光熱費が本当にゼロに!「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」にメリットがある理由
自邸「雑司が谷ZEH」は住み始めて1年経過しましたが、
計画時の計算を上回る性能を発揮しており、十分ゼロエネルギーで行けそうです。
現在、国の方針として2020年までに新築住宅の半分以上をZEH化する計画ですが、
住宅をゼロエネ(ZEH)にする意味はどこにあるのでしょうか。
ZEHは「パッシブデザイン+太陽光発電」のセットで考える
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、その家で創り出すエネルギーが使うエネルギー以上の住宅です。基本はパッシブデザインの省エネ住宅ですが、いくら省エネといってもエネルギーは使うわけですから、ZEHには必ずエネルギーを作り出す装置が必要になります。それは一般的には太陽光発電です。つまり「ZEH=パッシブデザイン+太陽光発電」ということになります。
環境問題:住宅のエネルギー使用も減らしたい
今、世界中でCO2を減らす努力をしています。日本も産業部門では着実に減少していますが、住宅のCO2排出量はここ20年で35%ほど増えています。便利で快適な生活を目指せば自然の成り行きですが、生活の質を落とすことなく省エネにすることは環境問題の大きな課題です。
ZEHは使うエネルギーが少ない、環境への影響が少ない、つまりエコハウスということです。地球環境に良くて、なおかつ快適な生活が維持されるなら、ZEHの意味は十分にあります。しかも初期投資分が低ランニングコストでペイするのなら良いことずくめです。
ZEHは省エネでありながら快適で健康
省エネというと暑さ寒さをガマンするイメージがあるかもしれませんが、ZEHはそんなことはありません。年間通じて建物内のすべての部屋が快適な温度に保たれます。
雑司が谷ZEHの実測データでは建物内の場所による温度差は2度以内、完全な温度バリアフリーでヒートショックの心配がなくなります。1日の温度変化もきわめて少なく3度程度しか上下しません。
単に快適と言うだけではなく、交通事故死の3倍以上というヒートショックでの死亡リスクを減らす健康住宅でもあります。また、床、壁、天井各部の温度がほぼ同じで足元が寒いという事もなく、そのような温熱環境では、結構低めの温度設定(19度前後)でも不快ではありません。
ZEHは省マネー?
省エネということは、ランニングコストの低減につながります。ゼロエネなのですから当然光熱費はゼロ、今は売電価格が高いのでむしろマイナス、つまり儲かってしまう訳です。
雑司が谷ZEHの場合、水道代まで含めても年間光熱費はほぼゼロです。しかし、その分イニシャルコストは掛かっており、その増加分を取り戻すには10年以上かかりますし、その位経つとメンテナンスも必要になりますからトータルで必ずしも省マネーとは行きません。しかしお金の為だけにZEHにするわけではないのですから、イニシャルコスト分が取り戻せるのならそれで十分だと思います。
ZEHは災害にも強い
ZEHの性能があれば災害時、電気やガスなどの供給が止まっても、ある程度の温熱環境は保つことが出来ますし、太陽光発電もあるので日が照っていれば電気が使えます。水はエコキュートならタンクにかなり蓄えられますし、大きめの雨水タンクがあればさらに助かります。いつ大震災があるか分からない現在の状況ですから食料さえ備蓄しておけば、ZEHはかなり心強いです。
雑司が谷ZEHは薪ストーブがありますから、一番エネルギーを使う暖房も薪が確保できれば大丈夫で、調理にも使えますから、非常時の備えとしても有効です。
ZEHの創エネルギー装置:太陽光発電
ZEHのエネルギーを創り出す装置は、現実的には太陽光発電が中心です。10kw近い極端に大きな発電装置を載せれば、あまり性能の高くない住宅でもとりあえずゼロエネは実現できますが、10年後売電価格が下がった時を考えればランニングコストの面で問題ですし、なによりも性能の低い住宅は温熱環境の面で快適ではありません。
延べ床面積35坪程度の住宅で5kw以下の発電量で足りるように建物の性能も上げたいものです。建物性能を極端に上げればもう少し小さい容量でもゼロエネは可能ですが、コストのトータルバランスも考える必要があります。5kwの太陽光発電のイニシャルコストは約150万円です。15年保証が普通なので十分元は取れる計算になりますが、それよりは環境問題への貢献や災害時の安心が大事ですね。なお雑司が谷ZEHの太陽光発電は5.25kwです。
蓄電池があれば電力会社はいらない?
ZEHは使うエネルギーだけ発電するのですから、自給自足、電力会社はいらない、災害時も電気の心配はないと思いがちですが、ゼロエネルギーといっても年間の収支として足りているだけで、発電できるのは日が照っている時間だけですから、夜間は電気を買っていますし、季節によっても使用量は違います。
完全に自給自足にするには発電した電気を何ヶ月分という単位で溜める必要がありますが残念ながらそれは容易ではありません。現実的な容量の蓄電池で完全に自給自足を可能にするには、やはりかなりの節電が必要になってきます。
HEMS:見える化ってなに?
直接的な省エネの機器ではないのですが、ZEH補助金の条件にはHEMSの設置があります。HEMSとは「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム」の略です。将来的にはここからいろいろな機器を操作できるようですが、今のところどの器具でどの程度電気が使われているかが画面に表示されるというだけのことで、いわゆる「見える化」です。
そのように電気の使用状況が見えるようになると、意外なところで無駄に使っているのが分かり、省エネを心掛けるので、データによるとそれだけで10%ほど節電になるそうです。
省エネ家電:実は計算外ですが・・・
ZEHというとテレビ、冷蔵庫、洗濯機と何から何まで省エネで揃えるイメージかもしれませんが、実は国のZEHの定義では家電品で使う電気は計算外なので、ここでいくら電気を使ってもZEHにはなります。しかし実際には家庭で使う電気のおよそ1/3はテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電品なのですから、当然そこでも省エネを目指したいですね。
SUR都市建築事務所では、家電品を含むすべてのエネルギー消費がネット・ゼロになる「リアルZEH」を目指しています。そのためには家電品も出来るだけ省エネタイプを選ぶ必要があります。本当の意味でのネット・ゼロ・エネルギーです。
まとめ
ZEHとは通常は「省エネルギー住宅+太陽光発電」です。
多少イニシャルコストは掛かりますが、それに十分に見合うだけの経済性とともに
快適性や安心も得ることが出来、さらに環境にも優しい住宅です。
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