設計事務所案件に対応できる工務店は限られている!その理由とは?
ここ数年の傾向ですが設計事務所案件において、見積りもしくは施工できる工務店が減少していることにより、なかなか施工会社が決まらないという状況が続いています。今後もよりその傾向は高まる気配です。住宅業界全体の「人財不足」によるところもありますが、工務店そして設計事務所にそれぞれ問題や課題が蓄積されているからなのです。
設計事務所案件に対応していた工務店に変化が起きている
建築家(設計事務所)に家づくりを依頼した場合、設計事務所と設計監理契約を結び、施工会社(工務店)と請負契約を結ぶことになります。工務店の選定は、設計事務所が推薦もしくは選定した候補となる会社に見積り依頼を行ない、金額や相性等で決定していきます。
設計事務所案件に対応できる工務店には、技術力や実績等が求められるため、もともと限られた工務店が対応してきました。それらの工務店が、さまざまな事情により、以下の3つのグループに分類されてきています。
- グループA:新規、リピーターの設計事務所両方の案件に取り組む工務店
- グループB:リピーターの設計事務所案件のみ取り組む工務店
- グループC:設計事務所案件は原則として対応しないことを決めた工務店
工務店も、集客や受注の問題のほか、2000年以降の法律や施策への対応、事業継承の問題、社員や現場監督の採用、大工さん・職人さんの確保などの様々な問題を抱えています。また過去の設計事務所案件で良いことも悪いことも経験し、工務店経営を考える上で「設計事務所案件に取り組むメリット、デメリット」を検討し、上記のようなグループに自然に分類されてしまったと筆者は考えます。
設計事務所案件における工務店選定の難しさとは?
現在起きている「設計事務所案件における工務店選定の難しさ」は、主に下記の3点に集約できます。
・今まで設計事務所案件に対応していた工務店が、グループBもしくはグループCのような方針を決めたことにより、見積り依頼さえ、できない状況が起きている
・設計事務所からグループAの工務店に相談が集まるが、工務店は現場監督や大工さん・職人さんのチームにより「受注できる棟数」が限られているため、受注を増やせない
・設計事務所からは「相見積り」を条件として見積り依頼されるが、上記のような状況の中で「1/2もしくは1/3の確率で受注が決まる相見積りの場合、その着工のタイミングで大工さん・職人さんを確保できない」ので、相見積りが受けられない
日本の全業種の中で、「建設職人」が最も有効求人倍率が高い仕事になっていることが、ここでも大きな問題になっているのです。
まとめ
日本全体の住宅着工数からすると、いわゆる「設計事務所案件」(設計事務所が設計監理を行う案件)は全体の3%前後と推測されますので、住宅業界全体ではあまり問題として顕在化されていません。しかし都市部では設計事務所に家づくりを依頼するお客様も増えており、当事者のお客様、設計事務所の方にとっては頭の痛い問題です。
HOUSEBASE 代表取締役 植村将志
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