になることを山岡さんは期待しているそうです。
子どもと楽しく暮らす
山岡さんは二人の子供の父親でもある。自分が子育てを経験する中で、住まいには家族とのコミュニケーションを生みだすための建築的な仕掛けが必要だと感じているとのこと。
「例えば、吹き抜けのリビングを囲むようにその他の部屋を配置すれば、吹き抜けを介してどの部屋からもお互いの気配が伝わります。
「リビング階段にして日常の生活動線が必ずリビングを通るようにすれば、家族で顔を合わす機会が増え自然にコミュニケーションが生まれます」
「ハシゴやブリッジ、ロフトや回遊性などの遊びの仕掛けも有効です」
家族に対する想いや配慮が、山岡さんの設計手法につながっている。
つくり手としてのぶれない姿勢
建築家に設計を依頼する場合は、その建築家の「家づくりのこだわり」に共感できるかどうかが、選定する重要なポイントです。
山岡さんは、とても穏やかで親しみやすい雰囲気の方だが、家づくりについては、つくり手として絶対にぶれない軸のようなものを感じる。
山岡さん自身も「生活者の一人」であり、自邸を建てたことのある「ユーザーの先輩」として、自分がてがける家にこれだけは欠かせないというこだわり。
山岡さんが、つくり手として実践している「家づくりのこだわり」の中で、設計において重要なプランニングについて話を聞いてみる。
「人が居て生活があって始めて生き生きとする家が良いと考えています。シンプルで大らかな間取りと機能的でコンパクトにまとめた家事動線は必須です」
「家族構成やライフスタイルの変化に対応できる「スケルトン&インフィル」を基本とし、具体的には構造に必要な耐力壁を外周部に配置させ、内部空間を自由に変化させることができること、そしてメンテナンスに配慮した設計を心掛けています」
山岡さんは、住宅の性能に関しても、確固たる考えがある。
「各部屋に対して2方向以上の窓を設け、風の流れをつくります。平面的に2方向以上の窓を設けることが難しければ、階段や吹き抜け、スノコ床などを利用して、断面的に流れをつくることも考えます」
「断熱性を高めることで出来るだけエアコンに頼らない設計を心掛けています。暑さを防ぐには断熱性能を高めることが有効で、特に屋根面の断熱が最も大切だと考えています。弊社の設計では断熱等性能等級4を標準仕様としています」
「全ての建物で構造計算(許容応力度計算)を行い、家の安全性を明確にしています。今後起きると予測される巨大地震に備えて、耐震性能を高めることは建築士の使命だと考えています」
これからのこと
最後に山岡さんにこれから取り組んでみたい仕事について聞いてみる。
「ご相談いただくお客様が土地から購入される場合、土地購入の費用がかかるため、家にかけられる予算がかなり限られてくることがあります。そうしたお客様に手が届く価格で良質な家を提供したいです」
「具体的には、内部の間仕切りなどをつくらない箱型の家(スケルトンハウス)をプロである工務店がつくり、家の内部はDIYでお客様がつくる方法です。私もモノをつくるのは好きなので、DIYのワークショップとかできるといいですね」
山岡さんが実践している「家づくりのこだわり」は、自分の生活体験と設計活動の積み重ねで得られてきた貴重なノウハウです。
このこだわりに共感できた人は、ぜひ山岡さんに会いに行ってみてください。
きっと笑顔で自邸を案内し、お客様の要望を聞きながら、気持ち良さや楽しさを感じられる設計案を、シンプルなデザインにまとめて提案してくれるでしょう。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
最新記事 by HOUSEBASE 代表取締役 植村将志 (全て見る)
- 4号建築物も構造図書の保存義務化へ - 2020年1月10日
- 耐震等級の徹底解説!住宅性能表示の構造の安定とは? - 2019年7月29日
- 住宅のリフォームは「健康性能の強化」が必須な理由 - 2019年6月15日
- 工務店は「事業承継できるかどうか」で選ぶ時代に - 2019年5月20日
- 省エネルギー住宅の「全館空調」はエアコンのみで実現できる - 2019年5月19日